日本は今、少子高齢化の進展と生産年齢人口の減少に直面している。持続可能な経済活動を実現するためには、性別や国籍、多様な背景を持つ人材が能力を最大限発揮できるダイバーシティー経営への転換が不可欠だ。広島県は、女性活躍推進をその一丁目一番地として位置づけ、当社と共に女性活躍推進事例集を作成した。
ご支援内容
少子高齢化社会において、人材確保・育成が急務となるなか、女性人材の活躍支援は喫緊の課題となっています。その課題にいち早く取り組んでいた広島県は、平成30年度から3年間、県認定の「広島県女性活躍推進アドバイザー」を活用した企業支援を展開してきました。しかし、多くの企業が取り組みに着手したものの、定着から効果発現に至る企業は限定的でした。
この実情を受けて、広島県は令和3年度に事業モデルを抜本的に見直しました。これまで実施していた単年度の意識改革支援から、およそ3年間にわたる継続的な伴走支援へと舵を切ったのです。具体的には広島県女性活躍推進アドバイザーによる個社診断に加え、各企業の実情に応じた課題分析とアドバイスの提示、さらには実践的な研修プログラムを組み合わせた「女性活躍推進モデル企業創出事業」を実施しました。
この取り組みにより、県内に女性活躍推進を実現した、9社のモデル企業が誕生しました。そこで、この実績を集約し、他の民間企業などへも知見を共有できるよう、取り組み事例集の制作をタナベコンサルティングへご依頼いただきました。
当社は事例集を他の企業が参考事例としやすいよう整理し、当時の状況と課題、そして施策をケースごとに分類しました。事例集は令和6年9月に発行され、現在も研修やメールマガジン、広報誌などメディアを超えて女性活躍推進の参考事例としてご活用いただいています。「すべての人材に経営力を」を提言するタナベコンサルティングでは、女性人材活躍を支援すべく、施策の企画から実施、そして今回のような成果事例集の作成までトータルサポートを実現しています。
ご支援内容のポイント
お話を伺った人

広島県 商工労働局 人的資本経営促進課 女性活躍グループ
主査 山崎 智 氏(左)
主事 藤善 慧 氏(右)
人的資本経営の核心としての多様性推進
――女性活躍推進に目を向けたのは、DE&Iのなかでもまず取り組むべきテーマが、女性活躍推進にあると考えたからです。
藤善 広島県では令和6年度、全国でも先駆的な「人的資本経営促進課」を新設し、これまで複数の部署で分散していた働き方改革、リスキリング、ダイバーシティー推進を統合して人的資本経営を冠とした組織体制を構築しました。
女性活躍グループは、この新体制において重要な役割を担っています。女性の活躍促進に関する意識啓発、企業の取り組み支援、女性の就業支援という3つの柱で事業を展開し、ダイバーシティー&インクルージョンの入り口として機能している認識です。
モデル企業を事例集にまとめることで、県内企業の女性活躍におけるロードマップ化を目指す
――各企業に合ったモデル企業を探しやすいよう、構成に綿密な設計が施されました。
山崎 課題解決に向けてタナベコンサルティングが打ち出してくださったのは、モデル企業が実施した事例の汎用化でした。事例集を単なる成功事例の羅列ではなく、他企業が自社の実情に照らして活用できる実践的なツールの開発を目指してくださったのです。
この女性活躍推進事例集がもつ最大の特徴は、取り組みテーマごとの分類と、段階的なロードマップの提示にあります。
山崎 事例集では、人事制度改革、職場環境整備、組織風土改革など、女性活躍推進の多様なアプローチを体系化し、9社の事例をテーマ別に整理してくれました。さらに各企業の取り組みを3段階のステップに分けて可視化することで、読み手企業が自社の現状に応じて参考にすべき事例を選択できる構造を構築していただけたのです。
藤善 多くの民間企業が、「女性活躍推進とはいっても、まず何から手を付けたらいいだろうか」とお悩みでいらっしゃいました。最初から立派な成果だけを見せられても、自社に適用できるとは思っていただけないのです。タナベコンサルティングは、その解決策として、ステップごとに取り組みを分けて掲載する編集方針を提案してくださいました。
その結果「我が社の実情に近い取り組み」「応用可能な施策」を読み手が簡単に判断できる、実用性の高い事例集が完成したと感じています。こうして県内企業にとって「女性活躍推進」は理想論ではなく、具体的な行動指針を持つ経営戦略となったととらえています。
山崎 さらに、モデル企業内で取り組みに参加した方や、アドバイザーの当時の苦労も含めた生の声を掲載してもらえました。おかげで、多くの企業がご覧になったとき「他社でこんな風に壁を乗り越えたなら、自社でも頑張れるかもしれない」と思っていただける資料になったと感じています。タナベコンサルティングによって、事例集を自社に役立つヒントを抽出しやすいレイアウト、構成にしていただけました。多数の方への取材も必要な業務でしたが、滞りなく進行していただきました。
事例集より。担当者着任当初の戸惑いもふくめ、率直な声が掲載されている
持続可能な成長に向けた展望
――女性活躍推進モデル企業の取組事例は、講演会やメールマガジンなど、マルチメディアに活用される資料となっています。

