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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.09.30

ハヤブサ:人と事業が成長する「感動提供カンパニー」を目指して

 

ポイント


1 困難を乗り越えて12年連続黒字経営
2 人を大切にする経営を志し、人事制度を策定
3 2030年に事業承継の完了を目指す

 

 

お話を伺った人


株式会社ハヤブサ 代表取締役社長 歯朶 由美氏

 

 

 

 

先代社長が急逝し、経営者に

 

——釣りの魅力を発信するフィッシング事業「ハヤブサ」ブランドにとどまらず、アパレル事業やスポーツ・レジャー分野へ拡大し、新たにペット事業も展開するなど、全ての人のライフスタイルに貢献するハヤブサ。1995年に先代(2代目社長・歯朶崇氏)が社長に就任された時から、タナベコンサルティングは四半世紀近い歳月を通して、経営を支援してきました。

 

歯朶社長:夫である先代がタナベコンサルティングにコンサルティングをお願いし、最初に実施したのが経営理念の策定と、方針発表会の開催です。どちらも、「さらなる事業成長には欠かせないもの」とアドバイスをいただきました。

 

理念は本当に良くできていて、現在も変えることなくしっかりと継承しています。さらに、私の代になってからコーポレートブランドアイデンティティーである「わたしたちの日常に、リアルな感動を。」を新たに策定しました。私が最もやりたいのが「お客さまに感動を与える」こと。今は「感動提供カンパニー」として歩みを進めています。

 

——社長に就任されたのは、先代の急逝が理由ですね。

 

歯朶社長:実父(田尻隼人氏)が創業し、夫が2代目を継いで、私は経理部長として財務全般を任されていました。多忙な夫の留守を縁の下の力持ちとして預かる役割です。

 

いち早くホールディング経営に着手し、海外生産も軌道に乗せた夫が2008年にベトナムで倒れ、そのまま息を引き取りました。人生の伴侶と会社の社長、公私ともに頼れる存在を急に失って、1年間は立ち直れませんでした。しかし、相談役だった父が会社の将来を案じて、私に「社長になりなさい」と。父の言葉がなければ、社長になることはなかったでしょうね。私自身も、また周囲の誰もが夢にも思っていませんでしたから。

 

——就任直後、いきなり試練が訪れました。リーマンショックです。

 

歯朶社長:利回りが良くて購入していた債権がダメになったことや急激な円高になりドル建てだった為替契約も大きなリスクを払うなど、大変な目に遭いました。そこで、あらためてタナベコンサルティングに支援をお願いし、「5カ年の中期経営計画を立てましょう」という提案を受けました。

 

当時は借入金も多かったため中期経営計画でこれからの会社の進め方を取引銀行へ説明に行く必要がありました。その際にはタナベコンサルティングの担当コンサルタントにも同行いただき、不慣れな私に代わって説明をしてもらいました。そのおかげで銀行に納得していただき、「頑張って!」と融資の継続が決まりました。本当に、ありがたかったです。

 

 

 

1959年創業の釣り具メーカーハヤブサ。現在では釣り具以外にもペット用品、アウトドアアパレルなども手掛けている

 

 

危機を脱した2つの経営判断

 

——中期経営計画を前倒しで達成していく中で、突然、経営の危機に立たされます。東日本大震災の影響ですね。

 

歯朶社長:はい。ちょうどそのころ、すでに中期経営計画にのっとって新事業のルアー(疑似餌)部門を立ち上げ、工場もベトナムに建設していました。しかし、甚(じん)大な津波被害を目の当たりにして、全国的に「海には近寄るな」「釣りは危険だからするな」という風評が生まれました。それが業界全体に影を落とし、当社も売り上げが激減。大きなダメージを受けました。

 

しかし、次第に釣り針や仕掛けの需要が戻り、徐々にルアー部門が売り上げを支えるようになったのです。事業を立ち上げた当初は「釣り針や仕掛けのメーカーがルアーをやっても売れないよ」と業界で言われましたし、実際に数年は売れませんでした。でも、いまでは、売り上げの3分の1を占めるまでに成長しています。「あの時、始めていなかったら……」と考えると、恐ろしいですね。

 

——東日本大震災が起こったころ、もう1つ、大きな経営判断を下しました。ベトナムの生産拠点(HAYABUSA VIETNAM)を閉鎖しないことです。

 

歯朶社長:ルアー工場を新たに立ち上げる途上で、釣り針や仕掛けを作っていた既存工場をどうするのかが問題でした。釣り針や仕掛けの需要が落ち込んで売れないから、作るものがなかったのです。

 

その時に考え出したのが、競合メーカーの製品を作ることでした。つまりOEM生産です。ベトナムの生産拠点を維持するには仕事が必要なので、当初は自社で作っていない雑品を中心に提案し、半年後に受注が決まりました。その後は複数のメーカーから受注が増え、コロナ禍で釣りが盛んになった最近は、逆にオファーをいただくようにもなっています。

