その他 2023.12.04

未来戦略フォーラム2023(ゲスト:塩野義製薬、ユナイテッドアローズ、グローウィン・パートナーズ)

 

 

タナベコンサルティングは2023年10月26日、「未来戦略フォーラム2023」を開催。事業ポートフォリオの再編と組織構造改革、それに伴う人事制度の統合や運用を重点テーマに、10年先の未来をゴールに設定して変革を続ける3社の取り組みと、タナベコンサルティングによる講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

 

 

ユナイテッドアローズ:事業活動の変遷と長期ビジョン実現に向けた事業ポートフォリオ再編

 

 

株式会社ユナイテッドアローズ

執行役員 CSO 経営戦略本部 本部長

丹 智司氏

異業種での経理経験を経て、1998年ユナイテッドアローズ入社。経理部門での職務の後、2002年にIR(インベスター・リレーションズ)部門長へ異動。以降、「東京証券取引所 企業価値向上大賞(2012年)」「ポーター賞(2013年)」「日本IR協議会 IR優良企業大賞(2014年)」などの受賞に貢献。現在、執行役員としてIR、経営企画、サステナビリティ、店舗開発を担当。

 

 

ユナイテッドアローズの歩み

 

ユナイテッドアローズグループは、創業から展開しているユナイテッドアローズに加え、ビューティ & ユース、グリーンレーベル リラクシング、コーエンといったストアブランドを展開する衣料品小売業である。当社は「セレクトショップ」と呼ばれる業態であり、売上構成比は、自社企画のPB(プライベートブランド)商品が全体の約60%、仕入商品が約40%を占める。2023年3月期の連結売上高は前期比9.9%増の1301億3500万円。2023年3月現在で国内に290店舗、海外に8店舗を構え、従業員数は3915名である。

 

1989年の創業から当初10年間は、「トレンドマーケット」と社内で位置付けている客単価2~3万円程度の高価格帯マーケットに向け、大都市部の路面店のみで店舗を展開していた。1999年以降は、同じく社内で「ミッドトレンドマーケット」と位置付けている客単価1万円前後の中価格帯マーケットに向け、グリーンレーベル リラクシングを創製した。また、販路としても従来の路面店に加え、ルミネといった駅ビルやZOZOTOWNといったECマーケットに参入した。これは当時の高価格帯に属する大手アパレル企業として初の取り組みであり、当社のその後の成長に大きな影響を与えた。さらに、相手企業にとっての成長転機ももたらした。その後も、社内で「ニュートレンドマーケット」と位置付けている客単価5,000円前後のマーケットに向け、手の届きやすいブランド(コーエン)を開発、郊外の大型ショッピングモールを中心に出店するなど、販路を着実に拡大している。

 

 

【図表1】「国内衣料品小売」という単一セグメントの中で「マーケット」と「販路」を拡大

※SC=ショッピングセンター 出所:ユナイテッドアローズ講演資料

 

 

販路の拡大に伴い、売上構成も変化した。1998年までトレンドマーケット以上での売り上げが100%を占めていたが、現在は60%となり、40%がミッドトレンドおよびニュートレンドマーケットにおける売り上げになった。チャネル別に売上構成をみると、1998年までは路面店が100%だったが現在は5~10%程度で、駅ビル店が約70%、ECが約25%を占めている。販路拡大の中で、多くのストアブランドの撤退も経験したが、国内衣料品という1つの市場において右肩上がりの成長を遂げてきた。

 

 

長期ビジョン実現に向けた前中期における取り組みと課題

 

当社は、2032年に向けて「高感度・高付加価値ライフスタイル提供グループ」という長期ビジョンを掲げている。従来のアパレル市場における大量生産・大量消費を前提とした拡大志向を脱して、より広範なライフスタイル市場へ向け、高感度・高付加価値型の商品やサービスの提供をしていく方針である。

 

策定に当たっては、今後の社会情勢や消費環境の変化に柔軟に対応するため、経営陣で1年以上の時間をかけ、密な議論を行った。長期ビジョンでは前期末時点の売上高から約1200億円の増収を掲げており、既存のアパレル事業だけでなく、関連事業やアパレル以外の事業成長と海外進出によって目標達成を目指している。

 

 

【図表2】長期財務目標

出所:ユナイテッドアローズ講演資料

 

 

長期ビジョンの発表前、2020~2022年の中期経営計画(中計)は、コロナ禍という非常事態に対応するため「危機に打ち勝ち、稼ぐ力を取り戻す」というものだった。この計画に即して、不採算な子会社や事業店舗の見極めと在庫の効率化が実行され、収益構造の抜本的な見直しが進んだ。

