ブランドベネフィットの明確化と双方向コミュニケーション
クリエイティブ&コミュニケーションフェーズにおけるブランディング施策の実装は、「ビジョン(=在るべき姿)」の実現に向けて、ブランド価値をターゲットに対し、どのように正しく伝え、いかに浸透させていくか、実装の質を上げることが重要である。そして、ブランド価値から体験する「ベネフィット(ターゲットが得られる利益)」を明確にした上でタッチポイントをいかにつくり出せるかだ。 ブランドの強みは、ターゲットが価値として認めない限り、ブランドの本質的価値に転換できない上、信頼も共感も生まれない。ブランドの一貫性がないまま「手段」にばかり注目し、伝えたい相手に伝えられないまま目的や本質を見失っているケースも多い。 ブランドバリューチェーンステップを正確に踏み、「戦略」に対する適切な「戦術」「手段」を掛け合わせる。その結果、ターゲットがブランドベネフィットを認め、双方向のコミュニケーションが実装できるかどうかが重要である。 コミュニケーション手法は大きく2つ。主に社内向けに行われる「インナーコミュニケーション」と、社外向けに行われる「アウターコミュニケーション」である。また、企業そのもののブランディング活動である「コーポレートコミュニケーション」と、サービスブランドを対象とする「サービスコミュニケーション」を行う場合がある。 いずれにしてもデジタル・リアルを連動させながら、目的に応じたコミュニケーションを展開し、自社のブランドを高める活動を全社員で取り組むことで、ブランド力の最大化を狙うことが重要である。(【図表1】)【図表1】ブランドコミュニケーションの施策
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
❶ 社内の一体感を生むインナーコミュニケーション
まずはブランドの根幹を支えるインナーコミュニケーションにより、社内に理解・浸透させることが理想的である。社内に浸透しないうちに社外に対するアウターコミュニケーション活動を行っても一貫性がなく、ブランドイメージにギャップが生まれる可能性が高い。 そのため、社員一人一人に対する自社のブランドビジョンを統一することが重要だ。インナーコミュニケーション施策においては、①認知②理解③共感④実践⑤評価⑥定着の6つのステップで検討する。(【図表2】)
【図表2】インナーコミュニケーション活動における施策ステップ
出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
帰属意識や愛着心の醸成、モチベーションを向上させる活動など社員の心理・行動面の変容に見合う施策を実行する。経営方針と絡ませ、目指すべきブランドビジョンを周知し、メッセージ発信の継続体制を整える。「自分事化」させ、行動を「見える化」する仕組みも重要だ。 そして、社員自らの宣言や行動に移すことで互いに認め合う風土づくり、目指すべきブランドのあるべき姿を定着させる。最終的に、人事評価制度と連動させたインセンティブや表彰制度などを通し、社員の能動的な取り組みが生まれる活動を目指していきたい。 ❷ 真のステークホルダーに「正しく伝える」アウターコミュニケーション
アウターコミュニケーションは、一般的に社外のステークホルダーに対する自社ブランドの訴求活動とされている。その本質は自社とステークホルダーの双方が思い描くブランドイメージを一致させる活動であり、目的に応じて双方向のコミュニケーション施策を適切に行うことが重要である。 また、ブランドはあらゆるタッチポイントで醸成されるため、「一貫性」のあるブランド体験を実行する必要がある。認知拡大フェーズから始まり、興味関心→情報収集→比較検討→購入・成約→ファン化と、各フェーズのコミュニケーション設計とアクションプランに基づき、伝えたいターゲットの心理・行動変容に合わせて施策を遂行することが重要だ。ここのズレが生じてしまうと、ブランドの存在すらターゲットに響かず、市場で埋もれ、無意味な結果に終わる。 実装しながらも、アクションプランの見直しを行い、時には軌道修正する必要がある。また、1つずつの施策に明確な目的と役割を持たせ、目標(KPI:重要業績評価指標)とゴール(KGI:重要目標達成指標)を定め、効果検証しながらコミュニケーションを行うことも重要だ。(施策は【図表1】参照)
社会に共感される戦略的PRの重要性
ブランドの本質的価値をターゲットベネフィットに転換し、正しく伝えていくこと、その継続的な活動が「ブランド力」を蓄え、企業価値向上につながる活動となる。さまざまなコミュニケーションの形がある中で、特に時代とニーズに見合った情報発信と双方向のコミュニケーションを行えているか、振り返ることも重要だ。 近年は、特にメディアの多様化と生活様式の変化に伴い、人々の価値観・情報収集の仕方が変化している。かつてのマスメディアを中心とした一方通行型の情報発信が通用しなくなった現実もある。影響力の高い第三者(消費者・メディア)の声によって信頼性や共感が生まれる情報拡散を、戦略的につくり上げることも重要である。 いずれにしても、ブランディング活動には終わりはない。ターゲットニーズ・時代の流れをキャッチしながら、ブランディング戦略に沿ったPR戦略を策定し、常に見直しをしながら実行する継続性。それこそが強いブランドをつくり、ビジョン実現につながるのだ。PROFILE
松岡 彩
Aya Matsuoka
タナベコンサルティング
上席執行役員
百貨店事業、法人向け外商部での営業実務を経て、タナベコンサルティングに入社。外資系ラグジュアリーブランド、化粧品業界、飲料・食品業界、教育出版業界、出版業界、コーヒーショップ、ペットショップなど多岐にわたる大手企業のセールスプロモーション支援に従事。デザインの付加価値でブランドイメージを最大化するべく、ストーリーに沿ったプレミアム、ツール制作を得意とし、企業の売上促進や顧客ファンづくりに貢献している。