ポイント
芝園開発 代表取締役 宮本 薫氏
― 芝園開発様は、国内初の「機械式の無人個別管理・駐輪システム」を誕生させ、首都圏エリアの放置自転車対策による「きれいな街づくり」で公共サービスでも貢献を果たしてきました。そんな中、創立35周年を迎えた2021年6月、事業承継し新社長に就任されました。
宮本:当社は前社長である父(海老沼孝二氏、現会長)が創業した会社です。東京都心を中心に、コインパーキング駐車場事業、時間貸し駐輪場事業、フィットネスジム事業などを展開しており、特に近年は自治体向けの放置自転車対策や公共駐輪場の管理などの官公需事業に力を入れています。
事業承継は決まっていましたが、社員に認められるには10年はかかる、というのが父の考えでした。同時に、社是「創造とバランス」以外はすべて変えていい、私の想いを打ち出して次世代にふさわしい姿に刷新してほしい、と言われていました。
2007年の入社後、父が築いた駐車場・駐輪場運営の事業基盤を守りつつ、社内制度や人材育成などの整備を進めてきました。
経営理念を刷新し、「目指す方向性」を明確化― 2019年、経営理念を一新し、想いをカタチにされました。
宮本:私自身は、これからの30年を見据え、人事制度を策定したかったんです。ところが、策定にあたり、会社として何を評価するのか明確にする必要があり、そのためには自社が何をしたいのか、自社はどうあるべきか、何を社会に価値提供するのか、などについて明確にする必要がありました。
これまでは「駐車場・駐輪場の芝園開発」というイメージが強かったのですが、私自身が取り組みたいことや、社会に提供していく価値はそれだけではないという現状否定からスタートしています。まずは、自社の存在価値は何か、何のために芝園開発が存在しているのかを根本から考え直しました。その結果、社是である「創造とバランス」の重要性をかなり深く再認識できたことも大きな気づきとなりました。
2021年に創立35周年を迎えた芝園開発。近年は放置自転車対策の官公需事業に力を入れている
― 社是はそのままPhilosophyとして継承した上で、新たにミッション・ビジョン・バリュー(MVV)も定めました。
宮本:経営幹部とタナベ経営で「戦略キャンプ」を開催し、事業領域の変化、自社の存在価値や使命を見つめ直しました。また、社員とも面談を重ねて、全社的に「自問自答」した感じです。
「社員一人ひとりが働くことに意味を見出して、仕事も人生も楽しんでほしい」と思っています。だから、「楽しむ」「自律と自立」「自己成長」「やりがい」などを特に重視しました。そして、Missionは「みんながよろこぶステキな社会」、Visionも「良質な社会システムのスタンダード」をつくるという、確かな軸を立てることができました。
「MVVを体現する行動」を評価する人事制度― 人事評価制度策定の際、こだわったポイントについてお聞かせください。
宮本:目標ノルマの達成だけを目指すような、能力・成果主義の画一的な人事評価制度の枠組みに、社員をはめ込みたくなかったんです。納得できないときにはタナベ経営へ伺い、個別に相談したこともありましたが、おかげで人事・働き方・処遇の方針も、社員の等級区分や行動評価も、納得できる独自の制度になりました。
― 人事評価制度の詳細、策定時に苦労した点についてお聞かせください。
宮本:具体的には正社員を全6等級・4役職に区分し、Valueに定めた項目を体現する行動を定義し評価します。
制度策定の際に苦心したのは、等級区分のボーダーラインの設定です。新入社員の1等級から部長クラスの6等級まで、Valueの何がどう違うのか。営業・オペレーション・バックオフィスの3職種に分けて体現レベルを整理するのに、半年を費やしました。人事制度設計は通常、1カ月程度で終わるそうですが、ここをしっかり固めないと先に進めませんよ、とタナベ経営にも粘り強くサポートしてもらいました。
― 社員に伝わりやすいよう、行動評価を定義する一言一句にも心を砕きました。
宮本:例えば「火中の栗を自ら拾い…」というフレーズなどは、他社には絶対ないでしょうね(笑)。一人ひとりが役割に応じた力を、実践を通して育んで、自律的に成長していく姿を、どんな表現にすれば社員にわかりやすいか。それを集中的に考えた結果、私自身も漠然としていたイメージを具体的な言葉に落とし込むことができました。
また、公共性の高い自社のビジネスモデルや社風との相性から、OKRの導入を決めました。OKRは、会社、部門、個人が同じ方向性で明確な優先順位を持ち、それぞれの目標(Objectives)で主要な結果(Key Results)を、しっかりやり切ることを重視する仕組みです。
半期に一度、OKR発表会も実施していますが、MVVとその実現につながる評価が明確になって、全社員が「この方向を目指していけば、大丈夫」と思えるんでしょうね。日常の言葉遣いにも、MVVに登場するフレーズが飛び交う機会が増えたと感じています。
クレドブックでは社員に伝わりやすい言葉・表現でフィロソフィーやミッション・ビジョン・バリュー等を記載(左)。 OKR導入の際は説明会を開き、浸透・定着しやすいよう社内へ丁寧に説明(右)
社員が自ら考え、創り上げる芝園開発流のブランディング― 人事評価制度に続いて、ブランディングプロジェクト(PJ)がキックオフし、2021年に社内外に発信しました。
宮本:新しい理念と制度で、社内の方向性がかたちとしくみになって、”見える化”しました。次は、社外に対してどう見せるか、見られたいか、が大事になります。約1年半かけてブランドのコンセプトと3つのプロミスを定め、体現するスピリッツもクレドにまとめました。
