コロナ禍によって世界中のフォーマットが変容を求められる中、海外のビジネス現場はどう対応し、どう変わろうとしているのか。経営者はコロナ後のニューノーマル(新常態)といかに対峙すべきか。タナベコンサルティンググループのトップである代表取締役社長の若松孝彦が、世界5カ国のビジネス専門家とZoomで緊急ディスカッションを試みた。その最終章である。
ウィズコロナ時代の持続的経営に向けたロードマップを描く本企画(全3回・特別編)の第3回は、欧州最多のコロナ感染者を抱える英国と、コロナ禍で未曾有の不況に陥ったドイツを取り上げる。コロナがもたらす課題解決に向けた多様なデジタルサービスが、社会生活と医療現場を力強くサポートする最新状況をお伝えする。
クリエーティブ・ループ・インターナショナル 共同創立者・代表 ニコラ・ピンダー 氏
2006 年、共同創立者のサイモン・プレストンとともに、英国で国際事業開発コンサルティング会社Creatives Loopを設立。国際事業の拡大と投資のスペシャリストであり、政府や官民パートナーシップを代表した貿易支援や投資促進キャンペーンの設計・実施・提供に20年以上の経験を持つ。2014年、ドイツのAHPインターナショナルとのジョイントベンチャーとして、独・ベルリンにオフィスを構えるCreatives Loop Internationalを設立し、代表取締役に就任。米・ペンシルベニア州の公認投資代理として共同プロジェクトを手掛けるなど、貿易・投資分野に実績多数。
AHPインターナショナルグループ 共同創立者・代表 ステファン・ペイカート 氏
ドイツのミュンスター大学在学中、国際貿易コンサルタントとして活動を開始。MBA(経営学修士)取得後、戦略的ビジネス開発、国際化、マーケティングおよび販売、経済開発、国内投資促進の分野で独立系コンサルタントとして25年以上の経験を積む。ドイツや欧州市場への参入支援を手掛けるAHPインターナショナルグループの代表を務めるほか、AHPインターナショナルホールディングスおよびAHPマネジメントの代表、ポーランドのAHPインターナショナル代表、米ペンシルベニア州のAHPインターナショナル共同創立者・代表を兼任。
タナベコンサルティンググループ タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦
タナベ経営グループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず、上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
英国の感染者は欧州最多
ワクチン接種の推進に尽力
若松 ワールドレポートの第3回は、英国のニコラ・ピンダー氏、ドイツのステファン・ペイカート氏とディスカッションを行います。海外企業の進出支援や貿易・投資関連の分野で多くの実績を持つお二人に、それぞれの国のビジネスの現状をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
まずは、英国における新型コロナウイルスの感染状況を教えてください。
Pinder 英国では新型コロナが猛威を振るい、2021年2月中旬には累計感染者数が400万人超、累計死者数は12万人に迫っており、どちらも欧州最多となりました。変異株の割合が急増していることも懸念されています。
イングランドでは1月5日から全域がロックダウン(都市封鎖)され、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの自治政府もロックダウンと同水準の規制を発令しました。これによって不要不急の小売事業は全て停止。住民は必要不可欠な医療の受診、食料品の購入、運動、業務上必要な場所への移動といった理由のある場合を除き、ステイホームしなくてはならない状態です。
若松 ロンドンはいち早くロックダウンした都市です。ロックダウンを行うと膨大な補償金が必要になりますが、英国政府はどのようなフォローをしていますか。また、状況を大きく変える可能性のある新型コロナワクチン接種を、世界に先駆けて実施していますね。
Pinder 英国では2021年4月まで各業界の人件費を80%まで補助。さらに小売、飲食、宿泊、観光業を対象に1物件当たり最大9000ポンド(135万円、1ポンド=150円換算)の助成策も発表しました。
しかし、ビジネス環境は悪化の一途をたどり、宿泊および飲食サービス業界では75%を超える企業の収益が減少。不動産および管理サポートサービス業界では廃業が急増しました。
このような状況の中でも光明は射しています。2020年12月8日から投与が始まった米国ファイザーとドイツ・ビオンテックの新型コロナワクチンに続いて、オックスフォード大学と英国製薬大手アストラゼネカの共同開発したワクチンの接種が1月4日から始まりました。このワクチンは摂氏2~8度で保存できることから、早期普及が期待されます。政府は2021年9月までに18歳以上の全国民がコロナワクチンを接種することを目指しています。