ポイント
JESCOホールディングス 代表取締役会長兼CEO 松本 俊洋氏 JESCOホールディングス 代表取締役社長 執行役員社長 古手川 太一氏 JESCOホールディングス 執行役員 戦略経営企画室 人材開発部部長 藤本 淳子氏
― 「JESCOアカデミー」を設立されたきっかけを教えてください。
松本: JESCOグループは1970年の創立以来、「安心して暮らせる豊かな社会づくり」を基本理念に掲げ、原子力発電所の格納容器のリークテスト業務を核に電気設備、電気通信設備のコンサルティング、設計・積算、施工・管理、保守・メンテナンスなどのワンストップソリューションを提供しています。海外にもいち早く進出し、ASEAN全域へ事業を拡大しました。
今後の発展を見据えたとき、2つの経営課題が見えていました。1つは、次代の経営を担う執行役員クラスの人材育成。もう1つは、建設パートナーである協力業者や、施工現場の担い手である技能労働者とのネットワークの強化です。
特に後者は、国内の建設投資市場が縮小し、高齢化により建設業従事者が減少する中、自社存続のカギを握ります。対策としてM&Aを推進していますが、それに加え、職人を育て、“JESCOファン”を増やし、施工ネットワークを強化していくことが重要です。
そのためにも、まずは自社の新卒社員を体系的に育成し、培った人材育成ノウハウを協力会社の職人養成にも展開しましょう、とタナベ経営から提案があり、JESCOアカデミーが始まりました。
古手川: これまでも「プロフェッショナル人材」の育成に力を入れ、さまざまな研修制度を実施してきましたが、制度を十分に生かし切れていないと感じていました。具体的には、当社の業務が現場仕事中心であるため、教える側も学ぶ側もまとまった時間が取れず、集合研修が実施しにくいというジレンマがありました。
その意味で、体系的な人材育成を支援するタナベ経営のプラットフォーム「アカデミー」(企業内大学)をベースに、研修をデジタル化することは大きな魅力でした。
― デジタル型研修のメリットをお聞かせください。
藤本: いつでも、どこでも、事前学習や復習で繰り返し学べます。新人研修はface to faceの集合研修やOJT、それ以外はクラウドの動画コンテンツで学ぶ。アカデミー導入で「リアルとデジタルのいいとこ取り」ができ、ムダやムリなく効率的に、教育の質のムラもなく、社員が公平に学べる体制を整えることができました。
ベトナムを拠点に、アジア全域のインフラ需要を支えている(写真はJESCOホールディングスが第2旅客ターミナル新築工事を手掛けたベトナム・ノイバイ国際空港)
「3年で一人前」の現場管理者を育てる― アカデミーで育成する人材像を「求められる役割・責務を全うし、結果を出すプロフェッショナル」と位置づけています。
古手川: JESCOグループの経営理念「FOR SAFETY FOR SOCIETY」や行動指針に基づいて、階層・年次別のあるべき姿や、そこへ到達する成長イメージを描き出しました。タナベ経営の提案を受けて、最初に定めたのが「3年で一人前の現場管理者を育成する」という人材ビジョンです。
一人前とは「独力で小規模工事案件の全体を計画・管理し、成果を上げる」レベルです。当社らしいプロフェッショナル人材を、どれだけの時間をかけて、どんな姿に育てるのか。時間軸と成長像をわかりやすく見える化できたのは大きな収穫です。
― 資格取得講座の開講など、公的資格の取得支援も重視しています。
松本: 設備工事の現場管理に国家資格は欠かせません。JESCOアカデミーでは3年目までに第二種電気工事士取得や2級施工管理技士の1種目取得を必須とし、その後も1級施工管理技士(1種目取得)や他の高度専門資格の取得を義務付けています。
エンジニアとしてのキャリアアップと、現場で必要な資格を明確に紐づけるのが狙いです。いつでも現場視点に立って学び、実践につなげ、仕事の成果や経験価値も評価できる、一元化した育成モデルを確立できました。
現場力、人間力を身に付ける― 一人前になるためのStart up(入社~半年)、Stage1(半年~1年)、Stage2(2年~3年)。そして一人前に育った後のStage3(4年~8年)とStage4(9年~)。カリキュラムは5つのStageに区分し、「現場力」「人間力」の2学部(7学科)で、全204講座の構成です。
藤本: 現場力については「工程・品質・安全・原価」の4つの管理能力と、電気・通信など事業別専門スキルという、5つの切り口で専門性の基準を定めています。
