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コンサルティングケース
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TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2022.03.18

中和石油:新規事業の開発で多角化を推進し、グループシナジーを発揮

 

ポイント


1 主力事業の閉鎖統合を「前向きな一手」として推進
2 経営理念にのっとり業領域を拡大
3 各事業がシナジーを発揮するグループ経営体制を構築

 

 

お話を伺った人


中和石油 代表取締役社長 杉澤 謙次郎氏

 

 

 

 

 

ガソリンスタンドの閉鎖統合を「前向きな一手」として推進

 

—— 先代である杉澤達史氏(杉澤謙次郎氏の父)が急逝された2015年、3代目として経営のバトンを継承してから事業の多角化を推進してきました。

 

杉澤:創業以来70年余り、ガソリンスタンド経営のエネルギー事業が中核事業でした。ただ、若者の車離れや国の脱ガソリン車政策などでガソリンスタンド市場は縮小し、赤字が続く店舗も抱えていました。

 

当社のこれからを直視した時、不採算店舗の整理は避けられません。同時に、成長市場で新たな経営の柱を育てる必要もあると考えました。その2つの課題解決に向け、人材育成研修でご縁のあったタナベ経営にお手伝いをいただこうと考えました。

 

—— 不採算店舗の閉鎖統合は苦渋の決断でした。

 

杉澤:全国石油協会副会長、および北海道石油業協同組合連合会会長も務めた先代は、「絶対に、店は閉めない」がポリシーでした。手を尽くしても赤字から脱却できない店舗が現実としてあり、ハードルは高かったですね。

 

タナベ経営には社外から客観的な視点に立ち、経営のプロフェッショナルとして「現状打破の一手として、閉鎖統合は必要なこと」との提案をいただきました。また、私がトップダウンで断行するよりも、「経営幹部のみなさんで『これ以上、赤字店舗は出さない』との思いを共有し、一緒に解決策を導き出していく方が良い」ともアドバイスをいただきました。その後、幹部社員とともに中期経営計画を策定し、赤字店舗の閉鎖を前向きなアプローチの1つに位置付けることに成功しました。社内の理解も得やすくなり、決断後はスムーズに進めることができました。

 

—— 社員を巻き込んだ中期経営計画の策定により、エネルギー事業の新たな可能性を見出すことができました。

 

杉澤:縮小と言っても、ガソリンスタンド市場はすぐにはなくなりません。そこで、石油元売り大手のエネオスグループが新たに打ち出した、完全セルフ形式でサービス品質も定型化するガソリンスタンド経営「エネジェット」ブランドに既存店舗のビジネスモデルを転換しました。顧客満足とコストオペレーションのバランスが良く、利益も出せると判断したからです。数千万円規模の新規投資が必要でしたが、積極的に採用し成果に結び付いています。

 

先代のポリシーは「北海道に貢献する産業であり続けたい」という思いからきており、それは私も同じです。赤字にしっかり向き合うことで今できることに気付き、次の成長につなげるための一歩を踏み出すことができました。

 

 

「海外で育てて、国内に供給する」
独自の人材活用の仕組みを事業化

 

—— ガソリンスタンド事業は、電気・水素など次世代エネルギーの供給インフラとしても注目を集めていますが、それ以上に可能性を追い求めたのが事業の多角化です。

 

杉澤:ガソリンもそうですが、エネルギー事業は元売りの看板とビジネスモデルの上で「いくらで仕入れて、いくらで売るか」しか工夫できず、自助努力に限界があります。自らの手で未来を切り拓くためには、事業領域を越えて多角化し、経営の柱を増やしていかなければいけません。また、世の中の環境は、リーマンショックや災害、現状のコロナ禍など、我々が予想もつかない変化が起きています。それに柔軟に対応できる企業になるべく、事業の多角化を進めています。

 

ただ、新規事業開発は未知への挑戦です。自社で情報を集めて「何をするか」を検討しつつ、「どのように事業化するか」は、ノウハウが豊富なタナベ経営と二人三脚で進めていきました。

 

—— その1つが外国人労働者の人材派遣事業です。「海外で人材を育て、国内に供給する」という前例のない挑戦でした。

 

杉澤:当社は10年前から積極的に外国人人材の研修受入や採用を推進し、現在は全社員の1割を占めます。自社で募集から教育、採用までを一貫して手掛けることで、その仕組みとノウハウを確立してきました。それを、人材不足に悩む国内企業に役立つ事業に育てていこうと考え、AHGP(Asia Human Gateway Project)を始動しました。

 

具体的には、2019年1月にベトナム・ハノイに日本語学校を設立。生徒には日本語から学び始めてもらい、個性や能力を見極めながら育成しています。海外の学校づくりから始めて日本に人材を送り込む事業モデルは、タナベ経営からヒントを得て一緒に実現しました。

 

ベトナム・ハノイの日本語学校。生徒は日本で働くために語学や専門知識を学ぶ

 

 

—— 働き手不足による社会課題の解決にもつながると期待が高まっています。

 

杉澤:ベトナム人の大学生をインターンで受け入れる採用トライアルも行っています。優秀な人材と日本企業がマッチングしやすく、どちらも負担やリスクが少ないのが特徴で、確保だけでなく定着にも結び付いています。北海道だけでなく、全国から人材確保の相談をいただき、大手企業をはじめ採用事例は増え続けています。