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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2023.07.18

トンボ:新体制で新中期ビジョンを描き、持続成長へ

ポイント


1 新体制で「意志を込めた」経営ビジョンを策定
2 事業承継のタイミングで「戦略経営診断」を活用
3 次世代人材を育て、サステナブルな企業へ

 

 

 

お話を伺った人


株式会社トンボ 代表取締役社長 藤原 竜也 氏

 

 

 

 

 

 

新体制で「意志を込めた」経営ビジョンを策定

 

――トンボ様の会社概要をお聞かせください。

 

藤原社長:当社はユニフォームアパレルの日本一企業として、「ここちよさを、ひとつずつ」をモットーに、独自の品質基準で信頼の「TOMBOWブランド」を構築してまいりました。現在は、学生服のスクール事業を柱に、スポーツ事業や介護・メディカル分野のヘルスケア事業を展開し、誰からも長く愛される最良のユニフォームメーカーを目指して、社会に役立つ確かな価値を創造し、提供し続けています。

 

 

 

ユニフォームの日本一企業として知られるトンボ。独自の品質基準で、信頼の「TOMBOW」ブランドを築いてきた。同社は2024年に設立100周年、2026年には創業150周年を迎える

 

 

――事業承継による新社長就任を契機に、持続的な成長に向けた次世代ビジョンと中期経営計画、その実現を可能にする新たな経営・組織体制のロードマップを策定する「戦略経営診断コンサルティング」を実施されました。

 

藤原社長:タナベコンサルティングには、半世紀近くにわたって当社の経営に並走いただき、支援の力をお借りして成長を遂げてきました。合計100名弱が参加した幹部候補生スクールなど、さまざまな研修でもお世話になっています。

 

「戦略経営診断コンサルティング」については、自社の節目となるタイミングで過去3度実施しています。4度目となる今回も、私が事業承継するタイミングで、信頼も実績もあって当社をよく知っているタナベコンサルティングにお願いしました。

 

――2022年9月の社長ご就任に先立ち、7月から3カ年中期経営計画(第6次)がスタートしていましたが、あらためて、藤原社長の意志も織り込んだビジョン・計画にブラッシュアップすることとなりました。

 

藤原社長:社長になる私自身がビジョン・計画の策定に参画し、意志を込めることが大事、とタナベコンサルティングからアドバイスを受けました。私自身は直前までグループ会社の瀧本に社長として出向しており、赤字経営を黒字化した経験などは自信にもつながっていましたが、トンボやグループ全体では、事業のスケール感も経営の難易度も違います。

 

近藤会長が土台を築いてくれていたので、ビジョン実現のための施策や、次世代の体制づくりなど、方向性を見据えた上で、あらためて自身の意志も織り込んだビジョンへブラッシュアップすることができました。

 

短期集中で「攻め」「守り」の戦略を策定

 

――2022年8月に「戦略経営診断コンサルティング」が始動しました。通常は「知る」(現状認識、事業・経営戦略の分析)→「選ぶ」(ビジョン・基本戦略の設計)→「行う」(ロードマップ・アクションプランの策定)、の3フェーズで推進しますが、今回は「知る」(2カ月)、「選ぶ」「行う」(3カ月)の2フェーズで実施しました。

 

藤原社長:2023年には新ビジョン・計画を社員に発信したいと考えていました。逆算すると年末まで5カ月間しかなかったため、2フェーズへの統合に加え、「トップミーティング」と「共同プロジェクト(PJ)チーム」による2層の推進体制としました。

 

トップミーティングでは、私と近藤会長、難波専務の3名が、タナベコンサルティングの統括リーダーと直接、対話しました。一方、共同PJには、私と当社の役員や次世代幹部の20名が参画しました。事業・サプライチェーン・財務・組織人材・経営システムの分野別に、専門コンサルタント19名と複数チームを編成して、きめ細かな検討を重ねました。

 

短期間でタイトなスケジュールでしたが、むしろいい緊張感が生まれ、Webリモートとリアルミーティングを上手に併用することで議論も深まり、とてもスムーズに進められたと実感しています。

 

――共同PJについて詳しくお聞かせください。

 

藤原社長:共同PJでは「攻め」と「守り」に重要テーマを分けて、ビジョンの方向性と達成に向けた事業・経営戦略の骨子を具体的に描きました。

 

攻めは「事業」「サプライチェーン」、守りは「組織」「財務」「経営システム」を中心に検討しました。私自身はずっと営業畑で、攻めの事業戦略は経験があったこともあり、グループ売上高500億円を実現していくイメージがしっかりと見えていたので、定量ビジョンに掲げました。

 

一方、守りでは業績を維持し、コストも上手にコントロールしながら、利益重視の経営に変えていく必要があります。特に重要なのが、事業戦略を実現する「人と組織」の新体制をどう組み立てるかです。新たな組織図や誰に何を任せるのかなどは、タナベコンサルティングと一緒に議論を重ねることで描くことができました。

 

 

次世代の幹部人材を育て、サステナブルな経営へ

 

――PJメンバーには次世代の幹部人材も含まれていますが、PJ自体がメンバーの育成機会にもつながったのではないでしょうか。

 

