コロナ禍で明らかになったのは、大半のライフスタイル関連企業にとってビジネスモデルのイノベーションが急務という事実である。本稿では、その変革に必要なデザイン経営実践の要諦を提言したい。
タナベ経営ではライフスタイルビジネスを5つのドメイン(アパレル、ビューティー、雑貨、ホーム、スポーツ・アウトドア)と定義している。その市場規模は約27兆円の巨大マーケットだ(【図表1】)。しかし、そのほとんどのドメインでは、今後の人口減少や内需縮小に連動しマーケットの縮小が予測されている。さらには直近1年間のコロナショックにより、足下の業績も危ぶまれる企業が極めて多い。
【図表1】ライフスタイルビジネスのドメインと市場規模
【図表2】に示すのは、タナベ経営主催「ライフスタイルビジネス研究会」の会員へのアンケート調査結果(2020年9月)である。会員企業の8割が減収、5割が経常利益率1%未満、もしくは赤字に陥っている。
【図表2】「ライフスタイルビジネス研究会」会員企業の現状
要因として考えられるのは、約7割の企業が単一事業のみの展開であり、リスク分散がなされていなかったために、コロナショックという未曽有の事態に耐えられない経営体質だったことである。会員企業の多くはこの状況に正しい危機感を持ち、自社のビジネスモデルを革新すべく、志高く研究を深めている。
コロナショックにより社会や消費者の価値観は大きく変容した。今こそ顧客の価値観を的確につかみ、自社のビジネスモデルをイノベーションしなければならない。消費者と密接に関わるライフスタイル産業に携わる全ての企業は、「ライフスタイルカンパニー」を標榜すべきだ。
ライフスタイルカンパニーとは、ライフスタイルに根差したビジネスを展開し、特定分野でナンバーワンである企業。そこで、ライフスタイルカンパニーを目指す上で、デザイン経営の実践を勧めたい。
デザイン経営とは、デザインを経営資源として活用し、ブランドとイノベーションを通じて“企業競争力向上”と“高収益化”を実現する経営手法である。
デザイン経営への投資は高いパフォーマンスを発揮する。British Design Councilによると、デザイン投資によりその4倍の利益を得られ、Design Value Indexは、S&P500(米国の代表的な株価指数)全体と比較して過去10年間で2.1倍成長したことを明らかにしている※。
※経済産業省・特許庁 産業競争力とデザインを考える研究会「『デザイン経営』宣言」(2018 年5 月23 日)より