企業の商品やサービスのプロモーション手段として用いられるタイアップやコラボレーションといった、他ブランドやアニメ、ゲーム、キャラクター、アーティストを起用するアライアンス手法は、従来からプロモーション活動の一つとして用いられてきた。近年は取り組みが多様化しており、導入する際には生活者のライフスタイルや消費動向の影響を見据え、成功へと導くポイントを十分に理解する必要がある。
そこで、本稿では漫画やアニメ、ゲームなどのキャラクターを活用してプロモーション活動を行う際のポイントを紹介する。
企画を考える際のポイント
アライアンス手法を用いてプロモーション活動を始める際、社内での企画時の取り組みが重要であり、大きく三つに分けられる。
(1)他力本願でよい
担当者自身が率先して旬のキャラクターや話題を検索しがちだが、社内で流行に敏感な人がいれば積極的にコミュニケーションを取り、そこからネットワークを広げていくとよい。
自身がどれだけ多趣味になって見聞を広げても、「一夜漬け」的な理解にとどまってしまう。一方、「好きだから」という理由で自然に身に付けた人は多くの感動体験やポイントを熟知しており、快く簡潔に情熱を持って情報を提供してくれるので、「目利き役」として頼ることができる。
(2)キャラクターの理解度
理解すべきはタイアップするキャラクターの情報含め、キャラクターの制作者が持っている世界観である。キャラクターのファンは、制作者が魂を込めた世界観に触れ、心を動かされている。プロモーション活動においてキャラクターを起用するということは、強い絆で結ばれた制作者とファンの間で、企業がその世界観を“間借り”することになる。そのため、アライアンスを要請する側としてキャラクターと作者の持つ世界観を理解し、壊さないように配慮しなければならない。
(3)「使う」ではなく「盛り上げる」目的意識
自社商品・サービスとキャラクターのファンが持つ世界観を照らし合わせて親和性と接点を結び、「もっと知られたい」「多くの感動を届けたい」とファンが盛り上がれる機会を提供する意識が必要となる。いわゆる“お祭り”の場の提供だ。
現在はSNSなどにより、ファンや消費者は自身の持っているキャラクターとの絆を、連帯感を持ちながらポジティブにもネガティブにも共有している。企業が自社商品・サービスを届けるとき、“お祭り”の場を設けて「同好の士」として扱えば、ファンと消費者の間にコミュニティーが増え、「企業が楽しい機会(メリット)を提供してくれた」と感じてもらえる。
キャラクター起用のポイント
キャラクターを起用するプロモーション手法は増えている。自社商品・サービスの情報が伝わりにくい場合も、間にキャラクターを介することで、企業側が伝えたいメッセージを消費者が受け入れやすくなるためだ。だが、プロモーションを実施した時期や展開内容によっては、期待した成果を上げられない場合もある。
知名度が高く、ファン層も幅広いキャラクターとのタイアップには、大きな効果が期待できる。しかし、その人気はあくまでもキャラクターに対する人気であり、自社が提供する商品・サービスとキャラクターは決してイコールではない。自社商品・サービスのプロモーション効果を高めるため、キャラクター自体にフックとなる要素があるかどうかを見極める必要がある。
重視すべきポイントは次の三つである。
(1)キャラクターの周年記念や多媒体化(アニメ化や映画化)などの節目を活用
たとえ人気の高いキャラクターでも、タイアップ時期にあまり目立った展開(露出)がない場合、情報を発信してもファンに届かない可能性がある。その場合、最も有力なフックと言えるのが「周年記念」などの節目である。節目の年を全面的に打ち出し、一種の“お祭り”を演出することで市場やファン層の活性化を図る。
もう一つが、アニメ・映画化といった多媒体のメディア展開だ。演じる声優や俳優、さらには監督の知名度を利用し、事前に露出や宣伝を狙うことでファンとの接点を創出していく。
(2)自社商品・サービスとキャラクターの世界観、親和性が一致しているか
人気と話題性の両方を兼ね備えたキャラクターを起用しても、自社商品・サービスの世界観との親和性が低ければファンにとっては望まない展開となってしまう。例えば、「少年漫画誌掲載のキャラクター」と「アルコール飲料」の組み合わせがある。少年誌掲載のキャラクターは子ども向けのため、成人向けの商品・サービスとは世界観が一致しない。
ここで注意したいのが、商品・サービスと世界観が100%マッチするのは難しいという点である。各キャラクターの性格やキーアイテム、特性などを細かく探索することで商品・サービスとの関係性を見つけるとよい。
(3)キャラクターを起用する「意外性」や「理由付け」
親和性だけでは埋まらないファンや消費者との溝を他の要素で補うことで、効果的なマッチングに見せることができる。中でも、「意外性(ギャップ)」を打ち出したり、「理由付け」を決めたりすることで消費者との距離を縮めることができる。
例えば、「女性キャラ」を起用し「OL」というキャラクターの設定を持たせ、自社の商品・サービスのキャンペーンガールに就任させる。「非現実のキャラクターが実在する企業のキャンペーンガールに就任」というギャップが話題を生み出すきっかけになる。
キャラクターの選定には、人気や話題性だけでなく「なぜこのキャラクターを起用したいのか」を深く考える必要がある。タイアップにおいて、自社商品・サービスと組み合わせた時の相乗効果を予測することが重要で、キャラクターの設定、世界観の理解を深め、この「なぜ」の部分を「理由付け」に変換させる。
こうした手段はBtoC商品・サービスに限定されるように感じるかもしれないが、決してそんなことはない。目線を変えることで、BtoB企業の節目(周年記念やリブランディング、会社案内の改訂)にも応用することが可能だ。ぜひ、BtoB企業のプロモーションにもコラボやタイアップという手法を活用していただきたい。