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コンサルティングケース
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コンサルティングケース 2020.07.31

東光ホールディングス:100年企業を目指して次世代幹部を育成

 

東光ホールディングス 代表取締役社長
東光鉄工 会長 虻川 東雄氏

 

鉱山で培った技術を基盤に多角的な事業を展開

 

東光ホールディングスは、東光鉄工(各種鋼構造物・機械装置などの設計製作、施工、保守)、東光コンピュータ・サービス(ソフトウエアのシステム設計開発)、東光保険サービス(各種保険代理店)、東光産業(産業機器・建設資材の販売、工事)で構成される東光グループの事業統括会社だ。

 

グループの中核となる東光鉄工(当時、東光製作所)は、1938年に虻川東吉氏が創業。秋田県大館市の鉱山に向けた機械や坑枠の製造・販売を行い、事業を拡大していった。

 

大学卒業後、父である東吉氏と共に事業を率いてきた東光ホールディングス社長・虻川東雄氏は、鉱山の関係者から「掘り尽くしたら鉱山はおしまい」と言われて危機感を覚え、経営の多角化と新規事業の開拓を急いだ。そして“鉱山育ち”の多様な技術を生かし、土木・建築分野や機械分野などへの事業転換に成功した。

 

東光鉄工の大きな強みは、鋼板の曲げ加工技術だ。それによって生み出された製品は、多くの鉄道・道路のトンネルやスノーシェルターに導入され、「曲げの東光」の名を轟かせている。

 

この曲げの技術を活用し、それまで困難とされていた折鋼板構造材をアーチ状に曲げることで誕生したのが「TOKOドーム」である。軽量・高強度で短工期を実現し、南極昭和基地や原子力関連施設、廃棄物最終処理施設などにも採用されている。

 

また、注目されるドローン分野にも参入し、国産ドローンの開発を推進。優れた散布性能を備えた農業用ドローンや、災害現場での情報収集・レスキューに活用できる「東光レスキュードローン」の完成も間近である。

 

現在、東光鉄工はベンダー事業やドーム事業、UAV事業(ドローン開発)など、11もの事業を展開。「事業部長を社長と位置付け、それぞれが事業開拓と販路拡大を進めています」と、東光鉄工の代表取締役社長・菅原訪順氏は語る。

 

 

東光鉄工 代表取締役社長 菅原 訪順氏

 

 

 

東光ホールディングス 常務取締役 経営企画室長
広報・人事担当 渡部 聡氏

 

 

最初の学びは使命感経営

 

タナベ経営との付き合いは長い。きっかけは地元・秋田の新聞に掲載された「ビジネスゲーム」と銘打ったセミナーの記事だった。それを目にした虻川氏が、講師を務めたタナベ経営のコンサルタントに来社を要請したのが始まりだ。

 

「最初に教えてもらったのは、使命感経営の重要性。当時は理念や指針といった概念が希薄だったので、心打たれました」と虻川氏は振り返る。菅原氏も「グループ各社の経営方針書の策定にもタナベ経営に関わってもらい、一言集約の文言作成に努めています。第三者的な立場から専門家の意見をもらえるのでとても有効です」と話す。

 

東光グループの経営理念は「高い生産性 広い社会性 深い人間性」。グループの価値観を端的に表現した見事な理念と言えよう。

 

 

ものづくりを深堀りし追求心を磨く

 

東光グループが一丸となって注力しているのが人材育成である。それは、虻川氏の過去の苦い経験に起因している。

 

「社員数が50名ほどになったとき、労働組合が結成されたことがありました。8カ月ほどで解散しましたが、結成の理由を考え抜いた末に『社員の声が私には聞こえなかったし、私の声も社員には届いていなかったのだ』と気付いたのです。社員と意思疎通を図るには、社員が会社から大事にされていると感じるような環境づくりが不可欠と考え、人材育成への投資を決めました」(虻川氏)

 

その後、同社では「事業の特化と技術の特化により、それぞれがものづくりの深掘りと追求心を磨き、強みを伸ばす」をテーマに掲げた人づくりに励んでいる。代表的な施策が、「1人1資格」を徹底する社内ライセンス制度だ。毎月5万円までの資格手当を支給し、年齢に関係なく社員の資格取得をバックアップしている。また、秋田県の溶接技術大会にも毎年参加し、同社から優勝者が多数誕生するなど、技術レベルは県内トップクラスを誇る。

 

現在、力を入れているのはマネジメント人材の育成である。東光ホールディングス常務取締役経営企画室長で広報・人事を担当する渡部聡氏は「課長職以上は社外の研修制度を活用しています。中でもタナベ経営の各種スクールやセミナー(幹部候補生スクール、戦略リーダースクール、FCCフォーラム、経営戦略セミナー)には、社員のレベルに応じて必ず参加してもらう仕組みです。さらに、定期的な社内集合教育を行い、中期経営計画の策定などにも取り組んでもらっています」と語る。

 

2018年に創業80周年を迎えた東光グループ。今後は次世代幹部を速やかに育成し、100年企業を実現できる体制づくりが不可欠だ。グループを率いる虻川氏は、「100年企業を支える人材として、自分で考え、行動し、課題を見つけ、解決するマネジメント能力を持った人材に育ってほしい」と次代を担う社員たちへエールを送る。

 

 

現在開発中の国産ドローン。新しい事業は全て、顧客の困り事に寄り添うことで生まれてきた

 

 

PROFILE

    • (株)東光ホールディングス
    • 所在地:秋田県大館市釈迦内字稲荷山下19-1
    • 設立:1993年(東光鉄工(株)の創業は1938年)
    • 売上高:92億円(グループ計、2020年2月期)
    • 従業員数:389名(グループ計、2020年4月現在)

 

 

 タナベ担当者より 

秋田県大館市に本社を置く東光グループは2018年に創業80周年を迎え、100年企業に向けて「自社製品元請受注の拡大」「技術力の向上による東光ブランドの向上」「生産性の追求」の三つをグループの成長戦略として掲げている。

 

現在は11もの事業を展開。経営トップの事業開発力と次世代幹部人材の育成が事業の多角化を実現させている。現在取り組んでいる体系的な人材育成が100年企業に向けた原動力になるはずだ。経営環境が厳しいときこそ成長のチャンスと捉える同グループの発展を期待してやまない。

 

 

経営コンサルティング本部
東北支社 副支社長
日下部 聡

 

 

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
岩谷 充史