出所:タナベ経営 ホールディング経営研究会
プラットフォーム型ホールディングスで描くグループ組織図のイメージは、HDCが底辺で土台(プラットフォーム)としてグループの全体を支え、事業会社がその上でマーケットと向き合って主体的に事業活動を展開していく構図である(左図)。これまではHDCを上に、事業会社を下に描くことが多かったが、それでは親会社・子会社の関係性を連想させてしまい、事業会社の自立性を阻んでしまいかねない。あえて逆三角形の組織図のように描くことで、事業会社がマーケットのニーズにスピード対応し、また変化に対して事業ポートフォリオを柔軟に組み換えていく発想が重要となる。
このとき、事業ポートフォリオの構成や各事業会社の組織を、ティール的なフラット組織にすることも可能だろう。企業を取り巻く外部環境は刻々と変化する。それに順応するために、新たな事業を生み出し、またはM&Aなどで事業ポートフォリオに組み入れ、あるいは陳腐化した事業を統廃合することも必要になるだろう。
事業の数と同じだけ経営者人材も必要になる。同質化した組織では多様な経営者人材の輩出は望みづらい。これからの採用も含め、多様な人材が生き生きと活躍できるフレキシブルな体制にしておくことが望ましいのである。
ホールディング経営体制においては、主役となる事業会社が事業プランを練り、それを実行することで各事業の収益力を高めながら成長していくことが大切だが、一方でそれをバックアップするグループ本社としてのHDCの機能も充実させておかなければならない。
プラットフォームとしてのHDCの機能は、シンプルに言えば、事業会社に必要な経営資源を供給することである。経営資源とはヒト・モノ・カネ・情報・ブランド・ノウハウなどのことを指す。こういったものを市場から調達し、またはHDC内部で形成し、あるいは事業会社相互で共有するなどして、最適な状態へコントロールしていかなければならない。また、事業会社がグループとしてのレギュレーションから逸脱しないようなガバナンス体制の構築も外せない機能となる。どちらもグループの事業ポートフォリオを最適化するために、全体をマネジメントする機能である。
ホールディング経営の目的は、あくまでグループ経営の持続的成長にある。その実現のためには「遠心力」としての事業会社の自立性・柔軟性、そして「求心力」としてのグループ本社機能の強化の両面が必要である。土台(プラットフォーム)をしっかりと固め、その上でいかんなく事業を成長させる。この両立を矛盾なく実行できるグループ経営が、逆境の時代にあっても力強く成長していくであろう。
事業承継を機にホールディング経営を目指す中堅・中小企業が増加しています。企業が目指すべき、サステナブルな姿とは何か。中堅・上場企業のゲスト講師を迎え、事例に基づきながら幅広い視点と角度でホールディング経営を浮き彫りにしていきます。