「ビジネス版のSNS」と説明されることも多いLinkedInは、2002年に共同創業者であるReid Ho?man氏によって開発され、翌年5月5日に正式リリースされたサービスだ。現在、全世界でおよそ5.6億人が利用しており、約60%が米国外からの登録である。LinkedInには誰でも無料で登録でき、これまでの職歴や自分の有するスキルなどを掲載する。自分の経歴やスキルを企業にPRできる一方、その情報を基に企業側が検索し、自社に加わってほしいスキルや経歴を持つ人材に連絡を取ることもできる。日本国内では約210万人ほどの利用者がいる。
LinkedInのビジネスモデルは、採用ソリューション、広告ソリューション、個人向けのプレミアムプラン(購読料)の3つの収益源から構成されている。2016年12月、LinkedInは米国Microsoftによって262億ドルで買収された。
現在は、CEOのJe?Weiner氏を筆頭に、Yahoo!、Google、Microsoft、TiVo、PayPal、Electronic Artsで実績を持つ役員によって運営されているLinkedIn。2015年にオンラインの教育プログラムを提供していたLynda.comを買収し、個人の能力を高めるためのラーニング分野にも力を入れている。
「企業が抱える人の問題としては、業務上で必要とされるスキルと従業員の現在持っているスキルにギャップがあったり、リーダーシップの能力を開発する必要があったり、また新しい課題を与えて従業員のモチベーションを高め、離職率を抑えたい、ということもあります。そのような課題を解決するためにラーニングシステムを活用していただいています」と話すのは教育分野を担当するMatt Clugston氏。
ラーニングの主な目的について、「変化の激しい時代、自分の持っているスキルがあっという間に陳腐化してしまうという現実があります。(私たちは)継続して新しいスキルを得る必要があり、それをサポートするサービスです。スキルにはプログラミングなどのハードスキルと人との接し方やチームワークというようなソフトスキルがあり、両方のコンテンツを用意しています。」とClugston氏は説明する。現在は6000種類ほどのオンラインコースを有しているという。
「自分がスキルアップすると感じられれば離職率が下がるといわれており、私たちはこのようなサービスを提供しています。また、講師がいて、一斉に学ぶというよりは、オンラインで各自が好きな時間に学べるという方が使われる率が高まっています」と同氏。
ラーニングには大きく2種類があるという。「ちょっとこれが分からない」というときに行う2分程度の短い学習「マイクロラーニング」と、しっかり時間をかけて学ぶ「マクロラーニング」というものである。今米国ではマイクロラーニングに注目が集まっているようだ。
Khan Academy
サンフランシスコから少し南下した、気候の良い地域「マウンテン・ビュー」に拠点を設けるのは「Khan Academy」。オンラインのラーニングサービスを提供しており、登録者数は全世界で7000万~9000万人ほど。月に2時間以上使用するアクティブユーザーの数も100万人だ。「算数」「数学」「理科」「歴史」といった教科から、「コンピュータープログラミング」「ミクロ経済」「マクロ経済」や「SAT」などの統一テスト対策、「貯金の仕方、予算の立て方」「賃貸物件と購入物件はどっちが得?」という一般向けのコンテンツまで、登録さえすれば誰でも無料で学習することができる。
全年齢を対象としているが、メインターゲットは5~24歳の若年層。現在36以上の言語でサービスを提供している(言語により対応教科は異なる)。個人で学ぶこともできるが、学校などの集団単位で使用することも可能だ。コーチ(先生)を登録すると、コーチは自分の指導する児童・生徒の学習状況をWeb上で把握することができる。
「教材は全て内部で作成しています。博士号を持った担当者が、専門知識や(博士号を取る過程で得た)教える経験を生かしてコンテンツ作りをしています」と説明するのは、シニア・インターナショナルマーケットマネジャーのIrene Shao氏。
驚いたことに、Khan AcademyはNPOであり、資金は全て寄付金で賄われているのだ。寄付者にはバンク・オブ・アメリカやビル&メリンダ・ゲイツ財団をはじめ、Google、ウォルト・ディズニー・カンパニー、AT&Tなどが名を連ねている。
Khan Academyは2005年、創業者でCEOのSalman Khan氏が、自分の従兄弟を手助けするために作ったのが初め。同氏は現在も、動画コンテンツを自ら手掛けているという。Salman氏はMITの3つの学位と、ハーバードのMBAを持つ。