TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2023.07.05

敷島住宅:アフターサービスを通じてファンづくり・ブランディングを推進

ポイント


1 社員参加型の5プロジェクトで事業成長・企業価値向上に貢献
2 アフタープロジェクトで、“生涯お付き合いのできるファン”を増やす
3 成果を評価し、挑戦・行動を促す人事制度へ刷新

 

 

 

お話を伺った人


敷島住宅株式会社 代表取締役社長 川島 永好 氏

 

 

 

「生涯のお付き合い」ができるパートナーを目指して

 

――敷島住宅様の概要についてお聞かせください。

 

川島社長:創業者である父(川島岩太郎氏)が高知県から大阪に出て創業し、1962年に敷島住宅を設立しました。私は1980年に入社し、それ以来43年間、諸先輩方をはじめ、いろいろな方々にお世話になってきました。

 

先代の時代は高度経済成長とともに住宅事業が時代の波に乗り、成長を続けていました。ただ、私が二代目を継いだ2004年には事業環境も変わっており、当時は安定収入の確保と、お客様との関係性の強化が課題でした。私たちのビジネスは「お客様に喜んでいただいてなんぼ」です。それなのに、入居後のアフターサービスやメンテナンスに対し、十分対応できていない状況に課題を感じていました。売りっ放しのビジネスモデルだと、お客様と生涯のお付き合いはできず、将来の顧客創造にはつながりません。

 

そこで、「家を売って終わり」ではなく、生涯にわたり「住まいの価値づくりを持続的に担うトータルパートナー」へシフトすべく、リフォームや注文住宅・不動産仲介・賃貸などの事業を拡大してきました。また、宿泊・農福連携事業の新規立ち上げや、介護企業のM&Aにより、グループドメインも広げています。

 

「住まいの価値づくりを持続的に担うトータルパートナー」を目指して、リフォームや注文住宅・不動産仲介・賃貸などの事業を拡大。新規事業立ち上げやM&Aによりグループドメインも広げている

 

ファンづくりを目指すアフタープロジェクト始動顧客の信頼が紹介率に直結

 

――社長就任後、できるだけ多くの社員に参加してもらうプロジェクトを立ち上げたのですね。

 

川島社長:具体的には、「原価削減」「アフターサービス」「新商品開発」「IT」「サービス向上」の5つを運営してきました。その結果、新商品開発PJから生まれた商品により、グッドデザイン賞を6回受賞するなど、PJの成果は目に見える形で表れています。

 

発達障がい者のための自立支援活動「農・福・住の連携で生まれた地域の小さな経済循環[いざわファーム]」での受賞(2021年)など、6度のグッドデザイン賞受賞歴を持つ

 

――アフターサービスやメンテナンスへ力を入れてこられました。なかでも「アフターPJ」は、事業成長や企業価値向上につながっていますが、いかがですか。

 

川島社長:アフターPJは、竣工後のカスタマーサービスを向上するPJであり、その役割は、単なるクレーム処理ではなく、生涯のお付き合いができる敷島住宅のファンづくりです。この発想のもと、お客様からの信頼や関係性を深め、施工改善を進めたことが、事業の成長を後押しする力になり成果に結びついています。顧客の紹介率向上を1つの目標に掲げ、その一連の取り組みを通じ、現在は着実にその比率が向上してきています。

 

――経営面への効果も大きく、修繕費などアフターサービス関連の損金が大幅に減少したと伺いましたが。

 

川島社長:アフターサービス専門のカスタマーズセンターを新設し、社員・拠点別に受けていた問い合わせや相談の窓口を一元化して、ワンストップの情報管理・対応を実現しました。

 

また、定期的なメンテナンスにより、不要な補修費やクレーム件数は大幅に減少、よってその関連費用も同時に減少しています。

 

さらに定期点検やメンテナンスブック・メンテナンスに関する動画の公開などアフターサービスを充実し、「住みやすくきれいな家を、いかに維持するか」を的確にサポートしています。施工時の技術的な課題も洗い出し改善することで、新築保証期間内の雨漏り修理がゼロになり、そもそもトラブルの起きない家づくりに変わりました。いまは業界でも珍しい最長60年の長期保証を導入しています。

 

良いことは共有し、改善すべき点は改善する。CSアンケートの結果もオープンに全社員へフィードバックする。そうした積み重ねが個人・全社の品質・サービス力の底上げにつながり、顧客コミュニケーションの向上にも大いに役に立っています。地道にコツコツと続ける活動が、確かな成果として表れています。こうした取り組みの甲斐もあり、ありがたいことに、「敷島住宅で買ってよかった」とお客様に笑顔で言っていただける機会が増えています。

 

――アフターサービスによるファンづくりの大切さは、しっかりと全社員に浸透していますか。

 

川島社長:大事なのはそれぞれの現場でどこまで実務に落とし込めるかです。

 

アフターPJは、毎年メンバーを変えて月に1回実施しています。設計や営業、現場監督、コーディネーター、アフター担当など、多様な関連部門から見た課題を検討し、それぞれの立場から意見を出し合っています。

 