人間力については、社会人としての基本スキルに加え、“JESCO人”としての基本スキルを養成します。特に、元請けや協力会社と連携して円滑に工事を進めるためにはコミュニケーション力を高めることが重要ですし、こうした人間力が工程遅れやトラブル、事故の防止につながります。
“JESCO人”としての基本スキルとは、自己啓発や問題発見、安全衛生、コミュニケーション実務を指します。 アカデミー設立推進プロジェクト(PJ)には、執行役員や部門長がメンバーとして参画しました。現場を熟知する彼らがカリキュラムを作成するので、どれも実際の現場工事に即した内容です。
高い専門性、豊かな人間性を磨き、業務において必須となる資格取得をサポートするJESCOアカデミーはまさに、現場で活躍するために必須のカリキュラムとなっています。
「3年で1人前」の現場管理者育成を見据えるJESCOホールディングス。いつでも、どこでも学べるWeb講座中心の学習スタイルは、現場業務中心の同社にマッチ
現場のノウハウをコンテンツ化― 現場のノウハウ・知見を集約し、デジタル化した「JESCO技術資料集」は、他社にない特徴的なコンテンツです。
藤本: 設計図書や入札申請、施工の準備・進捗管理など、実際の現場管理に役立つフォーマットやデータを、クラウドシステムで閲覧できるというコンテンツです。
アカデミー受講社員だけでなく、全社員にアカウントを発行予定で、現場で困ったとき、知りたいときにその場で役に立つツールとなるよう、制作を進めているところです。
― 現状分析からカリキュラム策定、コンテンツ作成まで、約8カ月のスピード開講を実現しました。
藤本: タナベ経営にはアカデミーという人材育成スキームで豊富な実績があります。また、業界の実務に詳しい方もいらっしゃり、複数の専門性、ノウハウを生かした「チームコンサルティング」は心強かったですね。動画コンテンツ作成には苦労もありましたが、「1コンテンツあたり10分以内」など、具体的なアドバイスもいただき、成果につながるものになりました。
― 2020年秋にプレ開講、2021年春から本格開講し、松本会長は理事長、古手川社長は学長に就任されました。
古手川: 2020年11月の社長就任に先立ち、PJの最終段階から参画しました。「JESCOの進むべき方向性」として松本会長の示したビジョンを、具現化するのがJESCOアカデミーです。事務局とともに着実に推進し、実のあるものにしていきます。
社員の皆さんには、社内に留まらず、広く社会から求められる役割・責務を全うし、結果を出すプロフェッショナルに育っていただきたいです。そのためにも、若いうちから真摯に実践し、技術・知識・経験を積み重ね、現場力と人間力に磨きをかけ続けていこうと積極的に発信していくつもりです。
協力会社の新規開拓や自社のブランディングを見据え、今後はJESCOアカデミーを協力会社にも展開予定という
教え合い、学び合う文化を育む アカデミーを活用し、グループ力強化へ― JESCOアカデミーの今後の方向性についてお聞かせください。
古手川: 受講生からも意見を出してもらい、分析を重ねながら、コンテンツに磨きをかけていきます。ゆくゆくは最新の施工技術などのコンテンツを増やし、オープンアカデミーにして協力会社にも展開したいですね。さらに、協力会社の新規開拓、ブランディングなどにもつなげていけたらと考えています。
また、PJに参画したメンバーがそれぞれ成長し、次世代リーダーへと一歩を踏み出す力になったとも実感しています。互いに教え、学び合う文化が、アカデミーを通じて育まれつつあります。
松本: 海外の社員にも学びの機会として活用してもらい、グローバル人材としてのさらなる成長や活躍につなげてほしいですね。アカデミーで学んだ社員が現地でも文化を育む存在になり、グローバリゼーションを生き抜くより強いJESCOグループになっていくと確信しています。
― タナベ経営も、その一助となる支援を続けていきます。ありがとうございました。
PROFILE
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- 会社名:JESCOホールディングス株式会社
- URL:https://www.jesco.co.jp/ja/index.html
- 所在地:東京都新宿区新宿2-1-9 JESCO新宿御苑ビル8階
- 設立:1970年
- 従業員数:584名(2020年8月、連結)