 

また、株式上場以来、事業部門・ストアブランドを軸とした「事業部制」組織によって事業特性を生かした運営を行っていたが、専門性・生産性を高めるため、これを「機能性」組織へと再編した。今後もより柔軟に戦略を遂行するため、さらなる組織変更も視野に入れている。

 

長期ビジョンの実現に当たっては、次の4つが現状の課題となっている。

 

(1)年齢軸
既存の主要顧客が30代・40代に集中しており、20代の顧客が少ないことが課題である。ただし、既存の20代顧客の購買単価は高い傾向にあるため、潜在顧客としてのポテンシャルがあると考えられる。

 

(2)ファッションテイスト軸
既存ブランドがトラッド・コンサバティブなテイストに集中しているという課題がある。衣料品市場は縮小しつつあるが、これまで自社での展開の少なかったモードテイストや強めのフェミニンテイストなど新たなテイスト軸の拡大により、国内アパレル市場においても成長余地があると見ている。

 

(3)業容における課題
事業ドメイン(領域)の大半が国内のファッション市場であり、さらにビジネスウェアや外出着がメインのため、コロナ禍においては非常に苦戦した。安定的な成長を実現するためには、アパレル以外の市場や海外市場へ進出し、事業の多角化を進める必要がある。

 

(4)デジタル技術による効率化、インフラ整備
DXを推進していくことで、効率化やインフラ整備を進めていく。

 

 

新たな中期計画と事業ポートフォリオの展開

 

ユナイテッドアローズは、長期ビジョンと同時に2023~2025年の新たな中計も発表している。その中で、①ブランドイメージを刷新していくことで既存事業を成長させる「クリエイティビティ戦略」、②アパレルや国内に限らない事業開発を行う土台をつくることで自社全体の中長期的な成長を目指す「マルチ戦略」、③OMO(オンラインとオフラインの統合)の推進やサプライチェーンの最適化を行う「デジタル戦略」、という3つの主要戦略を示している。これらを用いて、長期ビジョンの実現に向けた課題を解決していく。

 

当社は、新たな中計期間で得たキャッシュの使途予定を示すため、キャピタルアロケーションの外部開示も行った(【図表3】)。①実店舗投資、②OMO関連投資、③インフラ投資、④その他(オフィス設備等)は、いずれも成長戦略の一環として行う。中でも、①の実店舗投資については、半分以上が新規事業への投資となる見込みである。

 

 

【図表3】キャピタルアロケーション

出所:ユナイテッドアローズ講演資料

 

 

また、長期ビジョンとしての財務目標を実現するために、新たな事業ポートフォリオの展開も目指す(【図表4】)。既存顧客に向けては、これまで本格展開していなかったスポーツ・ウェルネスといったアパレル派生事業や、ビューティや住関連といった非アパレル事業の開発を進めていくことで、LTV(顧客生涯価値)の拡大を目指す。

 

また、当社の主力事業であるアパレル分野では、従来なかったテイストの商品や若い年齢層に向けた商品を開発することで、新規顧客の獲得を進めていく。

 

 

【図表4】事業ポートフォリオの拡大

出所:ユナイテッドアローズ講演資料

 

 

戦略推進に向けた体制づくり

 

中計で示した戦略や事業ポートフォリオ再編を推進するための体制として、社長が議長を務め、業務執行取締役が全員参加する「中期経営計画策定委員会」を設置している。この委員会は、月1、2回の討議を通じて要決議事項を取締役会に上程する。これまでは中計策定および公表を終えるとともに解散していたが、今回は策定以降も進捗管理のために継続して討議を続けている。

 

委員会には、必要に応じて執行役員が参加する。各戦略には執行役員が推進担当としてアサインされており、新規事業の場合はコンセプトやターゲット、スケジュール、責任者のアサインなどを行う。

 

推進担当役員は四半期ごとに中計委員会に進捗を報告、委員会は確認が必要な事項を申し送ることで、着実な戦略の推進を促す。推進担当には取締役も含まれ、このプロセスを定期的に取締役会に報告している。

 

2023年10月からは、本部長を取締役とする「開発本部」を新設し、新規事業開発を確実に推進させる組織体制を整えている。これにより、中計の実行性が高まることが期待される。

 

事業ポートフォリオ再編に際しては、①長期ビジョンの設計とその実現に向けた事業構造の変革、②長期ビジョンの実現や中計を実行するための推進体制と仕組みの構築、③新規事業開発風土の醸成、の3点が重要である。