ポイント
お話を伺った人
井上株式会社 代表取締役 井上 大輔氏
持続的成長に向けてホールディング体制へ移行
——会社概要とご創業の経緯についてお聞かせください。
井上社長:井上株式会社は、1947年に京都府福知山市で電気工事材料の卸売業を創業したのが始まりです。営業エリアを北近畿一円に広げる一方、地域密着で製造のIoTや事業所のシステム化などをサポートするソリューション事業へ進出。設計から施行、メンテナンスまでをトータルでサポートする電気設備の総合ソリューション企業として、地域に根ざした経営を続けてきました。
既存事業に加え、地域の課題を解決できる事業を増やしながら持続的成長を目指す考えで、2020年からホールディングス化に着手してきました。それよりも前の2019年にはアグリチーム「FIELDS THE BASE」を立ち上げ、農業や飲食業といった新たな挑戦を始めています。
——FIELDS THE BASEはこれまでの事業とは色合いが異なりますね。
井上社長:地域に密着し、貢献するという根底はつながっています。農業は畑違いですが、数年前に多くの子どもが学び、コミュニティの中心だった中六人部(なかむとべ)小学校が廃校になると聞いて、私たちが手を挙げました。行政や地域の方との話し合いを重ね、現在は同小学校をリノベーションした「THE 610 BASE(ムトベース)」を拠点に、イチゴ栽培や学校カフェなどを運営しています。だれでも気軽に集い、みんなで楽しめる。THE 610 BASEを、そんな基地にしたいと思っています。
既存事業に加え、地域の課題を解決する事業で持続成長を目指す(写真は小学校をリノベーションした「THE 610 BASE(ムトベース)」)
——2021年には株式会社WELLZ UNITEDを設立し、ホールディング(HD)体制に移行されました。WELLZにはどのような意味が込められているのでしょうか。
井上社長:WELLZは井上の「井」、つまり井戸の「井」や泉の「wells」に由来しています。良質なエネルギーが沸き上がる場所、人が集う場所、そこから始まる物語の出発点となるような場所にしようとの思いと、井上の頭文字である「I」(私)を「WE」(私たち)に変換することで、良い影響の輪を広げていきたい。そんな思いを込めてWELLZ UNITEDと命名しました。
——HD体制に移行された理由をお聞かせください。
井上社長:私が社長に就任してすぐ、2013年に「誰もがちゃんと幸せな会社を創ろう」と第二創業を宣言しましたが、その当時から地域が抱える課題を解決できる企業になりたいと考えていました。
現在進行中のVISION 2030でも、すべてのステークホルダーの笑顔をつくる「Smile Up Spiral(スマイル アップ スパイラル)」というビジョンを掲げています。それを実現するには本業である電気設備ソリューション事業に加え、地域の方々と一緒にさまざまな業種に挑戦していく体制が必要です。そこで、タナベ経営にサポートいただきながら、約1年かけてHD経営に移行しました。
2030年に向けた長期ビジョンのスローガン「Smile Up Spiral」
グループ経営にふさわしい経営支援の在り方を模索
——制度設計において重点を置かれた点はありますか。
井上社長:チーム経営を目指す上でのチームの自立、経営サポートチームの役割強化に重点を置きました。特に経営サポートチームはこれまで、間接業務を請け負うことでラインメンバーの負担を減らす業務支援が中心でしたが、それは経営支援ではありません。HD体制に移行するに当たり、「事業会社への支援をどう強化するか」について時間を掛けて話し合いました。Smile Up Spiralの推進力を上げる経営サポートはどうあるべきか。そこは、特にこだわりました。
——経営サポートチームの改革をどのように進めていったのでしょうか。
井上社長:事業会社の経営を、HD会社としていかに支えていくかがポイントになります。具体的には、「IT戦略の検討と具体化」「自立したチーム運営を支える仕組みづくり」「メンバーを尊重し、誰もが働きやすく力を発揮できる環境や制度づくり」「デザイン経営の推進」という4項目を重点テーマに位置づけ、それぞれ改善すべき業務や整えるべき体制を洗い出した上で優先順位を決めました。
