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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2025.12.26

長期的視点で人材育成を優先する動きが加速 中堅企業白書2026

コスト増と人手不足への対応が喫緊の課題

本稿では、中堅企業を取り巻く経営環境を分析し、成長戦略を描くためのヒントを提案する。タナベコンサルティング「中堅企業白書2026」では、中堅企業の事業運営を制約する主な要因として、「原材料・人件費のコスト上昇」と「人手不足・採用難」を挙げている。この傾向は、中小企業庁「2025年版中小企業白書」が指摘する全国的な課題とも一致している。


【図表1】によると、国内経済の動向が企業に与える影響として最も多いのは「原材料費や人件費などのコスト上昇」(37.8%)であり、次いで「人手不足・採用難」(31.1%)が続く。この2項目で全体の約7割を占めており、多くの企業がコスト増加と人手不足への対応を喫緊の課題として捉えていることが分かる。


【図表1】 現在の国内経済の動向のうち、最も影響を与えるもの

現在の国内経済の動向のうち、最も影響を与えるもの

一方で、「為替変動」(6.0%)「金利上昇による資金調達コストの増加」(5.6%)などは1ケタ台にとどまり、「影響を感じない」との回答はわずか0.8%であった。これらの結果から、コスト増と人材制約への対応が中堅企業にとって最も重要なテーマであることが明確となっている。


【図表2】は、米国(トランプ大統領)政策が中堅企業に与えた影響についての調査結果を示している。結果は、「特に影響は感じていない」が最も多く、全体の29.1%を占めた。一方で、「対中関税の見直しによる輸出入コスト増・供給網への影響」が23.5%と高い割合を占めており、米国の政策が一部の企業にとって課題となっていることがうかがえる。


【図表2】 米国(トランプ大統領)の政策のうち、最も影響を与えるもの

米国(トランプ大統領)の政策のうち、最も影響を与えるもの

さらに、「安全保障・対中対立の激化」(12.4%)「米国第一政策の強化」(10.0%)「近隣諸国への貿易政策見直し」(10.0%)なども影響要因として挙げられている。米国市場への依存度が低い企業では影響を限定的と捉える傾向がある一方、米国市場への依存度が高い企業では、供給網リスクへの備えとして代替調達や分散化が必要であることが示唆される。


中堅企業の過去5年間の業績推移(自己評価)を調査した結果、「非常に好調~やや好調」と回答した企業が全体の約6割(59.8%)を占めた。一方で、「横ばい」は21.5%、「やや不調~非常に不調」は18.8%にとどまっている。


この結果から、中堅企業全体としては堅調な業績推移であることが分かる。業績が好調な企業が多い一方、横ばいや不調を感じている企業も一定数存在しており、今後の経営戦略が重要な鍵を握る。



経営層は社員の意識改革・人材育成を重視

次に、中堅企業の経営者が重視するテーマについてのアンケート調査結果を見ると、「社員の意識改革・人材育成」が40.2%で最も高く、「経営ビジョン・戦略の策定・発信」(23.5%)を大きく上回った(【図表3】)。経営戦略よりも人材育成を重視する姿勢からは、短期的な成果よりも、社員の成長を通じて組織力を高めることを重視する経営方針がうかがえる。


【図表3】 トップマネジメントとして、今の経営環境下において特に重視している役割

トップマネジメントとして、今の経営環境下において特に重視している役割

業種別に見ると、情報通信業では「戦略の策定・発信」(27.8%)や「新規事業の推進」(22.2%)が相対的に高い。一方、卸小売業や建設業では「人材育成」が48%台と最も重視されている。


都市別では、主要都市の企業が「戦略の策定・発信」(30.7%)を重視する傾向が強いのに対し、その他の都市では「人材育成」(46.0%)が上位を占めている。


これらの結果から、自社の業種や地域特性を踏まえ、重点的に取り組むべきテーマを明確にすることが、中堅企業にとって経営力強化の鍵となることが分かる。


「2025年版中小企業白書」では、中小企業が直面する経営環境の課題として、「物価高による利益圧迫」と「構造的な人手不足」を挙げている。これらの課題に対し、中小企業にはコスト削減に依存する従来の発想から脱却し、生産性向上への投資や価格転嫁、経営力強化への転換が求められている。


一方、タナベコンサルティングによる中堅企業の調査結果でも、コストと人手不足が最大の制約である点は共通する。しかし、中堅企業は比較的業績が安定していることから、「人材育成を最重視する姿勢」が顕著である。安定した基盤を生かし、長期的な視点で人材戦略を構築することが、中堅企業の今後の重要な課題となっている。


中小企業が生産性向上や経営力強化に注力する一方で、中堅企業は人材育成を軸にした戦略を進める。この違いを理解し、自社の状況に応じた対応策を検討することが、持続的な成長への鍵となる。


出所:図表全て、タナベコンサルティング「中堅企業白書 2026」


詳細はタナベコンサルティング「中堅企業ラボ」をご覧ください。