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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2023.12.27

協立機電工業:長期ビジョンを実現する人事制度へ刷新~ジョブ型とメンバーシップ型の併用~

ポイント


1 課題を解決し、ビジョンを実現する人事制度を構築
2 若手社員も含むメンバーでプロジェクト発足し、「求める人財像」など5つのテーマを検討
3 新人事制度ではジョブ型とメンバーシップ型を併用

 

 

 

お話を伺った人


協立機電工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 蘆田 健司 氏

 

 

 

課題を解決し、ビジョンを実現する人事制度を模索

 

――協立機電工業様の概要について教えてください。

 

蘆田社長:1949年設立の当社は、日立グループ特約店としてポンプ、モータ、圧縮機等の産業機械や空調機械の販売からメンテナンス・据付工事までを一貫してお客様にご提供するとともに、自動車や建設機械向け部品の販売から精密加工までをグローバルに展開するなど、トータルソリューションのエンジニアリング商社として100億円企業にまで成長を遂げてきました。

 

また産婦人科向けのソフト開発も手掛けており、特許を取得したエコー動画配信システムでは、これまでに全国で65万人以上の妊婦さんにご利用頂くとともに、脱炭素に貢献する太陽光発電設備やEV充電器の据付工事を行うなど幅広い分野で事業を展開しています。お蔭様で2014年に建設した自社ビルに関して、2016年度省エネ大賞の省エネ事例部門において「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しています。

 

当社は一貫して社員教育とIT投資に力を入れてきました。社員教育に関しては12年前からグローバルでの視野を広げるために語学研修を始め、コロナ蔓延で中止するまで延べ18人の社員が研修に参加しています。また8年前には次期幹部社員を選抜する教育を開始し、最終的に選ばれた幹部候補生により、2019年10月に当社初の長期経営ビジョン「KYORITSU Revival Plan 7580」(KRP)を作成しました。

 

2029年の創業80周年を見据えた内容であり、企業理念を「新未来を協創するイノベーションカンパニー」と定めました。そして顧客価値の向上と社員の夢を実現し、次世代にも快適な環境づくりで社会に貢献し持続的な成長を果たし、社員が生き生きと働き誰からも愛される会社になることを目指す。それが私たちの存在意義であり使命です。

 

そしてその達成に向けて人的資源の生産性を高める必要が生じたことから、人事制度再構築プロジェクトを推進し、タナベコンサルティングにご支援頂きました。

 


2014年竣工の自社ビル(本社別館)は、2016年度省エネ大賞の省エネ事例部門で「資源エネルギー庁長官賞」を受賞

 

――KRP推進にあたり、人事制度の再構築が必要となった背景についてお聞かせください。

 

蘆田社長:長期経営ビジョンを達成するには、挑戦・成長できる風土へ変えていく必要がある、という想いがありました。そのため、従来のビジネススタイルからの脱却を重要テーマに位置づけ、全社的な課題を7つのRevival Planにまとめました。新規事業の創造や海外売上の拡大などの成長戦略推進とともに、HRMもその1つに掲げています。

 

実は、従来の人事制度は等級と役職がほぼ「=(イコール)」で、キャリアを重ねた社員の多くが部長に昇格し、社員の4人に1人が部長、という状態でした。管理職ばかりが増え過ぎる状態は好ましくありませんし、また採用の側面において今後新卒生が減るのは間違いなく、中途入社社員を迎え入れる制度設計に変更する必要がありました。

 

――弊社Webセミナーへのご参加をきっかけに、人事制度の再構築をご提案しました。

 

蘆田社長:父である初代社長蘆田敏之がタナベコンサルティングのファウンダー・故田辺昇一氏と親交があって、昭和42年には当時ではまだ珍しかったワシントン視察にも同行しました。私も9年勤めた日本興業銀行を退職した後、第1期後継塾にて1年間、将来経営者となるべく教育を受けています。現在も幹部候補生スクールなど教育研修でお世話になっており、コンサルティングの依頼は初めてでしたが、ぜひお願いしよう、と決めました。

 

 

「求める人材像」を明確にし、等級制度、評価基準などを整備

 

――2021年10月に始動した人事制度再構築プロジェクト(PJ)について教えてください。

 

蘆田社長:PJでは、①求める人財像の明確化、②等級・評価、③賃金、④退職金、⑤定年再雇用制度、の5つについて、順に議論を進めました。

 

主なPJメンバーは役員2名、人事や経営企画といった管理部門とエンジニアリング部門の部門長らですが、未来志向で人事制度を作成したかったので、プロジェクトの推進役には人事部門から大胆にも3年目の女性社員を指名しました。

 

彼女を指名した成果は早速現れました。それは「未来志向の人事制度」について大谷翔平選手が16歳の時に作成して有名になった目標達成シート「マンダラチャート」を活用して検討したいという提案をしてくれたことでした。2人で議論を重ね、出来上がったものを都度PJメンバーに検討してもらい、1年後の全社会議にて発表しましたが、社員から見て大変理解しやすかったのではないでしょうか。

 

タナベコンサルティングとの打ち合わせは約3時間のミーティングを月2回開催し、私も途中から毎回参加するようにしました。初めに着手したのが、「人財ビジョン」の明確化です。

 

