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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2018.01.31

生産現場での「生産性カイカク」:小谷 俊徳

 

先端技術を現場で活用するには

タナベ経営が提唱する2018年度の経営戦略テーマは「生産性カイカク」である。改革をカタカナ表記にしているのは、コストダウンや作業手順の見直しなど、従来から存在する「カイゼン」ベースの“改革”を超える意味を含んでいる。

折しも政府は2017年12月8日に、生産性革命と人づくり革命の新たな経済政策パッケージを公表した。2018~2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、大胆な税制、予算、規制改革を総動員するというのが趣旨である。

具体的には、

・労働生産性を年2%以上の向上

・設備投資額を2016年度比で10%増加

・3%以上の賃上げ

――という3つの成果目標を掲げており、そのポイントの1つとしてIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボットなど最先端技術の開発・実装が挙げられている。

タナベ経営では、多くの優良企業を視察し、講演を聴くという現場型の勉強会「ものづくり研究会」を開催している。その活動を通じ、私はIoTをはじめとした先端技術の活用が、製造業で急速に広がってきたことを肌で感じている。

生産性を、現在の延長線上での改善ではなく、飛躍的に進歩させる「カイカク」へつなげるためには、やはりIoTやAIなど先端技術の活用が必須である。ただ、やみくもに導入しても効果は上がらない。では、どのようにして生産現場で生産性革命を実現するのか。私は次の3つのステップを推進する必要があると考えている。

Step1:現状認識

人脈、時間、空間系列による分析で、現状の生産体制を正確に把握する。

Step2:ネック工程対策

現状認識から見えてきたネック工程に対し、適切な対応策を検討する。

Step3:具体的実行策の策定

ネック工程に対する対策を3~5年の中期と初年度の月次実行計画に落とし込む。

次に、それぞれの具体的な進め方を説明していく。

 

 

Step1 現状認識

タナベ経営では、「幹部候補生スクール」で現状認識の手法を教えているが、経営の現場での活用度合いは低いと感じている。それは、分析する対象によって基本通りの分析手法を使うのではなく、応用した手法に置き換える必要があるためである。

基本的な手法は、人脈、時間、空間系列での3つの分析により、大局的観点から課題を見いだすのだが、その分析対象によって、人脈系列が最も重要なときもあれば、空間系列の分析が重要なときもある。一般的な現状認識では、時間系列の分析が鍵となるケースが多い。(【図表1】)

しかし、企業全体の現状認識では、業務フロー分析が最適な場合が多いのに対し、生産現場においては業務フローよりも工程別の分析が適していることが多い。

このように、見方や視点によって分析の手法は変わってくる。工程分析表の具体的な活用事例として、工程別のムダ取りがある。

設備産業であれば工程別の加工機の能力や稼働状況などに視点を合わせて、分析(原因と対策)をする必要がある。つまり、現状の生産体制を客観的に把握し、どの切り口で分析するのが最も現状の課題を浮き彫りにしてくれるのか、最適な手法の選択を迫られる。

では、設備産業での空間分析は、どのようにすればよいのだろうか。設備のレイアウトを中心に原材料から仕掛品、完成品までの流れと、副資材や工具・冶具などの配置状況を分析することで、ムダな動線が発生していないかを現状認識する。(【図表2】)

基本的に、工場のレイアウトは「I型」か「U型」が基本となる。設備産業における設備のレイアウトは、「I型」が基本となっているケースが多い。

【図表1】では、人の配置を空間系列に入れているが、人脈系列でも近い分析ができる。すなわち、作業員の能力が各工程に適しているのか、情報の伝達がどのようにされているのかを見ていく。

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Step2 ネック工程対策

ここでは、Step1で行った現状認識の結果を大局的に見て、どの工程にIoTを導入すれば、情報の伝達がスムーズになったり、設備の稼働率を上げることができるのか、つまり改善ではなく「改革」レベルの視点を持って、対策を検討する必要がある。

最近はIoTという言葉が独り歩きしている傾向があるため、ここで少し説明を加えたい。単独で存在していたモノや機械を、インターネットを介してつなぐことにより、多くの情報を収集して活用することである。

IoTを活用する目的は、大きく分けて次の2つがある。

(1)自社製品の付加価値を高め、差別化する

(2)予防保守システムを確立し、効率的な生産を行うことでコストダウンを図る

第4次産業革命に必要不可欠な技術と言っても過言ではなく、M2M(Machine to Machine:機器間通信)やスマート工場のベースとなる技術でもある。

つまり、Step2で重要なのは、Step1の現状認識で出てきた課題に対して、生産性を向上するための具体的手段を決めることにある。そのためには多くの最新の情報収集も必要といえる。

 

Step3 具体的実行策の策定

Step2で検討した具体的な解決手段を、短期と中期の事業計画として落とし込む。

3~5年の中期計画を策定している企業は多いが、これだけでは実践的な行動が遅れることが多い。初年度は月次の実行計画まで落とし込み、毎月の進捗確認を実施しないと計画策定だけで終わってしまう。一度、自社の生産現場の改革案を検討し、3つのステップから「生産性カイカク」を実現してほしい。

PROFILE
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小谷 俊徳
Toshinori Kotani
非鉄金属メーカーで生産管理に従事し、その後、食品メーカーで工場長、品質保証の責任者を経験。国内外の協力工場の品質・生産管理指導や海外工場立ち上げ時の技術指導も行う。タナベ経営に入社後、現場で培った経験をもとに、生産現場のほか調達から物流まで幅広い分野で、業績改善を軸にコンサルティングを行っている。創意工夫をモットーとする現場主義コンサルタント。