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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2026.02.27

グローバルパートナーサーチが海外市場での成功を支える 御舩 浩次郎

パートナーサーチの重要性

日本の中堅・中小企業にとって、海外進出は依然としてハードルの高い経営判断である。特に自社で現地法人を設立し、販売やマーケティング組織をゼロから構築するとなれば、投資額だけでなく、運営の難易度も大きく跳ね上がる。こうしたリスクを最小限に抑えつつ市場参入する現実的手段が、ターゲット国におけるパートナー、主に代理店の活用である。


日本の企業は製品を日本から輸出し、現地での営業活動、マーケティング、販売、在庫管理、流通といった機能をパートナーに担ってもらうことで、初期投資を抑制した事業展開が可能となる。パートナーサーチとは、この役割を担い得る複数の候補企業から、最適な企業を選び出すプロセスである。しかし、海外のパートナーは子会社ではないため、自社が望むスピードや方法で動いてもらえるとは限らず、完全なコントロールもできない。そのため“誰を選ぶか”の判断は、海外展開の成否そのものを左右するほど重要である。


多くのパートナー候補企業は、現地の市場で長年活動し、顧客ネットワーク、競合の状況、市場ニーズを熟知したプロフェッショナルである。日本企業が自力では得られない、現場に根差した情報や判断力を持つため、パートナーと協働して市場参入を図ることは極めて合理的である。


また、すでにパートナーがいる場合でも、その企業が必ずしも最適とは限らない。展示会などで偶然知り合った相手が、実はターゲット顧客との接点を持たず、市場展開力に欠けていたというケースも珍しくない。だからこそ、体系的で客観的なパートナーサーチのプロセスが必要となる。



グローバルパートナーサーチの概要

タナベコンサルティングの「グローバルパートナーサーチ」は、ターゲット市場において最適なパートナーを発掘するためのコンサルティングメニューであり、クライアント企業の事業特性や市場条件に合わせて柔軟に設計される。プロセスは次の4つのフェーズで構成される。(【図表】)


【図表】グローバルパートナーサーチのプロセス

【図表】グローバルパートナーサーチのプロセス

出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成


フェーズI:現状認識
(内部・外部環境分析)


クライアントの社内データ分析やインタビュー、デスクトップ調査を通じて、内部・外部環境を総合的に把握する。市場規模、産業構造、競合動向、参入障壁や業界トレンドを分析し、ターゲット市場におけるクライアントの強みを明確化する。


フェーズII:ターゲット設定
(ロングリスト作成)


クライアントが求める条件(業界、企業規模、地域、販売チャネルなど)を丁寧にヒアリングし、それに基づき20〜30社のパートナー候補のロングリストを作成する。途中の段階でもクライアントに内容を確認してもらい、方向性が合っているかを微調整し、最終的に優先順位を明確化する。


フェーズIII:実行推進支援
(ショートリスト作成)


優先順位の高い企業から順にアプローチし、クライアントとの取引に興味があるかを確認する。前向きな回答を示した企業がショートリストとなり、次にオンラインによる面談を設定する。この面談は単なる紹介の場ではなく、市場トレンド、競合状況、顧客の購買行動など、現地ならではの情報を直接入手する貴重な機会となる。こうした情報は、クライアントが今後戦略を立案する上で実務的に大きな価値を持つ。


フェーズIV:フォロー
(現地訪問アレンジと同行)


オンライン面談では把握し切れない企業文化、人材の質、設備能力、顧客基盤を確認するため、現地訪問をアレンジし、同行サポートを行う。対面での商談により、より深い信頼関係の構築や契約交渉の精度向上が期待できる。



A社のケーススタディー

A社は産業向け機械装置および部品メーカーで、売り上げの9割以上を国内が占めており、海外売り上げは減少傾向にあった。一方で、欧米からの問い合わせは多く、潜在的な市場ニーズがあることは明らかだった。しかし、英語対応ができる人材が限られていたため、欧米、特に有望な米国市場での積極的な展開に踏み切れずにいた。


支援では米国市場でA社の製品の輸入・販売・メンテナンスを担える企業を探索し、特にA社が狙う大手顧客との取引実績を必須条件とした。期間中、米国で大規模展示会が予定されていたため、この訪問に同行し、現地での面談や商談のサポートも行った。


パートナーサーチでは30社を超える候補をリスト化し、複数社から前向きな回答を得た。展示会ではリスト外の有力候補とも新たに出会い、選択肢がさらに広がった。最終的に複数の有望企業と代理店契約に向けた協議を継続しており、A社の米国展開の大きな一歩となった。



B社のケーススタディー

B社は軽車両向け機械部品メーカーで、従来は日本の輸出商社を経由して海外へ販売してきた。しかし、「B社→日本の輸出商社→海外販売店→ユーザー」という多層構造により、価格や販売戦略のコントロールが難しく、積極的な販売活動を行えない状況であった。


支援では製品を自社で輸入し、積極的に販売・マーケティングを行う米国パートナー企業の探索を行った。30社以上にアプローチし、複数の企業から前向きな回答を得ることができた。B社はそのうち1社と契約を結び、米国市場での本格的なマーケティング活動の準備を開始した。また別の1社とは、米国特有のニーズに基づく新製品の共同開発の検討が進んでおり、市場拡大に向けた新たな可能性が生まれている。


適切な海外パートナーの選定は、海外市場で成功するための重要な要素の1つである。体系的に候補を抽出し、段階的に評価しながら最適な企業を見極めるプロセスは、海外展開の不確実性を大幅に下げる効果がある。A社やB社の事例が示すように、パートナーサーチは単なる代理店探しではなく、戦略立案に必要な情報収集や事業機会の発見にもつながる。


日本企業がグローバル市場で確実に成果を上げるためには、信頼できるパートナーとの出会いを戦略的に創り出すことが不可欠であり、パートナーサーチはその第一歩となる。


PROFILE
著者画像
御舩 浩次郎
Kojiro Mifune

タナベコンサルティング グローバルビジネスマネジャー
国内大手IT企業にてさまざまなエンタープライズ向けのアカウントおよびソリューションセールスを担当。国際部門では米国グループ会社へ出向し、現地日系企業のITインフラのサポート・改善に従事。帰国後、米国スタートアップの日本拠点立ち上げに参画し、マーケティング・新規顧客開拓を実施。タナベコンサルティング入社後は、コンサルティングサービスの海外展開に向け、グループ各社との連携・社内プロジェクトの推進に係る全体総括を担当。