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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2020.01.31

人を動かして業績を上げる 「業務時間活用術」:川口 勉

 

 

 

ある営業管理者の活動分析

※四捨五入の関係で内訳の計と構成比は一致しない
出所:タナベ経営

 

 

業務環境の実態

 

人材派遣大手のリクルートスタッフィングが行った調査によると、2019年4月の「働き方改革関連法」施行以降も残業時間に変化がないと考える管理職が6割に達するという。 

 

同社は企業で働く中間管理職412名を対象に、働き方改革の影響と変化を尋ねた。61.2%が自身の残業時間に変化がないと答えたほか、所属部署全体の残業時間も変わらない人が過半数(54.6%)いた。また、逆に残業時間が増えた人も約1割いた。(【図表1】)

 

残業が増えたと回答した人に内容を聞くと(複数回答)、「所属部署の管理業務」(71.7%)や「部下のサポート業務」(58.5%)が多くを占めた。部下の残業時間削減のために、自身の仕事量が増えていると感じる管理職は3割超(34.2%)いた(【図表2】)

 

人手不足も問題だ。日銀短観の雇用人員判断DI(「過剰」の回答率から「不足」の回答率を引いた指数)を見ると、2019年12月時点で大企業・全産業がマイナス21、中小企業・同はマイナス34と、バブル景気(1989~91年)に次ぐ高水準の人材不足感を示している。

 

多くの企業は人手不足の中で残業時間削減を迫られており、生産性向上への取り組みが急務となっている。特に、管理職は改めるべき問題が山積しているのが現状だ。

 

 

【図表1】「 働き方改革関連法」施行後の残業時間の変化(n=412人)

※ 2019年7月時点調査
出典:リクルートスタッフィング「働き方改革における管理職への影響と変化 調査結果」(2019年9月30日)

 

 

【図表2】 部下の残業時間削減のために、自身の仕事量が増えていると感じるか(n=412人)

出典:リクルートスタッフィング「働き方改革における管理職への影響と変化 調査結果」(2019年9月30日)

 

 

 

 

 

 

 

1日のスケジュールから見る管理職の業務量

 

コンサルティングのクライアント先でも、業務や計画が進まない理由として「人がいない」「忙しい」といった言葉を経営幹部からよく聞く。業務量が増える傾向にあるのは確かだろうが、状況はどこの会社も同じだ。それは言い訳にならない。

 

管理職の大半は、個人業務と部門マネジメントを兼任するプレーイングマネジャー(実務者兼任管理者)である。だが、実態は個人業務が大半を占め、部門マネジメントは場当たり的になっているケースが多い。

 

下図は、ある管理者の1日のタスクを示したものだ。部門での立ち位置は、野球に例えると「4番バッターでエースピッチャー」。部門業績を上げようと必死に外回り営業で稼いできたが、ここにきて営業成績が低迷している。

 

原因は、若手の部下の退職が続き、その後に入社した部下が育っておらず、本来は部下が担当するべき業務も自ら抱え込んでしまっていることにある。さらには業務多忙によって、部下の育成・指導時間が取れない悪循環となっていた。

 

全活動のうち部下の教育(コミュニケーション)が占める割合は0.7%。1日の拘束時間を9時間とすると、1日当たり約4分しか時間を取っていないことになる。これでは部下に指示を出したり、報告を受けたりするだけで精いっぱいだ。従って、部下とのコミュニケーションの時間をいかに確保するかが大きな課題となる。

 

では、この管理者はどのように業務を進めていけば良いのだろうか。取り組むべきことは、次に挙げる二つだ。

 

(1)業務の棚卸し
多忙な管理者ほど、自分自身が抱える既存業務の位置付けを精査していない。業務タスクの中で、自分にしかできない仕事と、他人(部下)に任せることができる仕事をはっきりと分ける必要がある。

 

(2)部下が背伸びすればできる仕事は任せていく
仕事の生産性は、「アウトプット(成果)÷インプット(投下エネルギー)」で求められる。部下が背伸びをすれば、ある程度できるような業務は割り切って任せてしまう。管理者はハイレベルの仕事に注力した方が、圧倒的に生産性は高くなる。部下には仕事の完成度を高く求めすぎないことだ。

 

 

 

 

 

やるべきは、解決できていない重要度の高い業務

 

管理者は、自らの業務タスクのうち、どの業務が「最も会社の付加価値を上げるか」を明確にしていただきたい。その上で、業務の重要度と緊急度をしっかりとジャッジし、部下に指示・命令を行うことが重要である。

 

優秀な管理者は、自らの業務の優先順位を緊急度と重要度で考え、「緊急度は低いが、重要度の高い」業務から着手していく。例えば、じっくりと組み立てる年度方針作成、半年から1年の期間で実施する改善計画の立案、すぐに解決が難しい長期的課題の検討などである。

 

優秀な管理者は、業務全体を部分最適ではなく全体最適で捉えることができる。例えば、社内の受発注業務で、社員が入力に3時間を要する作業がある場合、「わが社は昔からこうやっている」という考えではなく、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:ソフトウエア型ロボットによる業務自動化)の導入など、新たな発想で業務改善を図ることが必要になってくる。

 

管理職の方々は、ぜひ真のネック工程や利益の源泉を、全体最適で捉える視点を持っていただきたい。

 

 

 

 

PROFILE
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川口 勉
Tsutomu Kawaguchi
大学卒業後、大手流通業を経てタナベ経営に入社し製造業・建設業・小売業・サービス業・卸売業など多くの業種に携わる。「企業が良くなるため」の視点から、常に経営者と議論を深めている。中期経営計画や経営における戦略構築、人材育成や現場マネジメントなど多数の企業の改善に関わり業績改善を実現している。現在は「新規事業開発研究会」のサブリーダーとして活躍中。