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コンサルティング メソッド
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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2025.11.19

顧客視点でのブランディング戦略 伊藤 健一郎

セグメンテーションとターゲティングによる一貫性のあるブランディング

自社の魅力や目指す姿を表現したブランドビジョンやコンセプトを策定しても、それを社会に発信しなければ意味がない。発信、認知に至るまでのコミュニケーション導線を設計しないままブランディング活動を行い、成果が不明瞭になっている企業は少なくない。 ブランドメッセージがターゲットに届くまでの導線を戦略的に設計し、効果的な発信を行う仕組みを構築することが求められる。 ブランディング活動を進めるに当たり、まずはブランドを届けたい対象(ターゲット)を細分化することから始める。次に、限られた資源(予算)を集中させ、最も効果的な発信を行うことで、自社ブランドの認知を最適化し、顧客をファンへと育成していく。 具体的には、市場や顧客を、年齢・性別・ライフスタイル・価値観といった属性や、ニーズなどの行動パターンに基づいてセグメント化する。ターゲットの特性を深く理解し、競合との差別化をより明確にすることがポイントである。 その際、商品やサービスの典型的な顧客像を、具体的な1人の架空の人物に設定する「ペルソナシート」へ落とし込むことで、ターゲットを深く理解できる。 ペルソナシートは個人で作成するのではなく、グループワークやディスカッションを通じてターゲットに関する議論を深め、社内の共通認識を高めながら策定することをお勧めする。 ペルソナシートが完成次第、ペルソナとのタッチポイントを検討する。具体的には、顧客が商品を認知してから購入・利用に至るまでの一連の体験を「カスタマージャーニーマップ」としてまとめる。 前述の通り、ブランディング活動には一貫性が重要である。だが、ターゲットが取る行動パターンを把握し、点での接点ではなく、一連の流れを網羅したタッチポイントの導線を設けることも肝要である。ペルソナの視点に立ち、自社(ブランド)を認知し、興味、関心からファンに育成するまでに想定される体験価値を洗い出し、各タッチポイントに必要なコミュニケーション方法を絞り込む。 1社、事例を紹介したい。90年以上の歴史を持つ中堅薬品メーカーA社は、ロイヤルカスタマーの高齢化という課題に対応するため、ブランドの強みの再定義、セグメンテーションとターゲットの見直しに着手した。 必然的にターゲットの若返りが求められる中、今まで自社がターゲットにしていない若年層へのアプローチを行う上で、カスタマージャーニーマップを活用した戦略策定がポイントとなった。 まず、ブランドを認知するまでの接点を洗い出し、効果的なコミュニケーションツールを選定。ブランド調査も並行しながら、ターゲット層が好むクリエイティブを検証するなど、PDCAサイクルを回し続けた。さらに、若年層との親和性の高いIPコラボレーション(他社の知的財産をもとに新しい商品やサービス、プロモーションなどを展開すること)も実施した。 同社は、これらのデジタル施策を中心に行いつつ、ターゲットの具体的な興味・関心を喚起するタッチポイントにおいては、サンプリングやイベントへの出店、ノベルティー配布などのリアルなコミュニケーション施策を組み合わせて、一貫性のあるブランディング活動を展開している。


実装に向けたアクションプラン・KPI設計

ブランドを正しく伝えるための戦略準備が整ったら、具体的な施策活動に合わせたアクションプランを設計する。アクションプランがなければ、いつまでに・誰が・何を実行するかが曖昧になり、ブランディング活動が低迷してしまう。 5W2Hの視点でアクションプランを設計し、ガントチャートや、作業を分解して構造化するWBS(Work Breakdown Structure)を作成することで、プロジェクト全体の進捗しんちょくを管理し、効率的に運営するマネジメント体制を構築できる。 また、施策ごとにKPI(重要業績評価指標)を策定することも重要だ。その際、KPIは定量的な指標で設計すべきであり、担当者の印象や定性的な側面のみで施策の効果を判断することは避けたい。KPIと効果測定の方法を実施前に明確化することで、客観的なフィードバックが可能となり、PDCAサイクルを通じて施策の精度を高めることができる。 大手自動車ディーラーB社は、ブランドターゲットに対し、緻密ちみつなカスタマージャーニーマップを設計の上、リアルとデジタルを駆使したタッチポイントを形成している。施策検討時には施策ごとのKPIを設計。月初・月末の定例会議にて進捗の状況を確認し、改善が必要な場合はすぐに修正しながら施策の最適化を目指している。ターゲットのニーズが日々変化していく中、KPIを軸としたブランディング施策をマネジメントすることで、変化に対応しながらブランディング活動を進化させている。

ブランド発信の全てがPR

PR(パブリックリレーションズ)とは、企業がステークホルダーと良好な関係を築くための活動および考え方である。プレスリリースの発信やパブリシティーの獲得といった従来のPR活動にとどまらず、現代では企業におけるあらゆるコミュニケーション活動がPRに含まれる。 PRコミュニケーション戦略を構築する上で基本となるのが、「PESOモデル」という考え方だ。(【図表】)
【図表】「PESOモデル」の考え方 出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成

PESOモデルとは、テレビCMやウェブ広告など費用をかけて情報を拡散する「Paid Media(ペイドメディア)」、第三者(マスメディアや生活者)の発信によって信頼性を獲得する「Earned Media(アーンドメディア)」、自社サイトやECサイトなど自社で管理・運用する「Owned Media(オウンドメディア)」、SNSなどを起点に生活者間で情報が共有・拡散される「Shared Media(シェアードメディア)」の4メディアを組み合わせたメディア戦略の枠組みを指す。 かつてのメディア戦略は、テレビCMに代表されるペイドメディアが主軸であったが、SNSの台頭により情報発信の主体は企業から生活者へと大きく変化した。 そのため、現代で情報を広くステークホルダーに届けるためには、「生活者が自発的に情報を発信する」という視点が重要である。ブランド力は、単なる知名度とイコールではない。もちろん、知ってもらうことは重要だが、どのようなタッチポイントでブランドを認知させるかが重要である。 自社のブランドを伝える際、企業からの一方的な主張はターゲットに響きにくい。常に顧客の視点に立ち、一貫性のあるブランディング活動を展開していただきたい。

PROFILE
著者画像
伊藤 健一郎
Kenichiro Ito

タナベコンサルティング
ブランド&PR ゼネラルパートナー

「まず自らがその商品・サービスのファンになる」ことをモットーに、ブランドビジョンを基にブランディング活動を一気通貫で支援するコンサルティングを展開。食品・医薬品・飲料・小売・生活用品メーカーを中心に実績多数。ブランド構築から、マーケティング戦略構築、PR観点でのプロモーション実装まで支援するスタイルで、顧客のファンづくりに貢献している。