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コンサルティングケース
コンサルティングケース
TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2022.03.17

大陽塗装工業:職人を正社員で雇用し、技術の向上・伝承を図る

 

 

「DAIYOアカデミー」で若手社員の成長をサポート

 

—— 資格取得費用の補助など職人の技術向上をサポートする施策のほか、新たな教育制度として「DAIYOアカデミー」にも取り組んでおられます。

 

辻(雄):社員のやる気や「上を目指したい」という気持ちをできる限りサポートしていきたいと考えています。タナベ経営にご協力いただいているDAIYOアカデミーについては、今の時代に合った教育制度を目指しました。

 

職人の世界では「見て覚える」という指導が長らく主流でしたが、そうした方法が時代に合わなくなってきています。また、優れた職人が、必ずしも良い教育係になるとは限りませんし、そもそも職人技を言葉にして教えるのは非常に難しい。感覚的な仕事であり、伝える際には曖昧な表現が用いられることも多いのですが、これからは初めて塗装に接する人にも分かりやすく、質問しやすい教育環境が必要だと思います。今は基本的な部分を学ぶ教科書を作成している段階です。

 

—— 今回は、テキストだけでなく動画を活用したプログラムを作成しています。曖昧なニュアンスを極力減らすなど、初めて塗装に携わる人を含め、誰もが理解しやすい教材を目指しています。

 

辻(雄):まだ試作段階ですが、高等特別支援学校を卒業した社員に使ってもらったところ、「分かりやすい」という感想をもらいました。本格運用する前に他の社員に感想を聞いたり、実際に現場に出る職人の生の声を反映させたりしながら、より精度の高いものにしていきたいと考えています。

 

—— 作成に当たっては実際に高等特別支援学校に出向いて、教員の方々からさまざまなアドバイスを受けました。タナベ経営は、これまでに100件以上の企業アカデミーを手掛けていますが、それでも新たな発見がたくさんあり良い経験になりました。

 

現状では障害のある方が就職するのは簡単ではありませんし、就職できても職場になじめずに離職するケースも少なくないと聞いています。ですが、分かりやすいテキストや動画を用いた教育ツール、さらに質問しやすい環境があると状況は大きく変わると思います。

 

辻(雄):作成の際に最も重視したのは分かりやすさ。その意味でも、単に塗装の知識を解説するだけでなく、塗装に興味を持ってもらう工夫を施しました。例えば、1つの建物がどのように造られるかを、流れに沿って分かりやすく解説しています。楽しい部分から入っていかないと勉強は長続きしません。

 

—— プロジェクトでは、社内向けの教育コンテンツだけでなく、対外的に用いる資料として「アカデミーガイドブック」を併せて作成しました。

 

辻(雄):アカデミーガイドブックを2020年から採用活動に活用しました。その成果とは断言できませんが、2021年4月に高校の新卒社員が入社してくれます。新卒社員の入社は実に約20年ぶり。コロナ禍で採用活動も自粛せざるを得ない環境でしたが、状況が改善すればアカデミーガイドブックを活用しながら新卒の採用活動を継続していきたいと考えています。

 

 

アカデミーなどの教育制度は自社の評価に直結している

 

 

 

職人の質の向上でグループとして成長を目指す

 

—— DAIYOアカデミーを中心とする教育制度や社員の頑張りを後押しする評価制度など、人が育つ環境が整いつつあります。そうした人材を要に、今後どのような展開を目指しますか。

 

辻(昌):公共工事と建築工事の2本柱で事業展開を進めていきます。まず公共工事については、元請けとして受注する以外にも、公共事業を受注した大手ゼネコンの1次下請けとして工事に入っていきたい。特に、技術力が必要とされる利益率の高い分野であれば、積極的に開拓していきたいですね。

 

—— 具体的に視野に入れている分野はありますか。

 

辻(昌):例えば、高圧鉄塔の塗り替え工事。この分野は、高所作業であるがゆえに職人がほとんどおらず、高所作業のできる職人を抱える企業は引く手あまたの状態です。当社は良いご縁があり、そうした職人を抱える真和塗装工業を2020年にDAIYOグループの一員に迎えることができました。今後は、高圧鉄塔の塗り替え工事において西日本でも存在感を高めていきたい。大陽塗装工業と真和塗装工業の強みを掛け合わせ、相乗効果を発揮しながらグループとしての成長を目指します。

 

—— 建築工事では、重点分野などはありますか。

 

辻(雄):建築工事はこれまで多くの実績を重ねており、それが当社の信頼を築いてきました。その信頼をさらに高められるよう取り組んでいきます。急成長が難しい分野ですから、1つ1つのチャンスをしっかりと捉えていくことが重要です。特に大型物件は人材や技術が確保できないと施工できません。その意味でも雇用制度と教育制度の継続・充実が欠かせないと考えています。

 

 

「塗装の魅力をもっと知ってほしい」という思いのあふれる大陽塗装工業のホームページ

 

 

 

職人の質の向上でグループとして成長を目指す

 

—— 2017年から売上高は右肩上がりで伸びており、2020年度は10億円近くまできました。知名度も上がっており、エリアを越えた事業展開も広がっています。具体的な成長目標などはお持ちですか。

 

辻(昌):会社の規模拡大だけを目指すならば、多く受注して外注に丸投げすればよいところですが、私はそこに魅力を感じません。社員がやりがいを持って仕事をしてくれた結果、お客さまから信頼されて仕事が増え、売り上げが伸びていくのが理想です。「社員が『仕事が面白い』と感じて働いてくれたときに会社は成長する」というのが私の考え方です。

 

先ほども話に出ましたが、当社では日帰りバスツアーなどのイベントを開催しています。これは福利厚生の充実という側面もありますが、それよりも「この会社、なかなか面白いな」と思ってもらうことが目的です。

 

—— 社員を幸せにすると利益が生まれ、会社が成長する。そのサイクルに入ると、会社の実力に伴った売り上げが付いてきます。そうしたサイクルがうまく回り始めていると感じています。

 

辻(昌):4年前に社長を引き継いだとき、このような仕組みはありませんでした。ようやく道筋が見えてきたので、次代へとスムーズに移行できるような基盤をつくるのが私の役割。それを辻専務につないでいきたいと考えています。日頃から、職人をねぎらう専務の姿を見ており、「社員に気持ち良く働いてもらえる会社をつくる」という同じ思いを持ってくれていると感じています。

 

—— 職人が安心して働ける雇用制度と教育制度によって人材力を高め、ますます飛躍されることを祈念しつつ、タナベ経営としてもサポートしてまいります。本日はありがとうございました。

 

 

 

PROFILE

    • 会社名:大陽塗装工業株式会社
    • URL:https://www.daiyo-tosou.co.jp/
    • 所在地:岡山県岡山市北区下伊福本町1-31
    • 創業:1910年
    • 従業員数:25名(2020年12月現在)

※ 掲載している内容は2021年3月当時のものです。