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コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2020.05.29

戦略CFOの役割:鈴村 幸宏

コロナショック緊急提言

 

新型コロナウイルスの感染拡大による宿泊や飲食、旅行、イベントなどサービス業の急激な業績悪化、世界中の工場の操業停止、世界的な経済活動停止など、コロナショックの影響は全産業に及んでいる。

 

しかしながら、経営も経済も止めてはいけない。企業は将来にわたって事業を継続していくこと(ゴーイングコンサーン)を前提に存在している。戦略CFO研究会で提言している「企業価値向上のための投資と財務」に関しては、いついかなるときでも思考を止めてはいけない。

 

ここでは戦略CFO研究会からの「コロナショック緊急提言」として、短期(Presentコロナ)、中期(Afterコロナ)、長期(Next Future)の戦略を提言したい。(【図表4】)

 

【図表4】コロナショック 戦略マップ

※Key Performance Indicator(重要業績評価指標)

 

 

まず、直近~半年または1年の短期(Presentコロナ)戦略は、感染拡大の終息が見えない状況なので、売り上げ減少による資金ショートを回避するため、特別融資や補助金利用によるキャッシュイン(増加)と、固定費を中心とした経費削減によるキャッシュアウト(低減)により、資金繰りの安定化を図る。

 

次に、1年後以降の中期(Afterコロナ)戦略は、感染終息後の景気回復局面における成長機会をつかむべく積極的な投資を行う。投資対象は、優良企業が採用を絞ったことで市場にあふれる優良人材(人材獲得)と、業績悪化により企業価値が減損した企業(M&A)が軸となる。

 

また、持続的取り組みとしての長期(Next Future)戦略は、企業が一体となり、継続的なフリーキャッシュフローの創出と最適資本構成の追求を行い、資本効率を改善するとともに、ガバナンス強化による事業リスク低減を図ることで、持続的な成長が可能な財務体質を目指す。

 

■短期戦略 キャッシュフロー獲得

 

現状、行うべき施策は事業資金(キャッシュフロー)の獲得である。資金創出はキャッシュイン(増加)とキャッシュアウト(低減)から成る。危機的状況下で経営基盤を安定させるには、自社の資金繰り分析(経常収支分析による資金構造の把握、資金回転差分析による企業内滞留資金の把握、季節変動サイクルの把握など)が重要となる。(【図表5】)

 

【図表5】短期戦略 キャッシュフロー獲得

 

 

■中期戦略 戦略的投資

 

感染拡大が終息し始めると景気回復局面が予想され、適切かつ戦略的な投資による業容拡大が見込める。外部調達だけでなく、現金循環化日数(CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善による内部金融を行う。投資対象は設備投資だけでなく、労働市場に滞留する有能人材や体力が弱まった企業のM&Aも含む。事業・設備投資については、投資判断基準の設定が重要になる。(【図表6】)

 

【図表6】中期戦略 戦略的投資

 

 

■長期戦略 企業価値向上

 

長期的に企業が目指すべきは、持続可能な経営のための事業・財務基盤構築である。事業別価値判断と投下資本再配分検討のためには管理会計強化(事業部別B/Sの作成など)によるポートフォリオ分析が必要だ。

 

また、ESGやSDGsを意識するなど事業リスク≒ボラティリティー(資本コスト悪化要因)を低減できるような企業価値向上ドライバーを創出する必要がある。(【図表7】)

 

【図表7】長期戦略 企業価値向上

※円のサイズは貢献利益(キャッシュフロー)

 

 

 

戦略CFO研究会

戦略CFO研究会では、経営者および経理財務や経営企画など戦略立案に携わる実務者が、CFOの職務の全容を体系的に捉え、経営戦略実務で活用できるよう、共に学んでいきます。

 

 

 

 

 

 

PROFILE
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鈴村 幸宏
Yukihiro Suzumura
タナベ経営 経営コンサルティング本部 東京ファンクションコンサルティング本部長 戦略CFO研究会リーダー。「企業を愛し企業繁栄に奉仕する」を信条とし、経営戦略・収益戦略を中心に幅広いコンサルティングを展開。特に成長企業の収益力強化、再建企業の収益構造改革で高い評価を得ている。企業価値向上に向けて中堅企業の投資と財務を研究する「戦略CFO研究会」リーダーとして活躍中。