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コンサルティングケース
コンサルティングケース
TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2021.04.09

北海道コカ・コーラボトリング:ミッションの実現に向けて社員の「考動力」を最大化

 

北海道コカ・コーラボトリング本社。入り口には北海道限定商品をはじめとする自社商品が並ぶ(左)
次世代の幹部候補が集まり、中期経営計画をつくる部門横断型の戦略プロジェクト(北海道コカ・コーラボトリング×タナベ経営)

 

 

400種類以上に及ぶ豊富な商品バリエーションと、工場からラストワンマイルまでカバーする物流網を強みに、道内トップシェアを走り続ける北海道コカ・コーラボトリング。
社会の在り方が揺らぐ今、社員1人1人の力を引き出す教育改革の推進で持続的成長を目指していく。

 

 

道内全域に「届ける」使命で成長する

 

中村 「北の大地とともに」をキャッチフレーズに掲げる北海道コカ・コーラボトリングは、北海道を代表する企業として地域の発展に貢献してこられました。道内の清涼飲料市場においてトップシェアを堅持されていますが、設立後しばらくは苦しい時期もあったとお聞きしています。

 

佐々木 当社は、大日本印刷(DNP)と北海道の地場企業が共同出資し、日本で15番目のボトラーとして1963年に設立しました。すぐに札幌市に工場が立ち上がったものの、まだ道内におけるコカ・コーラの知名度は非常に低く、5年ほどは赤字続きの厳しい状況でした。

 

ただ、苦しい中でも、「北海道全域にコカ・コーラを行き渡らせたい」という強い意思を持って物流網や営業体制を整備したことが、その後の成長につながりました。物流専門の会社を設立したほか、全道に30~40カ所ほど営業拠点を置く拡大戦略によって、5年で累積赤字を乗り越え、以降は順調に業績を伸ばしていきました。

 

中村 厳しい状況下でも一気に物流網を広げるなど、強い使命感と創業マインドが伝わってきます。早い段階にサプライチェーンを確立したことが、成長の原動力となったことは間違いありません。

 

佐々木 当社は直販型のビジネスモデル。ものづくりから配送、営業、販売までを一貫して行う体制が最大の特長であり、これが「北海道に対して、いつでもどこでも誰にでもさわやかさと潤いを提供する」という当社の存在意義、ミッションを支える基盤にもなっています。

 

加えて、強みとなっているのが商品ポートフォリオです。炭酸飲料だけでなく、コーヒーや紅茶、お茶、エナジードリンク、アルコールまで多様な商品を取り扱っており、パッケージの種類も豊富。飲料の種類別・パッケージ別に数えると、取り扱う商品点数は年間約400点に上ります。

 

中村 清涼飲料市場は卸を通して販売することが多く、製造から販売まで社内で手掛けるところは珍しい。また、多様な商品力と併せて、北海道限定のオリジナル商品を持っている点も独自化につながっています。

 

佐々木 北海道限定商品は20~30種類あります。北海道の生活者に好まれる飲料とは何かをマーケティングし、社内で企画したものを日本コカ・コーラ(CCJC)に申請し、原材料の提供を受けて自社工場で製造していますが、それができるのも地場に工場を持っているおかげ。オリジナル商品の展開は3つ目の特長であり、消費者へのスピーディーな提供を可能にする意味でも、札幌工場は商品戦略上の重要な拠点と言って良いでしょう。

 

 

北海道コカ・コーラボトリング 代表取締役社長 佐々木 康行氏
1954年生まれ。東京都出身。早稲田大学理工学部卒業、大日本印刷入社。同社システム開発第1部長を経て、2002年北海道コカ・コーラボトリングに入社。2010年常務取締役、2016年1月より現職。

 

 

北海道コカ・コーラボトリング 取締役 広報・CSR推進部 危機管理部 総務人事部 経営管理部担当 川村 雅彦氏
1966年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業、大日本印刷入社。同社ファインオプトロニクス事業部総務部長を経て、2018年北海道コカ・コーラボトリングに入社。2019年3月より現職。

 

 

地域に根差し貢献する“道産子企業”

 

中村 北海道限定商品は、引き継がれる創業マインドや北海道愛といった企業DNAを強く感じさせる展開です。この商品群は北海道コカ・コーラボトリングらしさを一層高めています。北海道出身の社員が多いことも、そうしたDNAと関係しているように思います。

 

川村 今でも社員の9割以上は北海道出身。名実ともに“道産子企業”ですから、地域に愛着や誇りを持つ社員が多いことは確かです。

 

水本 長期計画『2020VISION』にも「道内企業としての地域密着力」「新たな価値提供による地域貢献」といったキーワードが含まれるなど、地域との関係を非常に大切にされています。

 

佐々木 当社が大事にしているのは、長期にわたって生活者や社会に受け入れられ、成長し続けること。併せて、地域に貢献し、課題解決のために支援することです。それがベースにあり、次に目標があるという考え方。そうした経営を貫く背景には、先ほども紹介した「北海道に対して、いつでもどこでも誰にでもさわやかさと潤いを提供する」という存在意義があります。

 

存在意義を実現するために、地域密着や地域貢献、持続的成長を可能とする強靱な経営が必要であり、地域密着や強靱な経営を目指して長期計画や短期的な目標に取り組んでいます。

 

水本 地方公共団体との連携や災害時の協力協定の締結、地域のスポーツ・文化施設へのスポンサー協力など、幅広い活動をされる背景や理由がよく分かりました。CSRの考え方や行動を社内に浸透させるポイントはありますか。

 

佐々木 当社の場合は、DNAだと思います。会社設立後すぐに、社員が清掃活動を自発的に始めるなどCSRの土壌があり、さらに2000年ごろにCSR推進部を設置したことで急速に活動が広がりました。全道共通のプロジェクトもありますが、ほとんどは各拠点が「地域に必要とされる支援は何か」を自ら考えて始めた活動。その数は100以上に上ります。それらの活動を続けながら、今後はSDGsの観点も取り入れてさらに北海道に貢献していきたいと考えています。

 

中村 「地域の生活者のため」「地域のため」が先にあり、その実現のために利益を上げる。この順番を貫いて経営や戦略に向き合われています。起点が全くブレないことが北海道コカ・コーラらしさや、ブランド力を高めているように感じます。

 

 

北海道コカ・コーラボトリング 執行役員 総務人事部長 危機管理部長 広報・CSR推進部担当 成長戦略策定室担当 井馬 智行氏
1975年生まれ。北海道出身。北海道大学経済学部卒業、1998年北海道コカ・コーラボトリングに入社。2017年執行役員危機管理部長、総務人事部長、2020年3月より現職。