特に営業は、PJで実感した自社の強みをお客様とのコミュニケーションに生かせるようになり、実績が上がることでモチベーションも高まっています。アフターPJはこれからも、「お客様の日々のお困りごとを、どう解決していくか」に挑戦していきます。

 

――お客様とのつながりを掘り下げていますね。

 

川島社長:住まいのことで何かあれば、まず当社に相談していただける、「ファーストコールカンパニー」になること、生涯のお付き合いのできる敷島ファンを増やしていくことが目標です。

 

すでに、お客様の個人情報、設計図、施工写真、補修履歴など、「住まいのカルテ」と言えるデータを一元管理し、スピーディーな対応を可能にしています。また、OB顧客の友の会を発足しており、会員数は現在6700名になります。会報誌「SHIKISAI」を年4回発行し、当社を信頼して住まいを任せていただいたお客様とのコミュニケーションツールとして活用しています。

 

 

カスタマーズセンター(左)設立のほか、定期的なメンテナンスなどアフターサービスを充実。また、会報誌「SHIKISAI」(右)などを通じた“お客さまとのコミュニケーション”を重視している

 

 

ビジョン実現力の向上に向け、人事制度を改定

 

――アフターPJとは別に、人事制度の再構築も推進されました。

 

川島社長:事業部もグループ各社も、しっかり任せられるトップ・人材が育たなければ、さらなる未来像の絵は描けません。グループの柱である敷島住宅の人事制度を再構築し、新たなキャリアステップの人事フレームに刷新して、2023年9月から導入予定です。

 

人事制度改定の主な目的は、「ビジョン実現力の向上」「適正な利益配分の実現」「多様な働き方への対応」の3つです

 

具体的には、会社のビジョンや年度方針を実現するため、目標管理における運用面を強化し、組織目標と個人目標との連携を高めます。また、個々の社員の積み上げ型処遇形態から、会社利益の配分型処遇形態にシフトし、公平な利益配分の仕組みを実現します。

 

さらに、従来の制度では十分に対応できなかった、同一職種内での働き方の違いやプロフェッショナル人材の処遇、パートナー社員の処遇明確化など、社員のキャリアビジョンやライフスタイルの多様化に対応し、働きやすい職場づくりにつなげます。

 

新しい人事制度の運用はこれからですが、ガイドブックを作成して全社員に配布し、評価者研修も実施予定です。

 

社員の成長・モチベーションの高まりが、信頼やブランディングにつながります。これからも、人・事業・企業の育つ敷島住宅にしていきたいですね。

 

多様なシナジーを発揮し、挑戦し続ける企業へ

 

――60周年から100年企業へと歩みを進める敷島住宅グループの、さらなる進化と展望をお聞かせください。

 

川島社長:60周年を機に、ロゴマークやコーポレートスローガンなどCIを一新しました。これにより、未来志向の一体感や求心力が高まったと感じています。

 

これからも、新しさだけではない「豊かな住文化」の創造を経営理念に、弛みなく挑戦、前進、成長し続けていきます。グループとしてシナジーを発揮して成果を上げていくのはこれからですが、住宅事業の各事業部間、グループ企業間でどんどん連携が進んで、シナジーが生まれたらと思っています。

 

 

2022年に設立60周年を迎えた敷島住宅。グループシナジーも発揮しながら、「豊かな住文化」の創造に挑戦し続けていくという

 

 

――川島社長は盛和塾にも早くから参加され、自分なりの理想の経営者像を描いてこられました。

 

川島社長:稲盛和夫さんから学んだことは、多すぎてひと言では表現できませんが、私なりに社員に伝えているのは「利他の精神」です。自分のためでなく、周りの人や地域、社会のために何ができるか。大阪・淀川市民マラソンのボランティア参加や、環境貢献、災害支援などのCSR活動を積極的に進めるのも、その実践です。

 

次代の敷島住宅グループも、そこを目指し、体現できる姿になれば持続可能な存在になっていけるはずですし、それ以上に嬉しいことはありません。

 

――最後に、タナベコンサルティングへの評価や期待をお聞かせください。

 

川島社長:私が社長になってすぐ、幹部を育てる「敷島経営塾」をスタートして以来、将来のありたい姿に向けていま何をすべきか、ずっと支援してもらっています。社長の私に言いにくい社員の声も拾い上げて代弁してくれるので、現場とトップをつなぐ架け橋の役割を担ってくれている、と実感しています。

 

また、次代を担う若手幹部育成のほか、後継候補に寄り添いディスカッションを重ねてくれているので、その実像を知ることができ、私の想いも的確に伝えてくれています。これからのグループ経営をどう進めていくのか、さらに踏み込んだ提案と導きをお願いしたいですね。

 

——いつの時代にもふさわしい「Shift・Sure・Sensitive」な価値創造に挑む敷島住宅様を、これからも支援し続けてまいります。本日はありがとうございました。

 

 

PROFILE

    • 会社名:敷島住宅株式会社
    • URL:https://www.shikishima-j.co.jp/
    • 所在地:大阪府守口市桜町4-17
    • 設立:1962年(1960年創業)
    • 従業員数 149名(2022年8月)

※ 掲載している内容は2023年6月当時のものです。

チームコンサルティング事例一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo