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コンサルティングケース 2022.03.17

次世代の経営者人材を育成し「世界で一番有名な塩メーカー」を目指す 伯方塩業

伯方塩業:次世代の経営者人材を育成し「世界で一番有名な塩メーカー」を目指す     ポイント
1 次世代メンバーで中期経営計画を策定
2 数字・成果の報われる人事制度へ刷新
3 本社・工場間のコミュニケーションが活性化
    お話を伺った人
伯方塩業 代表取締役社長 石丸 一三氏伯方塩業 代表取締役社長 石丸 一三氏             自然塩(塩田塩)存続運動が原点となり創業した伯方塩業(写真は大三島工場)

自然塩(塩田塩)存続運動が原点となり創業した伯方塩業(写真は大三島工場)

    「世界で一番有名な塩メーカーになる」  

― 伯方塩業は、「伯方の塩®」ブランドで高い知名度と信用を築いてこられました。2023年に迎える創業50周年、さらにその先も見据えた自社のありたい姿として、10年ビジョン「世界で一番有名な塩メーカーになる」を掲げています。

 

石丸:このビジョンは私が社長就任時に掲げた、“未来志向の合言葉”。単に知名度を上げよう、企業ブランドを高めよう、という内容ではなく、ワークライフバランスを充実させ、社員一人ひとりが誇りを持ってイキイキと働ける会社にする、という意味です。

 

その実現に向け、2019年度からの中期経営計画(5カ年)を策定するため、20年来付き合いのあるタナベ経営に協力をお願いしました。

 

― 長期ビジョンへの具体的なアプローチを描き出す中期経営計画は、「LEAP TO THE 50 未来への飛躍」がスローガンです。策定を支援する中で、事業承継への備えをはじめ、持続力の高い経営への強い思いを感じました。

 

石丸:塩は人が生きていくために、なくてはならないものですが、日本には岩塩などの塩資源がないため、昔から海水を原料とした塩田での塩つくりが行われていました。

 

しかし、1971年法律により、太陽熱や風などの自然エネルギーを利用した塩田での塩つくりから、製造過程で化学薬品を使用し、化学工業的なつくり方をする塩(塩化ナトリウム99%以上の過精製塩)に全面的に切り替わることとなりました。

 

世界でも食用にした前例のない塩へ強制的に切り替わる――。その事実に不安を抱いた消費者が、塩田の塩を残してほしいとの想いから自然塩(塩田塩)存続運動を起こした結果、我々に塩の製造委託許可が与えられ、1973年に当社の設立へと結びつきました。

 

こうした「安心して食べることのできる塩田の塩を残したい」という熱い想いが創業の原点です。”塩は単なる調味料ではなく、基本食料である”という考えのもと、健康最適塩を探求することを経営の根幹とし、これからもしっかりと受け継いでいきます。

 

― 次世代幹部人材を育成・強化することが、10年ビジョン実現への確かな道づくりになりますね。

 

石丸:オーナー企業ではないからこそ、経営センスや実行力の高いリーダーを一人でも多く育成し、組織経営をよりスムーズに実行することが重要です。いまの経営陣を支えるだけでなく、将来のありたい姿も、自らの手で明確に描き出してほしいですね。何をすべきかを自ら考え、行動できる経営感覚を養い、磨きをかけてほしいと思います。

    「世界で一番有名な塩メーカーになる」というビジョン実現に向け、人材育成をはじめさまざまな取り組みを行っている(写真は松山本社(左)と大三島工場内での製造工程)

「世界で一番有名な塩メーカーになる」というビジョン実現に向け、人材育成をはじめさまざまな取り組みを行っている

(写真は松山本社(左)と大三島工場内での製造工程)

    次世代メンバーの経営塾で中期経営計画を策定  

― 「未来への飛躍」に向け、次世代の経営幹部メンバーによる経営塾「守破離の会」をつくり、新たな取り組みを進めています。

 

石丸:「守り尽くして破るとも 離るるとても本を忘るな」。千利休が説いた茶道の規矩(きく)作法である「守破離」は、修業・成長過程の良き訓えです。

 

当社も創業期の「守」、成長期の「破」を経て、50周年から先は基本と独自性を融合する、新たな「離」のステージに立ちます。その時に役員や部門長になる、いまの部長・次長・課長職7人で「守破離の会」を構成し、タナベ経営と一緒に、中期経営計画や毎年度の方針、重点施策の策定に取り組んでいます。

 

― メンバーの皆さんはとても真摯に取り組んでいます。半面、次世代を担う人材ですから、もっと積極的にリーダーシップや自発性を発揮しても良いと思います。

 

石丸:まさに、そこが狙いです。当社には「大切なものを守る」風土が根づいているので、どうしても革新性が弱く、従順になりがちです。

 

歴代の社長や幹部は、会社が小規模の頃から強い意志を持って行動を起こし、何でもやらなければと、とにかく毎日必死でした。しかし、現在は経営が安定してから入社した社員がほとんどで、創業時の苦しみを知らない。世代間の温度差は仕方のないことですが、経営陣として会社を引っ張るには、リーダーシップや自発性を磨く必要があります。

 

― 若手社員中心の「45周年誌」編纂も、創業以来の歩みをひも解く狙いがありました。

 

石丸:中期経営計画の策定に先立ち、「会社の原点を見つめてみては」とタナベ経営からご提案をいただきました。創業時を知る幹部にインタビューを実施した若手社員からは、「丁寧に歴史を振り返ることができた」「塩つくりへのこだわりの強さの理由がよくわかった」といった感想を聞いています。

