ポイント
お話を伺った人
AZ-COM 丸和ホールディングス株式会社 株式会社丸和運輸機関
代表取締役社長 和佐見 勝 氏
「桃太郎文化」を継承し、次代の経営者人財を育成
——サードパーティ・ロジスティクス(3PL)の先駆者として、EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流をコアドメインに、輸配送便「桃太郎便」で高い知名度を誇り、日本の物流を支える丸和運輸機関様。
和佐見社長がトラック1台で創業されてから50年が過ぎ、グループ計14社(2022年8月時点)、全国に172拠点の物流ネットワークを展開し、年商1000億円超、東証プライム市場の上場企業へと成長を遂げてこられました。
和佐見社長:年商が10億円程度だったころからタナベコンサルティングにご支援をいただいています。亡くなられたタナベコンサルティング創業者の田辺昇一氏は、私にとって経営の師の一人です。
——タナベコンサルティングの研修会ではゲスト講師として、独自の「桃太郎文化」を基盤に位置付ける経営の要諦を、全国の経営者の方々に指南いただきました。
和佐見社長:桃太郎と鬼退治をした犬は考働力、猿は知識力、雉子(きじ)は情報力を発揮しましたが、それは経営の先見3要素の象徴です。また、犬は地上戦略、猿はケーブル戦略、雉子は空を飛ぶ衛星戦略として、ロジスティクス分野に求められる視点も意味しています。
その3つの力を束ねる桃太郎は当社の価値観や考働規範の総称であり、独自の企業文化です。実践と継承を通して人を育てることが持続的な企業成長には必要で、「100人の桃太郎をつくる」ことを人財育成の目標に掲げてきました。
——近年はM&Aの推進もあってグループ規模が拡大しています。創業者として次世代を見据え、世の中に通用するグループ企業の社長を育てたい、という思いを強くされていました。
和佐見社長:これまでもタナベコンサルティングの支援も受けながら、階層別研修やスキルアップ研修、「丸和ロジスティクス大学」の開校など、人財育成に関する仕組みづくりに力を入れてきましたが、1つ足りないことがありました。それは、経営トップを育てることです。役員研修やMBA派遣も実施しましたが、トップと役員ではやはり違います。
私自身も将来、経営を託すことになりますが、今のところ同族企業にするつもりはありません。後継者をしっかりと育て、事業承継を成功させる意味でも、社員の中からグループの次代を担っていく人財教育が必要でした。
——企業存続を図るには、後継者不在は最大のリスクです。創業者であり、カリスマ経営者でもある和佐見社長の代わりをすぐに務めるのは難しいからこそ、優れた経営者人財を育成するサクセッションプラン(後継経営者育成計画)をご提案しました。
和佐見社長:ちょうど私の考えとマッチしており、これは良いなと思いました。プロパー社員を中心にM&Aした企業役員も含めて、リーダーシップを磨き、社長としての器をつくるために、当社独自の要素を加えた「社長育成プログラム」のスタートを決めました。
リーダーシップを磨き、社長としての器をつくるために、同社独自の要素を加えた「社長育成プログラム」をスタート
「知解」のインプットから「体解」のアウトプットへとつなげる社長育成プログラム
——社長育成プログラムは2021年5月から11月までの7カ月間、丸和運輸機関やグループ子会社の経営幹部12人が参加して、全9回のカリキュラムで実施しました。
和佐見社長:第1回のテーマ「丸和運輸機関グループの経営者リーダーシップ」には、私も講師として登壇しました。「桃太郎文化の本質や社長業とは何か」を、未来の経営トップに直接伝えるとともに、「次代へと伝える力を磨き高めてほしい」とお願いしました。
——第1~6回は座学のインプットフェーズで、物流業界の他社ケーススタディをディスカッションしながら学び、課題として自社の分析・戦略設計に取り組みました。続く第7~9回では実践のアウトプットフェーズとして、各事業会社の中期事業戦略・経営計画の策定、人と組織を動かすKPI(重要業績評価指標)マネジメントを設計し、戦略構築の最終課題を一人ずつ発表しました。
和佐見社長:カリキュラムには、私がこだわる社長業の3つのテーマを盛り込みました。1つ目は、桃太郎文化を伝えつつ、新たな使命感をつくり上げる経営人財になること。2つ目は、事業価値の創造や顧客開発・管理の先頭に立つ経営者リーダーシップを一丁目一番地とすること。3つ目は、人財が最大の価値である当社において、自らの器を磨くことでその価値を最大限に発揮すること、この3つです。
具体的な目標としては、社長としての特性・資質・能力の研磨や、真の社長に必要な5つの能力(マネジメント力、決断力、先見力、戦略構築力、組織・人財デザイン力)の習得を掲げました。
——前半のケーススタディも後半の戦略構築も、ロジカルに考え、組み立て、どのような意思決定をしていくのかを重視する内容です。