企業理念や長期ビジョンと一貫性があるものに刷新しました。具体的には切磋琢磨して高め合い、共存共栄で一人ひとりを尊重する「競和」と、協力し合いながらも依存せず、自ら高い目標を立て行動を起こす「自主」という創業以来大切にしてきた精神を基軸に、あるべき社員像として「日新・挑戦・感謝・誠実」を付け加えたものを人財ビジョンとしました。

 

新たに人事制度の設計や運用の基本的な考え方として「働きがいのある会社づくり」を「人事ポリシー」と定めました。具体的には「互いに理解を深め、助け合う風土」「明確な役割責任」「透明性の高い評価」「メリハリある処遇」「成長が期待できる教育制度」です。


人財ビジョンを明確化し、企業理念や長期ビジョンと一貫性のあるものへ刷新

 

――人財ビジョン・人事ポリシーに基づき、各制度の内容について細やかな検討を重ねました。

 

蘆田社長:等級制度においては、人財ビジョンから求められる能力と等級(役割)のルールを再定義しました。部長など上位職は管理職と専門職の2コースに分けて複線化し、昇降格の基準も明確にして運用しやすくなりました。

 

評価制度も抜本的に見直しました。等級ごとの評価項目が細かく煩雑だったのをシンプルにし、評価しやすく変えました。具体的には、一般職・総合職は「情意・能力・業績」の3項目、管理監督者の専門職・管理職は「業績・役割」の2項目に定めました。

 

賃金制度は、基本給を等級に応じる職能給、もしくは役割給に一本化し、複雑だった諸手当も整理統合しました。また、総合職の賃金基準は等級ごとに重複がない接続型に変え、経験や能力の向上とともに等級も給与も高くなる設計にしました。

 

退職金制度も「勤続年数×基本給」から、「勤続年数×等級×評価」のポイント制に変えました。これにより、例えば優秀な中途採用社員は、評価に見合う処遇を受けられるようになりました。

 

 

ビジョン実現を見据え、連携・シナジーを創出する仕組みを構築

 

――より公平で運用も適正な新人事制度を、ルールと基準、評価の項目や手順まで丁寧に全社員に発信し、フィードバック面談の内容も開示しました。

 

蘆田社長:新人事制度では、ジョブ型とメンバーシップ型を併用しているのが一番のポイントです。新制度だと評価にメリハリがつき、昇降格の基準も明確になるので、がんばった社員が公平に評価されます。人事制度の全体像がわかりやすく具体的になったと実感しています。

 

人事制度説明会も開催して、周知の徹底を図りました。コンサルタントが新人事制度の本質や、第三者の目から見た客観的な課題感と解決アプローチをわかりやすく伝えてくれて、社員も感情的にならずに聞くことができました。

 


人事制度再構築プロジェクトの様子(左)
人事制度説明会では新人事制度の内容や改善点などを解説(右)

 

 

新制度の理解・浸透を推進。

長期視点でぶれずに100周年企業を目指す

 

――長期ビジョンの推進力を高める新人事制度が2023年4月からスタートしました。

 

蘆田社長:人事制度の運用支援PJも引き続き、タナベコンサルティングにお願いしています。制度説明会での社員の反応や考課者研修を実施した結果を踏まえ、正しい理解と運用を支援するフォローアップが必要だと感じました。特に、管理職と専門職の上位職は、業績・役割評価の指標となる数字や目標の立て方や精度、評価が可能な要件設定能力などを高めていく必要があります。

 

受け止め方は個人差もありますし、制度が本当の意味で理解され、浸透していくのはまだこれからです。3年間は試験運用期間と位置づけています。100周年を見据えて、長期的な視点に立ち、ブレることのないように一歩ずつ、着実に進めていきます。

 

――人財ビジョンにも掲げる「挑戦」と「日新」を、蘆田社長は大切にされています。

 

蘆田社長:「挑戦」は自ら高い目標を立て、達成のために考えて行動すること。「日新」は、いまの工夫に満足することなく日々、工夫や改善を続けることです。自分から問題意識を持って改善を繰り返し、高い目標に挑む社員一人一人が、当社の未来をつくっていきます。

 

新人事制度の始動により、「人財ビジョン-成果・発揮能力」で導きだされる「育成テーマ」が明確になったので、次のステージでは教育制度の刷新にも取り組んでいきたいと考えています。タナベコンサルティングにはすでに、社内アカデミー制度など教育体系を整備し、人材育成につなげる提案もいただいています。

 

今回のPJでは外部パートナーという意識ではなく、何でもオープンにコミュニケーションを重ねることができました。一体感と熱意あるサポートを、これからもぜひお願いしたいですね。

 

――タナベコンサルティングへの評価と期待をいただき、ありがとうございます。100周年企業を目指す協立機電工業様を、今後も支援し続けてまいります。本日はありがとうございました。

 


「挑戦」「日新」を続ける社員一人一人が、協立機電工業の未来をつくる(写真はクラブ活動の様子)

 

PROFILE

    • 会社名:協立機電工業株式会社
    • URL:https://www.kyoritsu-kiden.co.jp/
    • 所在地:〒162-8575 東京都新宿区水道町3-9
    • 設立:1949年8月
    • 従業員数:194名(2023年11月現在)

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