藤原社長:PJメンバーには、次世代の経営幹部に育つ自覚と責任を実感してもらえた、と思っています。「知る」フェーズはコンサル会社に任せるケースも多いそうですが、当社の場合、社員も参加する共同PJにすることで、当社メンバーが自社の経営実態を正確に知り、未来の方向性を決める選択肢の提案にも参画できました。

 

その後の「選ぶ」「行う」フェーズでも、社内で合意形成しながら、最終報告会のレポート作成まで一貫して経験できたことは、大きな財産になると思います。

 

次世代の経営幹部育成は当社でも課題だったので、その意味でも、今回のPJでメンバーの経営感覚や責任感が育まれた成果は大きいと思います。

 

 

社員参加型の「共同プロジェクト」は、メンバーが経営実態を知り、未来の方向性を提案する機会に。次世代を担う社員の経営感覚や責任感が育まれる好機となった

 

 

――新中計2期目の2023年7月から新組織体制へ移行されています。

 

藤原社長:新体制では、タナベの提案をヒントに全社戦略を俯瞰する経営戦略室を新設し、より動きやすい営業体制に変えるために支店も統合します。

 

また、管理職の兼任を減らし、事業担当役員の人事もローテーションではなく、それぞれの得意な分野を生かせるように動いてもらう計画です。営業や製造、バランス感覚など、一人ひとり異なる「その人の強み」を活かしながら活躍してもらえたら、と考えています。

 

将来的にはグループ企業に経営者として出向し、いわば「経営の修羅場」を乗り越える経験を通して成長してもらい、その後にトンボへ戻って幹部・部長職を任せることが、サクセッションプランにもなると考えています。それはかつて実践していたスタイルですし、私自身も外から当社の姿を見て気づいたことが多く、経営の難しさと醍醐味を実感しました。この施策が、次世代の担い手の育つ大きな力になると確信しています。

 

ユニフォーム文化を継承し、未来に持続するリーディングカンパニーへ

 

――2023年新年には、策定した次世代ビジョンと成長ロードマップを社内に向けて発信されました。

 

藤原社長:少子化で学生人口が減少し市場が縮小するなかで、トンボグループがどう生き残っていくのか。事業構造・スタイルの転換を図りながら目指す姿と成長ロードマップを描くことができました。事業戦略は、ポートフォリオやバリューチェーンの再構築と、販社・支店を含めた組織デザインの再設計を進めていきます。

 

また経営戦略は、TOMBOWブランドが培ってきた価値観を土台に、人的資本を中心に企業価値を高める非財務資本を強化します。

 

3カ年中期経営計画は、2028年6月期までの2期・6年間のロードマップで、定量ビジョンとしてグループ売上高500億円の達成を目指します。さらに、2年ごとに経営コンセプトを明確化しました。人と組織づくりに注力する「次世代人材育成基盤の確立」、子会社のマネジメント体制やHD化を含めた「グループ経営体制の確立」、そして最後の2年間は「サステナブル経営」です。

 

こうした数値やコンセプトは、自社の生き残りを賭けるマイルストーンであるとともに、学生服という伝統カルチャーを未来へと守り抜き、伝え残す決意も込めています。LGBTQ(性的少数者)に配慮する制服スタイルへの変化など価値観が多様化する時代に、ユニフォーム業界をより良い方向へリードしていくには、さらに事業規模を成長させてTOMBOWブランドの認知度を向上し、世の中を動かす発言権を高めていく必要があります。

 

 

LGBTQ(性的少数者)に配慮する制服スタイルなど価値観の多様化に対応しながら、TOMBOWブランドの認知度向上とさらなる成長を図っている

 

 

――タナベコンサルティングへの評価や期待をお聞かせください。

 

藤原社長:これまで同様に、全社や業界を俯瞰しつつ正確できめ細やかなリサーチと分析で、ビジョン・計画の多様な選択肢を提案してくれました。また、経営の処方箋を提示するだけで終わらずに、実行の支援策も明確なので、私の頭の中もすっきりと整理できました。

 

あくまでも主役はトンボであり、「必要な時にコンサルティングを活用する」「提案をヒントに、自分たちでやれることはやる」という当社の姿勢を尊重してもらっています。

 

長年の実績があって、当社にとっての本質を外さない、という信頼感は揺るがないものです。診断報告書は折に触れて見返し、大事なところには付箋もつけて、参考書代わりになっています。これからも的確な支援をお願いしたいですね。

 

――2024年に設立100周年、2026年には創業150周年を迎えます。

 

藤原社長:さらなる成長への大事な節目になりますし、新ビジョンは次世代経営体制への継承も見据えています。「事業承継は、次の次まで考えるのが社長の仕事」とタナベコンサルティングからアドバイスをもらっていますが、それはブランディングや若い世代の育成によって、次代も持続可能な経営にすることだと理解しています。

 

――日本一企業に満足せず、さらに持続可能性と社会への貢献を高めていくトンボ様を、力強く支援し続けてまいります。本日はありがとうございました。

 

※掲載している内容は2023年7月当時のものです。

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社トンボ
    • URL:https://www.tombow.gr.jp/
    • 所在地:岡山県岡山市北区厚生町2-2-9
    • 創業:1924年(1876年創業)
    • 従業員数:1,855名(グループ全体)
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