人事評価制度は経営陣が主導しましたが、ブランディングPJについては経営陣は議論に参加せず、社員メンバーを選出し、全員参加型で進めました。分科会活動も公式な開催だけで50回を数えました。
― ブランドコンセプト「ステキな明日をつくり続ける」は、社員の声をカタチにしたものです。
宮本:そうですね。例を挙げると、当社が入り放置自転車対策に取り組んだことで、都内23区で放置駐輪ワースト5に入っていた錦糸町駅前がワースト5を完全に脱却するまでに変わっていきました。放置自転車対策に長年取り組んできた当社にとって、とてもうれしい成果です。駅前に勝手に自転車を止めていた人も、駐輪場に置くように「あたりまえが変わった」ということです。
「あたりまえ」はある日突然、大きなインパクトによって変わるのではなく、日々の小さなことから少しずつ変わります。そのような、お客様、地域、社会、そして私たちにとっても「いいね」と思えることをカタチにすることで、いつのまにか「変わったね」「良くなったね」とみんなが思える「新しいあたりまえ」をつくってきました。
私たちの活動は決して派手なものではありません。けれど、地道にコツコツ、想像の先を創造し、これまで非日常だったものを次の日常にしていきたいと思っており、その想いが「新しいあたりまえをつくる」というブランドプロミスに込められています。
ただ、「いいね」と思えることを見つけ新しいあたりまえをつくるには、「もっと良くしたいな」「もっとこうだったらいいな」という想いを胸に挑戦を重ね、カタチにしていくことが必要です。そんな人が集まっている当社なので、「もっと良くしたいをカタチにする」「つなげる力でステキを広める」ことで、「いいね」の輪を広げていき、ブランドコンセプトである「ステキな明日をつくり続ける」につなげていきます。
― ブランドネームは「LIXTA」に決まりました。ロゴのツートンカラーは、ブルーが「誠実」さ、コーラルカラーは「融合・調和」を表現しています。
宮本:“LIKE” is Next Standard。「いいね」を次のあたりまえに、という想いを「LIXTA」の名に込めています。駐車場や駐輪場の管理現場に看板を立て、ホームページも一新しました。統一感があり、共感が生まれるブランドになるよう意識して発信を続けていきます。
ブランドコンセプトとプロミスを、14項目のスピリッツとして落とし込んだ「クレドブック」も作成しました。社員はもちろん、管理の現場に立つLクルー(パート・アルバイトなどの呼称)の方々にも全員配布し、ブランドストーリーが浸透して「現場でかたちになる」環境づくりも進めています。
ブランディングの具体的成果はこれからですが、すでに「LIXTAはこうあるべき」「こういう行動はクレドにつながる」という話し合いが社員の中に生まれており、当社の目指す方向性を少しずつ共有できてきていると感じています。
全員参加型でブランディングを実施。分科会活動の回数は公式なものだけでも50回を超えたという。その結果、2021年に新ブランド「LIXTA」が誕生
― タナベ経営に依頼した理由や感想などがあればお聞かせください。
宮本:後継者って、守りに入りがちなところもあるんですが、自分のカラーを出したいところもあるんです。そんな中、芝園開発の現在の価値、社会全体から見た価値、私自身の考えが芝園開発にとって最適かどうかなど、コンサルタントとして客観的・俯瞰的に見ていただきました。そういう意味で、自分に足りないところを、的確に指摘してくださったという印象です。
違うものは違う、と耳に痛いこともはっきり言ってくれるスタンスも、ありがたかったですね。社長である私の想いを大事にしながら、全社の事業や社風を踏まえた上でのアドバイスをいただけるので、本当に信頼できるパートナーだと思っています。
中期経営計画を策定。人もサービスも質を高め、いつも「前へ」― 新たに策定された中期経営計画についてお聞かせください。
宮本:中計内容のうち、経営戦略では、人材基盤の強化やオペレーショナル・エクセレンス、DX推進など5つのテーマを掲げています。また、事業戦略はファシリティマネジメントと公共サービスサポートを2本柱に、発展を遂げながら地域への貢献度を高めていくところです。
さらにいま、次代の幹部人材の育成と業務標準化を、タナベ経営と一緒に進めています。目指すものが明確になったので、みんなを巻き込みながら、目指すべき姿へ向かえる人材を増やせるように。また、これまで社内で統一できていなかった業務の価値観やレベルを統一し、MVV・LIXTAのブランドを具現化していけるよう進めています。標準化した高レベルのサービスで、ステークホルダーの方々とより良いコミュニケーションが取れるようにしていきます。
― 今後の展望をお聞かせください。
宮本:MVVで想いを共有し、共感度も高まり、それを実現する「かたちとしくみ」をつくり上げることができました。また、求める人材の姿も明確にでき、前向きで主体的な行動が生まれ、リーダーも育ちつつあります。
これからの3年間は、既存事業を深掘りして足場を固めながら、新事業にもチャレンジして「進化と深化」を進めていきます。そのうえで、将来は他の中核都市圏や地方都市にも横展開して、事業ノウハウの広域化を目指していきたいですね。「ステキな明日をつくり続ける」を合言葉に、しっかりと未来像を描き、「新しいあたり前」に変えていきます。
― タナベ経営も伴走を続けてまいります。本日はありがとうございました。
PROFILE
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- 会社名:芝園開発株式会社
- URL:https://www.sibazono.co.jp/
- 所在地:本店:東京都足立区千住3丁目66番16
- 設立:1986年
- 従業員数:正社員38名、パート・アルバイト542名