その他 2022.06.15

「HR EXPO」(2022年)から見る3つのHRトレンド

 

2022年5月11~13日、東京ビッグサイトにて開催され、500社が出展した日本最大の管理部門向け展示会「第17回[東京]総務・人事・経理Week春」(RX Japan主催)。うち、約3万2000名が来場した「第10回 HR EXPO(人事労務・教育・採用)」からうかがえる日本のHRにおけるトレンドと課題をリポートする。

 

2022年のHRトレンド

キーワードとなるのは、次の3点だ。
(1)可視化
(2)エンゲージメント
(3)マネジメント

 

この3つはコロナ禍前からトレンドとなっていたキーワードであり、経営層・人事担当者にとって潜在的な重要課題であったが、抜本的な改革には至っていなかった。なぜなら、HRテックに対応できる企業は多くなかったからである。

 

コロナ禍を経て、ワークスタイルの変化や生産性課題の顕在化、DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流に伴い、検討すべき課題が複雑化したことにより、HRテックの有用性が再認識され、重要な経営課題として顕在化した。つまり、HRテックは、「あったほうが良い」ものから「なくてはならない」ものへと変わったのである。

 

今回のHR EXPOにおいても、HRテック企業が中心となり、多くの製品・サービス出展されていた。特筆すべきは、HRマーケットにおけるスタートアップ企業が多く生まれていることだろう。

 

全ての事業の目的は顧客の課題解決である。逆説的に考えると、マーケットに課題があるから事業が生まれる。すなわち、HRという領域においてスタートアップ企業が数多く誕生していることこそが、HRにおける課題が顕在化・複雑化していることの証しと言えよう。

 

 

3つのキーワードについての考察

(1)可視化
出展ブースを見渡したとき、特に目立ったのが「可視化」というキーワードだ。HRにおけるさまざまなシチュエーションで用いられており、ニーズが高いことが分かる。出展傾向を分類すると、次の5つだった。
①業務の可視化
②離職理由の可視化
③働き方の可視化
④従業員思考の可視化
⑤人材への投資対効果

 

興味深いのは、今まで現場に委ねられていた課題が「人事の課題」として認識されている点である。

 

社員の業務は上司が決めるのに、社員の離職は現場のせいにされ、社員の育成やマインドセットは現場の育成担当者に一任される。それが従来の組織だった。しかし今、“マネジメント”という領域が人事の業務として集約・一元化され、全社的な戦略課題として認識され始めている。このことが、可視化がトレンドになる背景と言えよう。

 

HRテックによって可視化が進み、今までブラックボックスだった業務や経験則、感覚でしかなかった課題が、定量的に分かるようになった。その半面、可視化の域を出ていないのが現状だ。

 

可視化されたデータを基に課題へ優先順位を付け、解決するには人の手が必要となる。今後はHRテック導入により、可視化されたデータをどのように生かしていくのかが人事部門の主な課題となっていくだろう。