デジタル投資を重視する企業が約半数
タナベコンサルティングが実施したアンケート(「中堅企業白書2026」掲載)によると、「デジタル・IT基盤(DX含む)」への投資を重視する企業は44.2%に上り、全体の約半数に迫る。最も高い「人材の採用・育成・活躍」(76.9%)に次ぐ位置付けであり、「新規事業・新サービス開発」(41.0%)と並んで、成長戦略の主要テーマとなっている。この結果から、中堅企業が人材投資を基盤にしつつ、それに次ぐ重点分野としてデジタル投資を重視する傾向が見て取れる。(【図表1】)
【図表1】 今後の成長投資において、重視している項目(複数選択/最大3つ)
業種別に見ると、製造業では「研究開発」(51.6%)や「設備投資」(45.2%)が相対的に高く、情報通信業では「新規事業」(69.4%)が最も重視されている。また、建設業では「DX基盤」(51.7%)が高い割合を占めている。
都市別では、主要都市の企業が「新規事業」(47.2%)を重視する一方、その他の都市では「設備投資」(22.6%)が相対的に高い傾向がある。ただし、いずれの業種や地域においても「人材投資」が7割を超えており、最優先事項であることが明確である。
調査結果から、中堅企業においては持続的な成長を目指すために、まず「人材」への集中投資を行い、強固な基盤の構築を重視していることが分かる。その上で、DXや新規事業を推進し、競争力をさらに高める戦略が求められる。業種や地域によって優先すべき投資項目は異なるが、共通して「人材」が成長の鍵を握っていることは明らかである。
新規事業投資の注力領域については、「自社の強みを生かした事業領域の開拓」が77.3%で最も高く、「顧客ニーズに対応した新市場の開拓」(49.4%)が続く。他方、「業界・業種の枠を越えた新分野」(19.9%)や「新たなビジネスモデルの導入」(12.0%)は相対的に低く、既存領域に近い分野への展開が主流である。(【図表2】)
【図表2】 新規事業・新サービスへの投資において、注力している領域(複数選択/最大3つ)
中堅企業が研究開発に取り組む主な目的として、「業務効率化・自動化」が48.6%と最も多く、「既存製品の高付加価値化」が43.4%と続く。また、「新製品・新技術の創出」は39.4%と一定の割合を占めている。一方で、「投資の予定はない」と回答した企業は23.9%にとどまり、多くの企業が生産性向上を通じた競争力強化を重視していることが分かる。
次世代を担う人材へ投資専門人材、働きがいも重視
中堅企業の人材投資において、「若手の採用・育成」が71.3%、「管理職・次世代リーダーの育成」が70.1%と、次世代を担う人材基盤の強化が主要テーマとなっていることが分かる。(【図表3】)
【図表3】 人材に関する投資において、注力している取り組み(複数選択/最大3つ)
これに続いて、「働きがい・エンゲージメント向上」が37.5%、「専門・技術人材の確保」が35.5%と、特定分野の人材確保や従業員のモチベーション向上も注力されている。
一方で、「リスキリング」は5.6%と低い割合にとどまっており、既存人材のスキルアップよりも、次世代の人材育成に重点が置かれている傾向が見て取れる。
M&Aや資本提携についての調査では、「予定なし」が49.4%と約半数を占める一方、もう半数の企業はM&Aを視野に入れている。
実施の目的は「既存事業の補完・強化」が39.8%で最も多く、「技術・人材の獲得」(31.5%)、「顧客基盤の獲得」(23.9%)が続いており、事業の強化や外部資源の活用を目的としていることが分かる。
海外進出・拡大については、「予定なし」が58.2%と過半数を占める一方、約4割の企業は海外展開を視野に入れている。進出・拡大時の主な狙いは、「販路拡大・売り上げの向上」が30.3%で最多となり、「現地パートナーとの連携強化」(16.7%)や「現地顧客対応の強化」(13.9%)が続く。
中小企業庁「2025年版中小企業白書」では、成長戦略の柱として「設備投資・デジタル化・新事業・人材育成」を掲げ、付加価値向上を重視している。一方、タナベコンサルティング「中堅企業白書」の調査結果でも人材投資が突出しており、DXや新規事業も一定の水準で実施されていることから、方向性はおおむね一致する。
ただし、研究開発による新規創出や海外展開、M&Aといった外部成長分野については、抑制的な傾向が見られる。中小企業白書が示すスケールアップ戦略と温度差があり、外部成長の位置付けが今後の課題として浮かび上がる。
出所:図表全て、タナベコンサルティング「中堅企業白書 2026」