和佐見社長:当社は、勉強を重ねて教養を積み、知識を身に付ける「知解」とともに、学んだことを繰り返し実践し、体にすり込んで覚える「体解」を重視しています。まさに、その通りのカリキュラムになりました。また、社長に求められる5つの能力では、特に「決断力、先見力、戦略構築力」にフォーカスしました。
一言で言えば、「リーダーシップを磨いて社長としての器をつくりましょう」ということ。人の力を最大限に発揮していくのが真のリーダーです。優秀かどうかだけでなく、そうなるであろう人に期待して受講メンバーも選びました。
分野別コンサルタントの指導で納得を重ねながら成長
——受講した12人全員がプログラムを修了し、幹部適性の判定とともに、課題の提出内容や最終成果物の発表内容、5つの能力などを点数化し、最終評価点を報告しました。
和佐見社長:一人一人のトップ候補としての姿が、明確に見えるようになりました。タナベコンサルティングによる所見も、簡潔かつ的確でした。
最終成果物の事業計画は2025年度までの3カ年計画とともに、2030年に年商5000億円を見据える中で、自社の強みや課題を理解しながら実現を可能にする長期ビジョンもつくってもらいました。2022年5月に発表した「グループ中期経営計画2025」にも一部、その内容を盛り込んでいます。
2030年に年商5000億円、2040年には年商1兆円を見据える
——プログラムに対する評価をお聞かせください。
和佐見社長:当社の教育本部長とタナベコンサルティングが協力して、厳しく手間も時間もかけて丁寧に進めていただいたと感じています。ケーススタディに基づく課題は、何度もやり直すことで、トップ人財としての完成度を高めていきました。もちろん個人差はありますが、それぞれに経営戦略を構築する力が身に付いたはずです。
また講師陣も、タナベコンサルティングのストラテジー部門やHR部門、物流部門など、各分野のトップコンサルタントが勢揃いして、最大限のサポートを得ることができました。何がダメなのか、理由を明確かつ細やかにアドバイスしてもらうことで、受講メンバーも「なるほど!」と納得を積み重ねることができ、成長につながりました。
桃太郎人財の輩出に向け、プログラムを定期的に開催
——2022年秋からはプログラムのフォローアップもスタートします。
和佐見社長:私の思いを込めたプログラムで育ってくれた人財に、将来のグループ経営を任せるためにも、「まずは第1期の修了者をしっかりとフォローしてほしい」と、タナベコンサルティングにはお願いしています。
定期的に第2期、第3期と実施して、経営者人財の桃太郎を継続的に輩出することが、当社グループの未来を切り拓くことにつながります。自立的で持続的な成長を可能にする、100人の桃太郎づくりを、これからも続けていきます。
——2022年10月には純粋持株会社制に移行し、AZ-COM丸和ホールディングスが発足します。グループ経営戦略の推進と強化に向けた、今後の展望を教えてください。
和佐見社長:M&Aや業務提携による業界再編など、物流業界もこれまでにない変革の波が押し寄せています。中長期的な視点でグループ戦略を立案しつつ、各事業会社の責任と権限を明確にし、意思決定のスピード化と機動的な業務を遂行するグループ経営体制に進化していかなければなりません。
外部環境の変化に対応できるロジスティクスのプロ集団として、ホールディング体制という新しい経営手法においても「桃太郎文化」をしっかりと継承し、成長発展の原動力であり続けていきます。私もまだ数年は社長としてがんばりたいですし、その間に信頼できる桃太郎が次々と誕生してくれるのが楽しみです。
——タナベコンサルティングは、次々と桃太郎が生まれ、大切な人財が最大限の力を発揮できる経営に向け今後も支援を続けてまいります。本日はありがとうございました。
PROFILE
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- 会社名:株式会社丸和運輸機関
- URL:https://www.momotaro.co.jp/
- 所在地:埼玉県吉川市旭7-1
- 創業:1970年
- 従業員数:1万5480名(グループ計、2022年3月末現在)
- 代表者:代表取締役社長 和佐見 勝
※ 掲載している内容は2022年9月当時のものです。
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経営機能別の専門コンサルタントが、変化するリアル経営の舵取りを想定したサポートを行いながら、グループ経営者の社長として必要な5つのテーマと8つのコンテンツをバランスよく学ぶことで、「社長になってからの100日プラン」を描き切るための支援をいたします。
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