 

周年誌のほか、ギネスへの登録、周年イベント・販促やプロモーション企画などの50周年プロジェクトを若手メンバー中心に進めています。PJを通じて、社内に新たなコミュニケーションが生まれ、「全員でやっていく」機運が高まっています。50周年PJでの取り組みを、社外・社内へのブランディングにつなげていきたいと考えています。

    次世代の経営幹部メンバーによる経営塾「守破離の会」。経営課題の整理・解決を進めながら、経営陣として会社を牽引する力を養成

次世代の経営幹部メンバーによる経営塾「守破離の会」。 経営課題の整理・解決を進めながら、経営陣として会社を牽引する力を養成

        成果が報われる人事制度へ 新規事業や海外市場開拓も始動  

― 「守破離の会」は原価管理や周年記念事業、人事制度、先端技術の導入、さらに新規事業の開発など、目の前にあるさまざまな経営課題を整理して重点テーマを決め、解決しています。

 

石丸:新規事業として、6次化へ挑戦する「GOENプロジェクト」を始動しています。塩は健康に生きるために必須であることや、その味わい方や楽しみ方を通して『伯方の塩®』の魅力を世の中に発信するのがPJの目的です。さらに、定年退職者に雇用の場を提供する狙いもあります。

 

PJの具体内容として、大三島工場の近くに自社農園「GOENファーム」をつくり、サツマイモや梅などの農作物を、有機栽培しています。また、収穫した農作物と塩を使って、梅干しや芋けんぴなどの加工食品を開発製造し、年間10万人の見学者が訪れる大三島工場の売店で直売を始めています。

 

― 海外の販路も、着実に広げています。

 

石丸:国内市場の飛躍的成長が見込めない中、中期経営計画では東南アジアやアメリカといった海外戦略の優先度を高めています。具体的には、愛媛県と一緒にシンガポールの食品見本市に出展するなど、チャネル拡大策を進めています。

 

難しいのは、塩の価値をいかに認めてもらえるかということ。海外市場は塩の品質や味への関心が低く、塩を購入する基準も塩辛ければ良いという消費者がほとんどです。日本でも自然塩(塩田塩)存続運動を起こした頃は「塩は塩辛ければいい」と言われることもありましたが、今では多くの塩がスーパーの店頭に並び、消費者が”塩を選ぶ時代”となりました。品質には自信があるので、世界中の方々にぜひ知ってもらい、”選ばれる塩”にしたいですね。

 

― 人事制度も刷新しました。業績や生産性、コストダウンなど、数字や成果にもこだわる内容になっています。

 

石丸:従来はさほど数字や成果を重視した人事制度ではありませんでした。ですがこれからの時代、仕事への姿勢や思いだけではなく、売上や利益、生産性の指標をつくり、成果を出した人が報われる制度が必要です。

 

そこで、企業理念や行動指針など、社員としての判断基準を人事考課表に盛り込み、社員自身が目標を決め、上司はサポート役に徹することも明文化しました。制度刷新の際はタナベ経営の協力のもと、自ら考え行動し、成果を創り出した人がしっかり報われる新制度をつくりました。

    「GOENプロジェクト」では、自社農場でサツマイモや梅などを有機栽培し、「伯方の塩®」を使って、芋けんぴや梅干しなどの加工食品を開発・製造

「GOENプロジェクト」では、自社農場でサツマイモや梅などを有機栽培し、「伯方の塩®」を使って、芋けんぴや梅干しなどの加工食品を開発・製造

    目指すのは「ONE伯方塩業」 本社・工場間の連携が深まる  

― 次世代メンバーが中心となって動いたことで、本社と工場の連携・コミュニケーションにも良い影響が出ています。

 

石丸:従来、営業や総務、プロモーション部門などのある本社(松山市)と、塩つくりの現場である工場(伯方島、大三島)の間には、見えない壁があると感じていました。それが「守破離の会」に本社と工場からメンバーが参加し、互いの情報や考えを共有することで、横断的な連携が生まれるようになりました。

 

― 象徴するスローガンが「ONE伯方塩業」です。

 

石丸:タナベ経営のアドバイスもあり、経営者や幹部だけでなく、全社員が分かる経営、腹落ちし、興味を持てる経営を意識し、分かりやすく丁寧に伝えることを大事にしてきました。

 

例えば、ポスターや”瓦版”をつくり、「守破離の会」「GOEN PJ」「50周年PJ」での取り組みを見える化・共有しています。そうすることで、「みんなの経営」の力を高めていけると確信しています。

 

また、キャンプや釣りといった社内サークル活動も2021年からスタートします。サークル活動は若手社員が中心となり進めていく予定です。

 

具体的な数字として成果が表れるのは、50周年からもっと先になるでしょう。それでも「世界で一番有名な塩メーカー」の実現に向けて着実に進んでいますし、一歩ずつ前へ踏み出している手応えがあります。

 

― 蒔いた種が葉を茂らせ大樹へと育つよう、これからも支援を続けてまいります。本日はありがとうございました。

   

PROFILE

    • 会社名:伯方塩業株式会社
    • URL:https://www.hakatanoshio.co.jp/
    • 所在地:愛媛県松山市大手町2-3-4(松山本社)
    • 創業・設立:1973年
    • 従業員数:162名(2021年4月現在)
※ 掲載している内容は2021年5月当時のものです。     タナベコンサルティング 経営者・人事部門のためのHRサイト