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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2026.01.17

AI時代のマーケティング・営業組織変革 中村 祐輝

AI時代のマーケティング・営業組織変革

顧客理解と最適化による「データドリブン組織」への進化

AI時代において、マーケティング・営業組織は、勘や経験に頼った従来のアナログな手法から脱却し、顧客データを中心とした「データドリブン組織」へと進化する必要がある。


市場の変化が激しく、顧客の購買行動が多様化する今、AIが解析した顧客データを基に、ターゲット顧客の特定、潜在的なニーズの把握、そして最適なコミュニケーション戦略を立案することは、企業の競争力を左右する必須条件となりつつある。


しかし、多くの企業において、顧客データは営業部門やマーケティング部門、また、個人の手元にある表計算ソフトなど、さまざまな場所に散在しているのが現状である。


データドリブン組織への第一歩は、これらのデータを統合し、一元的に管理・分析できる基盤を整備することから始まる。


基盤が整えば、次にAIツールを活用し、顧客の行動履歴、過去の購買データ、アンケート結果などを分析する。顧客の解像度を高め、一人一人の興味関心を理解できる。


そして、得られたインサイト※1を基に、商品・サービス開発や店舗、営業担当者による商談、ウェブサイト、広告、メールマガジン、SNSなど、あらゆるタッチポイントにおいて最適な顧客体験を設計し、提供する。


活用すべきデータは、自社が保有するデータだけではなく、アンケートデータやウェブ上の行動ログなど、社内に蓄積されたデータの活用も検討すべきである。


これらの膨大なデータをAIツールで分析することで、例えば、テストマーケティングによる高速なPDCAサイクル、商品・サービスへのフィードバック、プロモーション訴求内容の見直しといった、マーケティング機能全体のスピードアップを図ることができる。


最終的な意思決定には、人の意思による判断が不可欠である。しかし、AIツールを駆使することで、膨大なデータから導き出される仮説の「量」と、仮説を導き出すまでの「スピード」は格段に向上する。データドリブン組織の実現は、マーケティング領域の意思決定において、進むべき道を示す羅針盤になるのだ。



AI×人による役割の再定義と生産性向上

AIの導入は、単なるツールの導入にとどまらず、マーケティング・営業担当者の役割そのものを大きく変える可能性を持つ。ルーチンワークや定型業務はAIに任せ、担当者はより付加価値の高い創造的な業務に集中すべきである。


具体的には、AIが顧客データの集計・分析、リポート作成、定型的なメール配信や日報作成などを自動化することで、担当者は顧客とのコミュニケーション、戦略・マーケティング立案、コンテンツ制作などに時間を割くことができる。


これを実現するためには、「ルーチンワークを従来通りのやり方で人が行わない」という業務ルールの刷新や、「AIに任せることは手抜きではない」という風土づくりが必要である。


特に営業職においては、個人の属人的な活動になりがちであるため、AIが担う領域と人が担う領域を明確化し、その実行を徹底することで業務効率化につながる。


また、マーケティング担当者は、AIのスピード感に対応できる動きやすいチーム編成を検討する必要がある。従来の縦割り組織では意思決定に時間がかかるため、製品開発・製造・購買・営業などの各部門からメンバーを抜てきし、横断的に意思決定・実行に移すことができる少人数チームの編成を検討いただきたい。


AIによる分析スピードに合わせた意思決定・実行推進までのプロセス設計も、組織変革において重要な要素である。


AIと人の協働により、AIが得意なデータ処理や効率化を担い、人はAIでは代替できない感情への寄り添いや創造性を生かすことで、より質の高いマーケティング・営業活動を実現できる。



AI×提案による企画・提案精度の向上

営業活動において、限られたリソースを最大限に活用し、激しい競争環境の中で差別化を図るためには、AIを活用して企画・提案の精度を向上させる必要がある。


そのために、まずはAIツールで顧客データを分析し、顧客の潜在的なニーズや課題を特定する。


例えば、CRMシステム※2内の顧客の行動・購買履歴などのデータをAIが解析することで、「どのような課題を抱えているのか」「今、顧客は何に興味を持っているか」などの仮説を立てる。営業担当者は、この情報に自身の経験や肌感覚を加えることで、より説得力のある提案を行うことが可能となる。


また、AIは過去の営業データや市場データを学習・分析し、成功した提案内容や構成を特定することで、営業企画そのものの質を向上させる。例えば、「どのような商品・サービスの組み合わせが顧客に響きやすいか」「どの価格帯が受け入れられやすいか」などをAIが提案することで、営業担当者は効果的な提案骨子を作成できる。


さらに、競合他社の提案傾向や最新の市場動向を分析させることで、自社の提案内容を差別化するためのヒントを得ることもできる。


AIは、提案資料の作成プロセス自体を効率化する強力なツールにもなる。顧客データを基に、提案内容に最適な説得力のあるグラフやチャートを自動生成したり、要点をまとめたスライドの下書きを作成したりすることで、営業担当者の事務的な負担を軽減する。


AI時代においてマーケティング・営業組織は、データドリブンな組織への進化によって、AIと人の協働による生産性向上、企画・提案精度の向上を実現する。


前述の通り、人の意思による最終判断が必要であることは変わらないが、AIツールを駆使して膨大なデータから仮説を導き出す量とスピードは組織の意思決定力を高める。データドリブン組織という羅針盤を軸に、マーケティング領域の意思決定力を高めていただきたい。


※1 顧客自身が気付いていない潜在的な欲求
※2 Customer Relationship Managementの略で、顧客の情報、行動・問い合わせ履歴などを一元管理・分析することで、顧客との長期的な関係を構築するためのシステム

PROFILE
著者画像
中村 祐輝
Yuki Nakamura

タナベコンサルティング
マーケティングDX チーフコンサルタント
ITインフラに特化したSI・SES企業においてデータベースエンジニアと営業を経験後、マーケティングリサーチ企業で定性調査のディレクション経験を経てタナベコンサルティング入社。企業のブランディングやマーケティング支援をするコンサルティングに従事。事業の戦略策定から実装までサポートできるコンサルタントを目指して活動している。