山崎 この事例集を発行して1年弱が経ちましたが、現在もケーススタディとして、多方面に展開されています。たとえば、広島県主催の企業経営者向け研修では、この事例集を紹介させていただきました。また、メールマガジンや商工会議所機関誌でも本事例集を紹介しています。さらには選出されたモデル企業が登壇発表されるときに、この事例集へ触れてくださることで、認知度も高まっています。
このように、「広島県女性活躍推進モデル企業取組事例」は多種多様なチャネルを通じて知見の共有に貢献してくれています。実際、この事例集を扱ったセミナーもご好評をいただいております。
藤善 今後の展望として県が描くのは、段階的な人材育成による女性管理職比率の向上ですね。そういった意味で特に注目していただきたいのが、広島県が実施している「女性管理職候補者向け研修」への応募者数が、定員を大幅に上回る状況が継続していることです。女性も突然管理職になれ、と言われても抵抗がありますよね。ですが、こうした研修で、「スキルを身に付けたり、自信をつけたい」という女性が増えており、女性活躍推進のための土壌ができている実感もあります。
また、女性だけの努力で女性活躍推進が実現できるわけではありません。広島県では、男性の育児休業取得率が全国平均を上回り続けています。男性が育児や家事にしっかり取り組めるよう、男性育児休業の取得促進を通じ、本当の意味で女性が活躍していただくための土壌をつくっていきたいと考えています。
女性活躍推進から波及して、様々な属性を包含できる社会づくりへ
――まずは県内、そして他の自治体の参考にもなれば嬉しいです。

藤善 前提として、私たちは、女性活躍推進のステージが3つに分かれると考えています。
1. 女性活躍推進の意識啓発
2. 取組への着手・定着へ向けた活動
3. 女性の就業支援
この中で、タナベコンサルティングにお力をいただいた「広島県女性活躍推進モデル企業取組事例」は2番目の「取組への着手・定着へ向けた活動」に当てはまるアクションでした。今後、事例集も活用しつつ、さらなる女性活躍推進に向け、やるべきことは山積みです。しかし、女性活躍グループの関係も非常によいので、協力しながら進めていければと考えています。
山崎 人的資本経営が企業価値創造の中核となる時代において、多様な人材の活躍は競争優位性の源泉となります。広島県の挑戦は、地域経済の持続可能な発展と、真の意味での女性活躍社会の実現に向けた重要な一歩にしていきたいです。その意味でも、モデル企業9社さんの事例がこうして可視化され、他の企業がヒントにできるモデルになったことに価値を感じています。
これからも企業と行政が連携し、体系的かつ継続的に女性活躍推進へ取り組みたいですね。そして、他の属性の方々も含めた、ダイバーシティー経営の促進にも貢献していければと思います。
――本日はありがとうございました。
PROFILE
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- 広島県(広島市中区)
- URL:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/
- (女性活躍推進モデル企業取組事例集ページ)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hcm-joseikatsuyaku/jirei-shu.html - 所在地:〒730-8511 広島県広島市中区基町10-52