企業理念、価値観を整理し、フィロソフィーを共有
—— 人事制度改革には多少の混乱が伴うものですが、比較的スムーズに移行されました。ポイントはどこにあるのでしょうか?
岡崎:説明会を何度も開催するなど、制度の浸透に注力しています。ただ、何より納得性の高い制度設計であることが重要だと思います。私たちの場合、2016年に理念や価値観を整理した「コープやまぐち基本方針書」を策定し、それを軸に人事制度を構築しました。理念と制度が一致していることも、スムーズに導入できた要因です。
—— このタイミングで理念や価値観を整理されたのはなぜでしょう?
岡崎:生協は、宅配・店舗・生活の3事業を中心に、食の安心・安全やともに助け合える地域づくり、環境問題などに取り組んできました。その過程で多様な価値観を取り入れてきましたが、半面で軸となる理念がぼやけてしまっているのではないかと課題を感じていました。そうした話をタナベ経営とする中で、一度しっかりと基本理念を整理しておいた方が良いとの判断に至りました。
—— 同方針書は基本理念から始まり、基本方針や行動原則、事業や商品に対する考え方、組織運営に至るまで丁寧に整理されており、とても分かりやすいですね。
岡崎:同方針書が最終的な形になるのに約1年かかりました。専任の担当部長を配属し、役職員が論議に参加して作成に携わったことで理解が深まりました。発信する側が深く理解していると、現場への伝わり方が変わっていきます。また、特に若い世代は人事制度を通して、理念や価値観を理解している側面もあると思います。
自ら考え行動する組織へ
—— 理念の共有や人事制度改革によって、組織の雰囲気も変わりつつあります。
岡崎:理念の共有は働く全ての人が対象です。新たな人事制度によって、全てのコープ職員に共通の尺度を用いて評価・育成することで、努力した人やチャレンジした人、成果を出した人を公正に処遇する組織に近づいたと感じています。実際に、上からの指示ではなく「メンバーが自分で考えて行動するようになった」という声が現場からも聞こえてきています。
妊娠中の方や7歳までのお子さんのいるご家族であれば誰でも支援が受けられる「ここサポ」
70歳以上の方を対象にした買い物支援サービスの「70(ななまる)サポート」
—— 人材不足や働き方改革が進む中、限られた人材をいかに活用するかが問われています。
岡崎:おっしゃる通りです。また、1人でも多くの職員に自分に合った職場で働いてもらい、活躍し続けてもらうことが重要です。今回、職務給への移行や職員が働き方を選択できる仕組みを導入しましたが、一方で制度はできた瞬間から陳腐化が始まるものです。せっかくの良い流れを止めないためにも、運用する中で実態に合っていない部分は随時改良するなど、メンテナンスを重ねていくことが肝要だと考えています。
—— 時代に合わせて評価制度や処遇を変えると、現場のモチベーションが上がり、人材の成長スピードが上がります。最後に今後の展望をお聞かせください。
岡崎:近年、国内外を見渡すと、あちこちで「分断の危機」を感じさせる出来事が起こっています。そういった時代だからこそ、組合員一人一人がつながり、職員と共に運営する生協のような組織が求められると思います。職員であれ、組合員であれ、誰もがやりたいことを自ら進んでチャレンジできる組織にしたいと考えています。例えば、商品開発をやってみたいと思えば、開発サークルのような小集団活動に参加し、実際に商品づくりを行えるなど、楽しく組織貢献できる活性化組織をつくっていきたいと思います。
コープやまぐちの基本理念は、「ひとり一人の願いを寄せ合い、私たちのまちに人間らしい豊かなくらしの創造を」。その実現に向けて、職員一丸となって、組合員と共にくらしになくてはならない生協づくりに全力で取り組んでいきたいと考えています。
—— 多くの社会課題が顕在化する中、生協に求められる役割が広がっています。理念を軸にさらなる成長を遂げられますようタナベ経営もサポートしてまいります。本日は貴重なお話をありがとうございました。
PROFILE
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- 組織名:生活協同組合コープやまぐち
- URL:https://www.yamaguti-coop.or.jp
- 所在地:山口県山口市小郡上郷901-21
- 設立:1963年
- 従業員数:626名(コープ職員403名、コープ職員(定時)223名、2021年5月現在)
※ 掲載している内容は2021年5月当時のものです。