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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2025.11.28

ブランド力向上へ導くブランドビジョン策定のポイント 竹綱 一浩

ブランドビジョンがブランド力向上の鍵を握る

ブランド力の向上が企業価値を高める。しかし、経営戦略として中長期的な視野でブランド価値を高める投資ができている企業は多くない。 タナベコンサルティングが毎年実施しているブランディングに関するアンケート調査の結果を見ると、ブランディング戦略が策定できている企業は、半数にも満たない。戦略がなく、広告(CMや新聞など)施策ありきの取り組みになるとブランディングに必要な一貫性と継続性を欠き、成果につながらない状況に陥ってしまう。 ブランドの現在地を正しく理解し、ブランドビジョン(目指すべきゴール)を策定することが重要である。 本稿では、ブランドビジョン策定に向けてのポイントを解説する。 ファーストステップとして、保有するブランドバリュー(付加価値要素)を棚卸しする。一方通行のブランディング活動を防ぐため、どのようなブランド価値を提供するかを検討する前に、ブランドの現状を整理し、ブランドの強みや弱みを明確することを怠ってはならない。なお、新規ブランドを検討する場合は、ブランドの母体となる企業の分析を行う。現状整理・分析は、次の観点を意識して実施する。 ❶ ブランドポジション
ブランドの対外的・相対的な位置付けである。自ブランドと競合ブランドを、提供価値基準に基づき整理することで、顧客に提供する付加価値の要素を明確化する。
❷ ブランドコアコンピタンス
ブランドの付加価値を生み出す、他社にまねできない核となる能力(強み)である。バリューチェーンマッピングなどにより整理することで、付加価値の要素を明確化する。
❸ ブランディングプロセス
ブランドの付加価値を生み出す、具体的な企業活動や仕組みである。具体的な活動を整理することで、付加価値が生まれるプロセスを明確化する。


ブランディングの効果と提供価値を明確化

「ブランディングの効果が分からない」という声をよく耳にする。だが、その多くが現状整理と活動前の状況を数値化できていない。スタート時点でボタンを掛け間違えてしまっているのである。 ブランディング成果のKPI(重要業績評価指標)化を実施するための起点として、ブランドイメージや認知度などを数値化しておくことを忘れてはならない。現状の数値化ができれば、今後取り組むブランディング活動の効果を定点で検証し、改善につなげることができる。ブランドイメージ調査を実施する際は、従業員、顧客、取引先など、立場の異なる視点からのギャップ分析(【図表】)を行うことで本質的なブランド価値を導き出すヒントになることがある。CSアンケートや単純な認知度調査だけでは不十分であり、様々なデータを掛け合わせて分析を実施することで精度が上がっていく。
【図表】社員と顧客のブランドイメージギャップ(例) 出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成
社内メンバーのインタビューやディスカッションだけで結論を出してしまい、客観的視点が抜けてしまわないようにすることが重要である。 分析により強み、弱みの素材を集め、客観的かつ立体的にブランド資源の棚卸しを行い、現在地を明確にした上で、今後のブランドが提供する価値やターゲットなどの絞り込みを実施する。 ❶ ブランドベネフィット
ブランドが提供する顧客に対しての付加価値である。これを考えるときには、ブランドバリューの棚卸しで整理したブランドが保有する価値を、“顧客に約束する価値=利益”という視点で昇華させる。
また、“自社・自ブランドらしい提供価値”という独自の視点でキュレーションを行うことも重要である。 ❷ ブランドターゲット
ブランドベネフィットを最も求めている(最も提供したい)ターゲットを設定する。つまり、ブランドが対象とするターゲットはどのような顧客なのかという視点で考えることである。
また、このブランドターゲットを具体化するプロセスを通して、ブランドベフィットをさらに洗練化・具体化することができる。 ❸ ブランドパーソナリティー
ブランドを人間に例え、疑似的な人格(パーソナリティー)を設定する。ブランド価値の具体的なイメージを確認すると同時に、ブランドベネフィット、ブランドターゲットに対するキュレーションの方向性を再確認する。
特にプロジェクトなど複数のメンバーでブランドを検討する際には、このプロセスで議論を深めることで、ブランドビジョン策定以降の戦略策定において基礎となる「ブランドに対しての目線合わせ」ができる。 そして、前章で解説した専門価値(商品・サービスの独自性、技術力で選ばれる)、人材価値(社員の能力や人柄、組織風土の良さで顧客の信頼を得る)、社会価値(地域貢献や環境保護など世の中に良い影響を与え支持される)の3つの視点から唯一無二の提供価値を抽出し、伝えるべきブランドターゲット(真の顧客)を設計し、ブランドの本質的価値(ブランドベネフィット)を定義する。 このプロセスのポイントは、棚卸ししたブランドバリューを基に、ブランドが提供したい顧客にとっての価値を絞り込むことである。絞り込みができていないブランド価値を設定した場合、理想が高く、机上の空論となり、実現性が低くなる。ブランドが顧客に提供したい価値は何か、どのような存在でありたいかを具体化すべきである。


価値創造ストーリーを描きブランドへの共感を高める

現状整理・分析、キュレーションの検討内容を基にブランドビジョンを策定する。構成要素は、①ブランドの目指すべき姿(定性・定量目標)、②ブランドコンセプト(ブランドの目指す世界観)、③ブランド価値創造ストーリーである。 この際に考える「価値創造ストーリー(ブランドストーリー)」とは、ブランドビジョンを実現するためのブランドの考え方を物語としてまとめたものである。一般的には、ブランドにまつわる歴史、社会との関わり、創業者の思い、製品のこだわりなどを、物語として長文でまとめる。ストーリー形式でまとめることで、ブランドビジョンの具体的なイメージを社内外に認知させやすくなる。 ブランドビジョンはビジュアル化し、展開することで直感的なイメージ訴求が可能となり、より共感を高めることができる。 また、ブランドビジョン策定のステップはPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)策定や採用コンセプト設計などにも生かすことができる。 ブランド力を高め、持続的成長を実現するため、ブランディング戦略、ブランドビジョン策定が未着手であれば、まずはブランドの現状整理から始めていただきたい。

PROFILE
著者画像
竹綱 一浩
Kazuhiro Taketsuna

タナベコンサルティング
執行役員

ブランディング戦略パートナーとして、SNSなどのデジタル活用や動画活用を得意とし、ブランド構築からコミュニケーション設計までリアル×デジタルでブランド価値を最大化するコンサルティングを実行。戦略策定から実行推進まで並走しトータルでサポートする。特にブランドストーリーに沿った企画とその推進マネジメントを通じた人材育成で、クライアントから高い信頼を得ている。