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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.12.08

山崎木材:未来を見据えた理念・中期ビジョンを策定し、改革を推進

ポイント


1 広島県の助成金事業を機にコンサルティング活用
2 社員が誇りを持てる経営理念、中期経営計画、中期ビジョンを策定・実行
3 社員の成長や意識向上、現場効率化などの成果を実感

 

 

お話を伺った人


株式会社山崎木材 代表取締役 ⼭﨑 伸介氏

 

 

 

 

「『当たり前』がちゃんとできる会社に」
理想を目指し、新たな挑戦へ

 

——伐採から運搬、加工販売、物流まで一気通貫で手がける「総合的林業経営」事業を展開される山崎木材様。御社は製紙やバイオマス発電に欠かせない木質チップの生産量日本一を誇る企業です。

 

山﨑社長:父から経営のバトンを受け継ぎました。それから10数年、ずっと抱いてきた想いがあります。それは「当たり前の会社、経営にしたい」ということです。

 

一次産業の林業経営は現場仕事が中心。社員は40名程度であり、先代の頃は典型的なトップダウン経営でした。経営理念やビジョンを掲げなくても目の前のことは何とかなってきたのですが、「家業」の延長線上の域を出ないのが悩みでした。もっと未来につながる「企業」にしていきたい、と思っていました。

 


木質チップの生産量日本一を誇る山崎木材。「『当たり前』ができる会社」「未来につながる経営」を目指して、広島県リーディングモデル養成事業に応募し選定された

 

広島県のリーディングモデル養成事業に選定

 

——地元・広島県(農林水産局林業課)が公募するリーディングモデル養成事業に手を挙げ、選定されました。2019年4月に施行した新たな森林経営管理制度の担い手となる、全国的なモデル企業を育てるのが狙いです。

 

山﨑社長:林業は植林から伐採まで早くても30~50年はかかりますし、水資源を守る森林保全の重責も担います。伐採だけでなく再造林や保育、間伐まで循環型の林業モデルを推進する林業経営者として、森林面積当たりの利益を最大化する経営センスを身につけ、持続的かつ発展的に森林・林業の経営ができる意欲も能力もある企業、として、広島県のリーディングモデル企業に選ばれました。

 

まさに、私が求めていた「企業としての経営」を体系的に学べるチャンスでした。外部の専門家としてサポートしてくださったのがタナベコンサルティングでした。

 

——補助金を活用し、ビジョン策定や経営戦略の構築、組織・環境・業務改善、人材の育成・定着など、森林・林業経営にビジョンを持つ自立企業を育てるコンサルティングが始まりました。

 

山﨑社長:コンサルティングを受けるのは初めての経験で正直、最初は少し身構えていました(笑)。でも、タナベコンサルティングの方から「経営の原理原則から始めて、一つずつ腹落ちできるように進めていきましょう」と言ってもらい、自然体になれました。経営理念を明確にし、それに基づく中期のビジョンをつくり、経営計画に落とし込んでいく。そんな「当たり前の経営」にしたい私の想いを実現していけばいいんだ、と心強かったですね。

 

 

 

社員が誇りを持てる経営理念、中期ビジョンを策定・実行

 

——2020年5月から翌2021年3月まで、約1年間のモデル事業による支援として、経営理念づくりから始動しました。

 

山﨑社長:経営理念についてはそれまでにも社内で検討を進めていましたが、タナベコンサルティングとともに再編集しました。中国山地の中心圏に位置する「地の利」、地域社会との共存・共栄を目指す「総合的林業経営事業体」、smart(機敏、賢く、活発)でactive(自発的行動、積極的)な「未来志向の経営」、などのキーワードを盛り込み、日本一企業としての誇りを実感できるものにしました。

 

また、組織文化として「コンプライアンス、モラール・マナー、チャレンジ、One山崎木材」などを定義し、特にコンプライアンスとモラール・マナーの2つを重視しました。

 

——経営理念・組織文化とともに、さらに自社のありたい姿や存在価値を示す5カ年の中期ビジョンと3つの基本方針、数値目標となるKPIで構成する「理念・ビジョンピラミッド」を描きました。

 

山﨑社長:経営幹部や総務部門の若手社員と毎月、議論を重ねました。中期ビジョンとして「山崎木材オリジナルの『総合的林業経営事業』の確立と地域活性化への取組み」を掲げ、「成長・幸福・貢献」を3つの基本方針に、事業・経営・SDGsの戦略を定めました。

 

具体的には、さらなる成長に向け森林を生かす事業展開、社員の成長・活躍に向けた経営基盤の強化、SDGsの取り組みによって持続的に成長しながら、過疎化や環境・教育課題など地域の社会課題の解決に貢献する、という3つです。

 

——最終的な成果物として、2025年度までの中期ビジョン・経営計画に加え、初年度の2021年度経営方針書や部門方針書を策定し、社員説明会を実施しました。

 

山﨑社長:すべてが初めてのことですし、山林の現場では頼もしい社員たちも、「理念、ビジョンって、だから何なの?」といった感じで、理解するまでには時間もかかるだろうと考えていました。それでも、タナベコンサルティングが丁寧にわかりやすく説明してくれましたし、KPIを設定することで実現に向けた今後の課題も明確にできました。山崎木材をどういう会社にしたいのか、事業・経営・SDGsの各戦略で具体的に何をすべきか。ひと言で言えば、私の想いを未来志向の挑戦テーマとして明文化できました。