優先度の高い項目から経営会議に諮りながら経営サポートチームを中心に着手しており、組織経営に向けた機能が強化されてきたと感じています。
——HD化を推進するポイントがあればお聞かせください。
井上社長:グループ経営を推進するしっかりとしたプラットフォームをつくることが重要と考え、タナベ経営の「グループ経営システムチェック項目」を参考にしながら、約半年かけて理念体系や組織体制、収益構造、財務構造といったHD化のスキームを策定していきました。
また、関係者と緊密に連携して進めることがポイントになると思います。例えば、HD化には司法書士や会計士の協力が不可欠ですが、タナベ経営と連携してタッグを組んで進めました。それによって、WELLZ UNITEDのHD体制の形が整いました。
すべてのステークホルダーを笑顔にする“ローカルメジャー”を目指す
——HD体制に移行された感想をお聞かせください。
井上社長:HD体制へ移行したことによって、多彩な事業にチャレンジする環境が整いましたし、一連のステップを通して社員の成長も感じています。例えば、経営サポートチームは、業務サポートから一皮むけて「事業会社の経営をサポートしていく」自覚が生まれました。メンバーの目線が上がり、組織体制が整ったことで、ここからもっと進化していけるという手応えを感じています。
「多彩な事業にチャレンジする環境が整い、メンバーの成長も実感している」と語る井上社長
——HD化のパートナーとしてタナベ経営を選ばれた理由をお聞かせください。
井上社長:タナベ経営との付き合いは20年近くになります。その間、経営再建、マネジメント体制づくりをはじめ、入社後の教育研修システム「Weアカデミー」の導入やソリューションブランド構築の支援をお願いするなど、継続的にサポートしていただきました。言わば当社のことを一番よく知ってくれている存在。グループの方向性や私の思いをよく理解してくれているので安心してお任せしました。
——タナベ経営に今後期待されていることはありますか。
井上社長:尖った提案というか、私が見えていないテーマや気づいていない課題に対する専門的な視点を期待しています。実は、社員教育はどうあるべきか悩んでいた時期に、社員が自ら学び、成長する「アカデミー」の存在をタナベ経営から教えていただきました。当社がWeアカデミーを導入したきっかけであり、そのときは目から鱗が落ちる気分でした。そうした新たな視点や専門家ならではの課題感の提示が、さらなる成長のテコになると期待しています。
——今後の展開についてお聞かせください。
井上社長:「すべてのステークホルダーの笑顔をつくるローカルメジャー」を目指していきます。当社が地域に根ざして事業を続けてこられたのは、社員やお客さま、アライアンス関係者、地域社会の皆さまに支えていただいたから。地元に根付いている伝統や産業には、長い時間をかけて培った技術やノウハウが詰まっています。そこにWELLZらしさをプラスして新しいビジネスにアップデートしていきたいと考えています。
すでにクラフトビールの製造販売や障がい者雇用を支援するサービスなど、いくつかの事業が計画段階に入っています。コロナ禍もあり、地方の疲弊が深刻化していますが、地域の資源を生かしながら皆さんに喜んでいただけるビジネスにアップデートすることは、地域のアップデートにもつながると思います。
WELLZグループとして地域と一緒にさまざまな業種に挑戦しながら、地域にとってなくてはならない企業グループ、ローカルメジャーへ進化していきたいと考えています。
地域の方々とともにさまざまな業種に挑戦し、「すべてのステークホルダーの笑顔をつくるローカルメジャー」を目指すという
——タナベ経営はこれからも笑顔と感動を創造・発信し続けられるようサポートを続けてまいります。本日はありがとうございました。
PROFILE
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- 会社名:井上株式会社
- URL:https://www.inouekabu.com/
- 所在地:京都府福知山市篠尾新町(さそおしんまち)3-3
- 創業:1947年
- 従業員数:104名
※ 掲載している内容は2022年7月当時のものです。