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コンサルティングケース
コンサルティングケース
TCGのクライアントが持続的成長に向け実践している取り組みをご紹介します。
コンサルティングケース 2021.01.29

コンクリートコーリング:環境配慮型の工法開発でナンバーワンを目指す

 

 

コンクリートコーリングは、高速道路をはじめとするさまざまな社会インフラのリニューアルを支える、コンクリート撤去・除去のエキスパート企業だ。「腕自慢の技術屋の集まり」から「経営理念を体現する組織」へと改革を推し進める同社の成長戦略を聞いた。

 

コンクリート撤去・除去のリーディングカンパニー

 

森田 高度成長期に建造されたコンクリート構造物が次々に老朽化する中、コンクリート撤去・除去のリーディングカンパニーであるコンクリートコーリングは業績を伸ばしておられます。まずは企業概要についてお聞かせください。

 

藤尾 当社はダムや橋、トンネル、鉄道、高速道路、発電所、製鉄所、水処理施設、上下水道などの社会インフラを構成するコンクリートの切断や穿孔(穴を開けること)を行う専門工事会社です。1978年に設立し、西日本全域を営業エリアとしています。お客さまはゼネコンが主体。営業から技術提案、施工まで一貫して自社で実施できる体制が評価され、多くのお客さまから信頼を獲得しています。

 

成熟化した都市では、騒音、振動、粉じん、排水などを極力発生させない環境に配慮した工法が求められます。当社はダイヤモンドの刃が付いた小型機械を使い、営業中の百貨店のビルからコンクリートを撤去した実績があります。

 

また、ウォータージェット工法という超高圧の水を使ってさまざまなコンクリートを除去する工事も行っています。この工法は1cm2当たり2.4tもの水圧が掛かり危険を伴うため、万全な安全対策が求められます。

 

当社は安全に対する妥協を一切許さず、理解しやすい安全マニュアルの作成や安全作業をチェックするパトロールをはじめ、協力業者も参加する安全大会、各現場の進捗状況や「ヒヤリハット」を報告する定期的な会議などを行っています。

 

安全性の追求と同時に、技術開発も積極的に推進。グループ会社を介して現場ニーズに合わせた機械加工を行うだけでなく、お客さまの要望に応える新工法の開発にも取り組み、大手建設会社と共同開発した特許も所有しています。

 

コンクリートコーリング 代表取締役社長 藤尾 浩太氏
「社員と家族のしあわせを実現する」ことを目指し、2012年に代表取締役に就任。大胆な社内改革、特許の取得などにより業績の回復、自己資本比率の大幅な改善を実現。2016年から5年連続、決算賞与で社員にその利益を還元している。仕事、家族、ゴルフが何より大事。日本コンクリート切断穿孔業協会理事。

 

 

コンクリートコーリング 経営統括室長 中元 美緒氏
関西学院大学経済学部卒。2013年入社。経営統括室長就任後は、持ち前の実行力と既成概念にとらわれない創造性を生かし、DX含め業務改善を強力に推進。経営と社員の待遇バランスを常に考え、会社の風土を変化させている立役者。秘書検定1級と建設業経理士1級を独学で取得。現在は中小企業診断士合格を目指して勉強中。

 

 

経営課題を洗い出し社内改革を一気に推進

 

森田 タナベ経営とのお付き合いは2017年から始まりました。その背景にはどのような事情があったのですか。

 

藤尾 当社は今期の反省と次期の計画を話し合う経営総合会議を開いています。2017年の経営総合会議には経営統括室長の中元が女性社員として初参加し、「中小企業のための内部統制の向上にかかるチェックリスト」を提出しました。

 

これは「当社が今どういう状態にあるのか」を評価するものですが、当社は145点中51点。私は社長を継承して5年が経過し、多少業務に慣れた時期だったので、自分の不行き届きを指摘されたようで非常に恥ずかしい思いをしました。

 

当時、私は今後の成長戦略を模索しており、さまざまな書籍に目を通していました。その中にタナベ経営のコンサルティングを高く評価したものがあったことがお付き合いのきっかけになりました。

 

タナベ経営との付き合いが始まると当社の問題点が次々に洗い出され、まるで人間ドックに入ったような感じでした。この3年間、経営理念と中期ビジョンの策定、社内アカデミーの創設、人事制度とウェブサイトのリニューアル、ジュニアボードの実施に取り組む中、「社内の雰囲気が変わってきた」と感じています。

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 森田 裕介
大手アパレルSPA企業での経験を生かし、小売業の事業戦略構築、出店戦略、店舗改革を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、顧客と一体となった実践的なコンサルティングを展開。「お客さまに喜んでいただけるまで妥協しない」をモットーに、業績向上を図っている。

 

 

透明性の高い人事制度即戦力化を図るアカデミー

 

森田 経営理念と中期ビジョンの策定をお手伝いするところからスタートしました。

 

藤尾 経営理念の策定については、タナベ経営から「社長1人で考えて決めたものを社員に押し付けるよりも、次世代の幹部候補を交えて討議し、明確にした方が良い」とのアドバイスを受け、将来の幹部候補を選定して作業を進めました。また、中期ビジョンの策定も、幹部候補を中心とした「中期ビジョン策定委員会」を立ち上げて進行しました。

 

松本 中期ビジョンの策定後、人事制度もリニューアルされました。新しい人事制度への思いをお聞かせください。

 

藤尾 人事制度の再構築は、常に人員が不足している建設業界において不可欠な取り組みです。当社にも人事制度はありましたが、女性は男性よりも低い賃金体系が設定されているなど時代に合わない部分がありました。そこで、社員満足度を向上させて社内を活気付け、退職者を減らそうと人事制度の改革に着手したのです。

 

松本 改革のポイントを教えてください。

 

藤尾 新しい人事制度ではルールを明確にして透明性を高め、どの方向に向かって努力すればキャリアアップできるのかを明確にしました。5つの職種ごとに6等級から1等級の考課表を用意し、絶対評価で考課すると宣言。

 

こだわったのは仕事だけでなく「人間性」も高めてほしいという点で、等級が上がるほど経営理念に基づいた思考や行動ができて部下や後輩の見本になることを求めています。互いに尊重し合える職場をつくって社員が辞めない会社にしたいからです。

 

念願だった「社員を適正に処遇できる仕組み」は出来上がったと自負しています。今後は正しい考課ができるような考課者研修を定期的に行う計画です。

 

松本 新たな人材育成機関として開設された「CCC(コンクリートコーリングカンパニー)アカデミー」の内容をお聞かせください。

 

中元 CCCアカデミーを設立した目的は、人材の早期戦力化の推進です。これまでは新人を現場に送り出して先輩社員から仕事を教わるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)スタイルで、一人前になるのに5年くらいかかりました。

 

一方、CCCアカデミーはDVD受講型・集合型・実技型・外部研修型の4つのスタイルの教育を施し、3年で一人前に成長することを目指します。実際、アカデミー1期生は入社1年で現場へ1人で出られるようになり、成長の速さに驚いています。

 

松本 今後、取り組むべき課題は何ですか。

 

中元 多様な社員に向けたカリキュラムを充実させることです。特に既存社員へのカリキュラムはまだ作成段階で、「仕事に対する姿勢」や「新人を受け入れるための上司・先輩社員としての在り方」などは社外講師によるDVDでの教育が中心。いずれはDVDに頼らず、CCCアカデミーの受講者が自発的に社内講師に立候補していくような“善循環”を確立したいと考えています。

 

松本 アカデミーで成長した社員が講師になって「学び合い、教え合う」ラーニングカルチャーを実現させていただきたいと思います。