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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2018.02.28

効果的な広告を打つための6ステップ:大山 賢一郎

 

「真の顧客」への広告アプローチ

広告を打ってみたけれど効果がない――。そう感じている企業は、いま一度、自社の広告戦略を見直してほしい。大企業の物まねのような広告戦略を立てていないだろうか。企業規模・事業特性・顧客層などによって、取るべき広告戦略があるのだ。

中堅・中小企業の場合、大企業とは違い、特定のターゲットに向けてサービスを行っていることが多い。その特定ターゲットに効果的な広告を打つ必要があるが、広告成果を得られない企業の多くは、少しでもレスポンス(反応)率を高めようと大きなターゲットに広告を打っている。しかし大切なことは、広告のターゲットを「真の顧客」に絞ることなのだ。

例えば、高級リゾート物件を販売しているA社は以前、大手新聞への出稿や折り込み広告を行っていたが、成果が上がらなかった。そこで目を付けたのが、富裕層向けのクレジットカードの会員誌への出稿だった。確実にターゲットへ届く媒体に絞り、富裕層へのリーチ(広告到達率)向上に成功した。大手紙での広告に比べ、情報にプレミアム感が出て、大幅に契約数が伸びた。

このように、中堅・中小企業は自社の真の顧客へしっかりとアプローチができるメディアを使い、自社をPRする必要がある。次に、中堅・中小企業が成果を上げる広告戦略策定の6ステップを紹介する。

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Step1 ターゲットの選定

まずターゲットの選定である。ここで必要なことは、ロイヤルカスタマー(自社への忠誠度が高い顧客)を選ぶこと。「パレートの法則」(2:8の法則)でいう、売り上げの8割を占める上位2割の顧客を指す。単純に直近の売り上げだけでなく、中・長期間の購入金額、購入頻度、購入期間を調べることだ。つまり、総合的な見地でロイヤルカスタマーを選定する必要がある。

ロイヤルカスタマーの選定が終わったら、次にロイヤルカスタマーの共通点を探る。自社のロイヤルカスタマーはどのような人が多いのか。年齢、性別、家族構成、趣味、ブランド志向か性能重視か、購入のタイミングはいつかなど、さまざまな切り口で共通点を探り、ロイヤルカスタマーになりやすい人を広告ターゲットとして設定する。

例えば、ロイヤルカスタマーの共通点が「関東在住」「40代女性」「ファッションに興味あり」であれば、これに当てはまる層がターゲットとなる。ここで大切なのが、“or”ではなく「and」でターゲットを絞ることだ。ターゲットが狭くなることを恐れずに、できるだけ細かく絞る。少しでも引っかかる可能性がある層に広告を投下したい、という心情は分かるが、広告効果を高めるには「絞る」ことが最も重要なポイントである。

 

Step2 目的を明確化する

広告を通じて、顧客を何へ誘導したいのかを明確にしなければならない。自社のサービスを知ってもらいたいのか、自社に来店してもらいたいのか、サービスを体験してもらいたいのか、商品を購入してもらいたいのか――。広告のゴールを明確化させる必要がある。

 

 

Step3 メディアの選定

メディアを選定するポイントは3点。1点目は、Step1で出たキーワードから選定すること。2点目は、できるだけ広い選択肢からメディアを選定すること。近年は新聞、雑誌、ラジオ、テレビのいわゆるマス4媒体やインターネットに限らず、特定のターゲット向けのフリーマガジン、小・中学校の給食の献立表への広告掲載など、ニッチでユニークな広告手法がある。3点目は、固定観念を外すこと。例えば、化粧品会社が土木業界向け情報誌に広告を出し、ヒットした例がある。その情報誌のメイン顧客は小規模の土木会社で、そのような会社は社長夫人が購買担当であることが多い。社長夫人がその情報誌を見ることも多く、しかも土木業界専門誌の化粧品広告となると目に留まりやすい。そのため、ヒットにつながったというわけである。

このように、意外な組み合わせが成功を収めることもある。「自社には関係ない」と考えず、さまざまな可能性を考えてメディアを選定することが必要だ。

 

Step4 目標を明確化する

少なくとも次の3つの目標を明確にしてから、広告を打ってほしい。

1点目は、注文客獲得単価(CPO:Cost Per Order)。1人から注文を取るのに、どれくらいのコストをかけるかという指標である。2点目は、見込み客獲得単価(CPA:Cost Per Acquisition)。1人の見込み客を獲得するために、どれくらいのコストをかけるかという指標だ。そして3点目が、引き上げ率である。見込み客がどれくらい発注客になったか、という指標である。

このような指標がなければ、今後改善をしていく上での目標がなくなってしまうので、必ず目標を立てるようにする。
Step5 広告物の作成

広告物の作成で重要なポイントは2点ある。1点目が、ターゲット・目的・メディアを強く意識すること。例えば、幼稚園や保育園に子どもを通わせる親がターゲットなのに、広告でシニア好みの配色を打ち出してはいけない。さらに注意したいのが、つい万人受けを狙ってしまうことである。決めたターゲットにだけ広告を打つことを徹底する必要がある。

2点目は、顧客の「バイイングポイント」を押さえること。セリングポイント(売り手から見た商品・サービスの購入メリット)と、バイイングポイント(買い手から見た商品・サービスの購入メリット)がずれていることは多い。ロイヤルカスタマーにアンケートを取り、なぜ自社商品を選んだのか、あらためて認識する必要がある。

 

Step6 PDCAサイクルを回す

最も重要なポイントは、それぞれのステップでPDCAサイクルを回し続けることである。広告戦略で成功している企業は、必ずといっていいほどPDCAサイクルを回して広告効果を高めている。ステップごとにPDCAを行い、改良し続けることが大切だ。

これら6つのステップを確実に行い、効果的な広告を打っていただきたい。最後にもう1度強調する。中堅・中小企業の広告戦略で大切なことは、大企業が展開している広告に惑わされず、「ターゲットを厳選」し、「ターゲットのみに広告を打つ」ことなのである。

 

PROFILE
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大山 賢一郎
Kenichiro Ohyama
SPコンサルティング本部において、広報支援活動をはじめノベルティー・販促商品の企画提案などで活躍。コンサルティング戦略本部に異動後は、培った顧客管理手法やコミュニケーション手法を基に営業コンサルティングや教育体系づくりのコンサルティングを展開、クライアントの成長発展に貢献している。