 

 

中期ビジョン実現に向けて風土改革やDXに着手

 

——社長の想いと未来への方向性を形にするステップを経て、2年目からは「定着、具現化」へと歩みを進めました。

 

山﨑社長:補助金対象のモデル事業は単年度で終了しましたが、引き続きタナベコンサルティングにコンサルティング支援をお願いし、2021年4月から中期経営計画の実現に向けた3つの活動がキックオフしました。1つ目の「トップミーティング」では毎月、私とコンサルタントがマンツーマンで、中計のPDCAをチェックしています。2つ目は社員参加型の「山崎まなぶ会」、3つ目は私と経営幹部による「DX推進会議」の開催です。

 

「山崎まなぶ会」は、ビジョンや方針を「掲げて終わり」にしないために、社員が学びながら経営に参画していく社内勉強会です。毎月開催し、中堅社員を中心に10名前後が6月~12月までテーマ別に学んで、1月~3月には2022年度の経営方針を作成しました。

 

——山﨑社長も毎回、オブザーバーとして参加されて、社員のみなさんの変化を実感されたそうですね。

 

山﨑社長:メンバーは最初のうちはとりあえず参加する、といった感じでしたが、回を重ねるごとに、自発的な発言が増え、メンバーの成長を実感するようになりました。従来は安全衛生や、チェーンソーの使い方など技能面の研修が中心で、経営や理念について体系的に学ぶ機会はありませんでした。社員が抵抗なく参加できるよう、私が考えたキーワードをもとに、初歩的なことから学べるカリキュラムの内容や構成を組み立ててくれました。まなぶ会の成果もあり、全社的に理念の重要性が浸透・定着してモラール・マナーが守られ、あいさつの徹底や5sの向上を、日増しに実感するようになりました。

 

——「DX推進会議」で検討したDXにより、現場の作業効率が向上しています。

 

山﨑社長:地域の過疎化や高齢化が進む中、当社も人材確保や生産性向上の課題に直面しています。DXツールを導入して現場の在庫集計や事務業務の効率化など、業務フロー全体の変革を進めていこう、と考えました。

 

1年間の検討を経て、2022年度からタブレット端末を使った「原木集計システム」で現場在庫の手書き集計作業をなくし、総務経理も「原木販売管理システム」で台帳転記業務の効率化と質の向上を進めています。さらにこれからは、経営判断につなげるデータの蓄積もスムーズかつシンプルになっていきます。まだ仮運転の段階ですが、業務の効率化など、着実に成果が生まれ始めています。

 

DXツールを導入し、業務全体を変革。原木集計、原木販売管理などをシステム化し、業務の効率化につながっている

 

 

社員が変わり、会社が変わる。

「理想の会社」へ向かい、着実に前進

 

——3年目を迎えた2022年度は、四半期方針や役員による半期ごとのビジョン検討など「拡充」のステップに入り、SDGs宣言も果たしました。

 

山﨑社長:3つの活動を引き続き実施しながら、「理想の姿」へ一歩ずつ着実に近づいています。

 

特に「山崎まなぶ会」は社員の意識が変わり、PDCAを着実に回せるようになった大きなターニングポイントでしたし、「DX」の実績として2022年5月には自社HPを完成させました。HPでは、いきいきとした社員の姿を「林業男子」として紹介し、働き甲斐のあるリアルな職場の様子を紹介しています。社員参加型のページにすることで、「日本一企業」の自覚や誇りも確かなものになっているように感じます。

 

2022年には自社ホームページが完成。豊富な写真と臨場感あふれる職場風景などを載せ、自社の魅力や特長を伝えている

 

 

モデル事業の成果を県主催セミナーなどで発表することで、私自身もレベルアップでき、当社のブランディングにもつながっています。

 

事業面でも中期経営計画で目標に掲げた年商23億円を、すでに達成しました。ただ、その中身はウッドショックによる相場の高騰が大きな要因ですから、引き続き取引高や生産量の達成を目指します。また、伐採の前工程となる苗木の育成や植林、物流の後工程になる工業燃料の用途開発・拡大、地域連携による耕作放棄地の活用など、新規事業やM&Aによって「総合的林業経営」の枠組みを広げていければと考えています。

 

——タナベコンサルティングによるコンサルティングのご感想や今後の期待をお聞かせください。

 

山﨑社長:ゼロベースから始まりましたが、「当たり前のことがちゃんとできる会社」という理想に向け、最初の一歩から一緒に考えてくれ、その後の定着、充実のステップも丁寧に進めてくれて、信頼しています。当社のペースを大事にしつつ、自発的な行動につながるアプローチをしてくれたおかげで、仕事も組織風土も属人型から全員参加型へと変わりました。

 

「木を見て、森を見ず」と言いますが、広く高い視野に立って「木を見て、森も見る」姿へと、会社も社員も期待以上の成長を遂げています。私が将来的に社長を退任しても、しっかりと持続できる経営体制づくりへ、これからもぜひ、力を貸してもらいたいです。

 

——理念とビジョンの実現へ向け、今後も支援を続けてまいります。本日はありがとうございました。

 

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社山崎木材
    • URL:https://yamasaki0077.jp/
    • 所在地:広島県庄原市東城町小奴可214-2
    • 設立:1960年
    • 従業員数:約40名

※ 掲載している内容は2022年12月当時のものです。

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