 

OEMを始めようと言った場面で、「ライバルの製品を作るのは理解できない」と営業部に反対されて説得が大変でした(笑)。しかし、自社製品だけでなく、他メーカーの製品も作らせてもらうことで業界に貢献でき、当社も潤うことができています。また釣り具業界全体で、国内の作り手が減る中、確かな受け皿にもなっています。

 

 

人を大事にし、成長を促す

 

——「人を大事に」する経営を、創業者の時代から続けてこられました。

 

歯朶社長:父はずっと「職人を大事にしないといけない」と言い続けていました。「製品を作れなければ、経営していけないのだから」と。それがベトナムの生産拠点を閉鎖しなかった理由の1つです。「人を大事にする」という父のモットーを受け継ぎ、今も現地で職人を育て続けていますし、日本にいる社員に対しても同じ考え方で接しています。

 

ただ、私が社長になってしばらくは経営の不安定な時期が続き、新規採用を見送りました。その結果として、現在、幹部人材が不足しているので、人材育成に力を入れています。

 

教育はタナベコンサルティングにお世話になっています。新入社員から若手・中堅、次世代幹部候補、経営層まで、それぞれの階層にふさわしい研修を定期的に繰り返し、より多くの社員に教育を受ける機会を設けるようにしています。そうすることが、今後の会社にとってプラスになると考えているからです。学んだことを業務に生かし、壁を乗り越えて成長していってほしいですね。

 

——社員のがんばりを適正に評価し分配する人事評価制度を新たに構築されました。

 

歯朶社長:目標を決め、やり遂げた人が報われるようにタナベコンサルティングの支援を得て新制度をつくり上げたものの、現状はまだうまく機能していません。課題は考課者が適切な考課を行っていないところにあります。部下の勤務態度を1年間トータルで見るべきですが、考課時期直前だけを見て印象に残る事柄を評価したり、考課対象期間以前の失敗を掘り返したりしています。

 

そこで、重点施策として2022年度から考課者の勉強会を開始しました。考課者が、評価される非考課者の目標と結果をしっかりと理解し、制度で決められた点数通りに評価できるように、指導を受けています。さらには、非考課者にどうフィードバックするかも毎月10名前後の少人数研修で学んでもらっています。

 

——成果や結果だけでなく、個人の成長プロセスを重視していくお考えですね。

 

歯朶社長:結果は大事ですが、過程も大事にしたいのです。1年で結果が出ない業務もあるので、それなら「3年計画で考えて、今期はどのように行動するか」といったように目標を立てるところから、評価につなげられるようにしたいと思っています。そのため、被考課者の正社員全員が立てた個人目標、達成・成長プロセスなども、今はタナベコンサルティングにチェックをしてもらっています。

 

 

 

 

働く人を大切にする経営で、成長拡大を続けている

 

 

最終的には自分がどうしたいかで決断する

 

——今後は事業承継も、経営課題の1つとして取り組みを進めていくところですね。

 

歯朶社長:2030年までにホールディング経営の基盤を確立し、多角化経営を目指します。

 

私には3人の息子がいるので次世代の承継は問題なく進められますが、その後のことを考えると、いつまでも身内で承継していくことは困難であると思っています。

 

経営は、それぞれの事業のプロが社長になり、進めていく形が最も良いとの考えから、多角化経営を推進することにしました。これについてもタナベコンサルティングと一緒にスケジュールを組み、2030年に承継が完了する計画です。

 

——長期にわたってパートナーに選定いただいているポイントは、どこにありますか。

 

歯朶社長:ご支援いただく中で「当社のことをよく理解いただいている」と感じるからです。どんなプロジェクトも、幹部や社員を巻き込んで進めてもらえるからでしょう。

 

担当コンサルタントの方が交代される時も、しっかりと引き継ぎされていて違和感は全くありません。関わられているコンサルタントの方全員に情報を共有されているところが素晴らしいと思います。

 

ただ、信頼はしていても、いつも考えが同じというわけではありません。違いはあって当たり前ですし、大事なのはそこから先です。何が正しいか分からない中で、最終的に社長である私がどうしたいのかを大切にして決断しています。

 

さまざまな他社事例の紹介や、私たちが進もうとする方向について的確なアドバイスをいただけるからこそ、タナベコンサルティングとは確かな信頼関係を築くことができていると思います。

 

——タナベコンサルティングはこれからも「感動提供カンパニー」の実現と承継をサポートしてまいります。本日はありがとうございました。

 

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社ハヤブサ
    • URL:https://www.hayabusa.co.jp/
    • 所在地:兵庫県三木市吉川町大畑341‒23
    • 設立:1970年
    • 従業員数:約160名

※ 掲載している内容は2022年9月当時のものです。

 

 

 

 

 

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