米・ニューヨーク市は2020年3月にドライブスルー式の新型コロナウイルス検査を開始。「密」を回避し、医療スタッフが感染する危険性を減らしながら受診者のサンプルを採取する
コロナ禍によって世界中のフォーマットが変容を求められる中、海外のビジネス現場はどう対応し、どう変わろうとしているのか。経営者はコロナ後のニューノーマル(新常態)といかに対峙すべきか。タナベ経営グループのトップである代表取締役社長の若松孝彦が、世界5カ国のビジネス専門家とZoomで緊急ディスカッションを試みた。
ウィズコロナ時代の持続的経営に向けたロードマップを描く本企画(全3回・特別編)の第1回は、世界最多の新型コロナウイルス感染者数を更新し続けている米国だ。ニューヨーク、シリコンバレー、東京をつないだディスカッションから、米国企業が生き残りを懸けてDXを推進し、新たなビジネスチャンスを生み出している最新状況をお伝えする。
ブルックス・ブラザーズやハーツも経営破綻
若松 Zoom越しではありますが、米国訪問の際にお世話になったお二人の元気な顔を見ることができて安心しました。クロスボーダービジネスから現地ビジネスにまで精通しておられるので、今回はリアルな現状をお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
米国は大統領選挙が終わりましたね。まずは、その後も拡大している新型コロナウイルス感染状況について教えてください。
Scharf 感染者数は2020年12月12日に累計1600万人、死亡者数は12月14日に同30万人に達しました(米ジョンズ・ホプキンス大学)。新規感染者数は、12月上旬に1日当たり約20万人のペースで急増。夏の終わりに一度安定したものの、主要都市から離れた地域での感染が多発するなどして増加の一途をたどっています。特に大きな打撃を受けているのは、高齢者や介護施設の入居者です。
皆木 12月9日には1日当たり死亡者数が3000人を超えました。これは、2001年9月11日に起きた「アメリカ同時多発テロ事件」による死亡者数(3000人弱)を上回ります。
若松 日本は12月15日現在で感染者数の累計が18万人超、死亡者数が同2600人超(厚生労働省)に及び、日本も感染の第3波のさなかにありますが、米国はまさしく危機的状況と言えます。企業はどのような状況ですか。
Scharf 新型コロナは、多くの企業を容赦なく痛め続けています。有名紳士服ブランドのブルックス・ブラザーズや大手レンタカー会社のハーツなどがパンデミック以降に経営破綻(米連邦破産法11条の適用を申請)。2020年の第3四半期までに倒産した資産1億ドル以上の企業数は、第1四半期34社、第2四半期55社、第3四半期49社に上りました。2005~2019年の各四半期平均が19社なので、状況の深刻さをお分かりいただけるでしょう。大型倒産の半数以上が「鉱業、石油・ガス」と「小売業」に属する企業です。国内の中小企業への影響はさらに大きく、多くの企業が永久に扉を閉ざすこととなりました。
若松 米国は全企業の99.7%を中小企業が占めますから、経済悪化は避けようがありません。景気回復の兆しは見えますか。
Scharf 2020年の米大統領選挙後も株式市場は好調を維持しており、投資家が6カ月先の活況を見据えていることを示唆しています。新型コロナのワクチン開発も急速に進んでおり、FDA(米国食品医薬品局)は12月11日にファイザーとビオンテックが開発したワクチンの緊急使用を許可。14日からワクチン接種が始まりました。これにより、6~8カ月以内にウイルス感染を制御できるようになるのでは、との期待が高まっています。