※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、ビジネスモデルを再構築したり、収益構造を改革したりしようとしている企業は少なくない。事業戦略推進を加速化させるため、生産性・専門性の高い人材を早期育成する必要がある。
コロナ禍で一気に普及したオンライン研修や動画の活用だが、効果・反応をあまり感じられないといった声を聞く。ニューノーマルな時代に対応する新しい人材育成のポイントとして、次の3つが挙げられる。。
経営理念・ミッション、中長期ビジョン・計画、単年度経営方針に基づく、「求める人材像」を明確にして運用。
1日でインプットとアウトプットを行う従来の研修とは異なり、ブレンドラーニングではあらかじめ動画を見てインプットし、その後にオンライン研修を行い、また職場で実践(アウトプット)する。生産性が高く戦略的かつ効果的な学習方法である。
アンケートで満足度、テストで理解度、レポートで実践度、人事考課で貢献度を測るなど、効果を測定できる仕組みをつくる。測定結果を基に、研修内容の見直しや受講者自身の習得状況の把握へとつなげる。
ニューノーマルな時代の人材育成で大切なのは、教え学び合う企業風土を醸成させることである。次の4つを意識していただきたい。
全社一体となって運用体制・受講者支援体制を整える。
社内講師の活用により「組織力」「採用力」の双方を高める。
社内大学を人事制度と連動させ、目標設定や育成計画の基準として上司と部下が共有する。
全社員への周知・認知を行って啓もう活動を行う。
人事部に任せきりにせず、ぜひ経営者自らが率先して新たな人材育成に挑んでいただきたい。
株式会社タナベ経営
HRコンサルティング東京本部 本部長代理
盛田 恵介
2001年タナベ経営新卒入社。セミナー責任者を経てコンサルティングに携わる。2021年より、HRコンサルティングティング東京本部 本部長代理兼人材育成研究会リーダー。人づくりをデザインする総合プロデューサーとして、中堅・中小企業の人事・育成制度構築から運用に至るまでサポートし、中でも様々な業種・業態の企業内大学設立に実績を有する。
1.アズビルに必要な人材像(能力開発の基本方針 2008年度)
2.アズビル・アカデミー(2012年設立)の機能
3.アズビル・アカデミー3つの約束
4.特長
5.主要施策
(1)社員育成(アズビルグループ全員の育成)
(2)ソリューション教育
(3)技術・技術の伝承
(4)キャリア形成
アズビル株式会社
アズビル・アカデミー 学長
八木 博氏
1989年山武ハネウエル(現アズビル)入社。デバイスの開発・生産などを経て、2011年より人材開発に携わる。2012年11月のアズビル・アカデミー設立より、現在まで在籍。
1.JESCOアカデミーの目的
(1)技術の伝承、育成スピードアップ
2.JESCOアカデミーの概要
(1)デジタルで学ぶ(ウェブ動画、デジタルマニュアル)
(2)リアルで学ぶ
2018年6月
社内での検討開始
2020年2月
設立プロジェクトの始動
2020年2~3月
実態調査
①理念・ビジョン・人に対する考え方(ヒアリング)
②スキル(知識・能力)の棚卸し
③優秀人材の特性(ヒアリング)・若手社員アンケート
④人事制度・教育制度分析(マニュアルなど資料類)
⇒アカデミー設立の方向性
2020年3月末
役員検討会にて決定
2020年4~5月
育成内容&ストーリーの作成
①アカデミー設立の目的・重点課題決定
②求める人材像・キャリアステップの決定
③カリキュラムの選定、コンテンツ案、担当講師の決定
④年間カリキュラムおよび詳細の策定
⑤成長イメージの設計
2020年5月末
育成内容&ストーリー決定
2020年6月~
(1)コンテンツづくり
①講師育成
②各講座のレジュメづくり
③Web 講座撮影
(2)運営体制づくり
①事務局・委員会体制の確立
②教育制度と人事制度の連携検討
③アカデミー運営・受講フローの策定
④JESCO アカデミークラウドの構築
2020年10月
プレ開校
2021年4月
本開校
4.今後の狙い
(1)現場力と人間力を高めるコンテンツの充実化
(2)オープンアカデミー化へ
JESCOホールディングス株式会社
人材開発部 リクルート課
下村 孝志氏
2015年JESCOホールディングス株式会社入社。前職は化粧品メーカー人事部門に所属、人事・教育制度の構築に取り組んだ。JESCOアカデミーでは、事務局として導入に携わる。
社会インフラを現場でつくり、支える専門的な技術・技能の伝承と人材育成
2.「KDSアカデミー」を社内に浸透させるための取り組み
(1)社員に「KDSアカデミー」に携わってもらうため3つの組織を立ち上げた
(2)総務部内の研修課を「教育アカデミー部」に
3.「学びのデジタル化」のメリット
(1)時間・場所を問わず、深く広く技術を学べる
(2)若い社員は、デジタルの学びの方が親しみやすい
(3)技術や仕事の仕方を高いレベルで均質化
4.ブレンドラーニングについて
(1)概要
実践的なリアルの集合研修と、多様な技術・技能に触れられるデジタル動画。両方の良い所を取って、より効率的で効果的な教育が可能に
(2)活用例
デジタル動画教材を見て頭の中で作業内容をイメージしてから、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で実技訓練を受ける。訓練後、自信のない内容は動画を見直す
(3)社内へ浸透させた方法
育成の目的やカリキュラムをまとめた冊子「KDSアカデミーブック」やポスターなどでインナーブランディングを行った
5.今後の展望
(1)新入社員以外のミドル層・幹部層への教育でアカデミーを活用
(2)実技訓練のための施設を造りたい
(3)現場の知恵を取り入れながら、社員みんなが教え、学び合い、仕事が楽しくなる社風づくり
JR九州電気システム株式会社
代表取締役社長
小林 宰氏
1985年日本国有鉄道入社。民営化に伴いスタートしたJR九州において、主に車両・運輸・サービスの事業に従事し、九州新幹線開業に携わる。2018年 JR九州電気システム代表取締役社長に就任。「明日をつなぎ 笑顔と未来をつなぐ」NEXT KDSを掲げ、KDSアカデミーをはじめとした企業変革に取り組んでいる。
ニューノーマル時代における人材育成について、今回ご紹介した先進事例3社の共通ポイントは、「人」中心の経営をしていることだ。社員の成長が企業の成長につながるという信念を持って戦略的な投資を行っている。
特定の階層・特定の人材だけでなく全社員の成長・活躍を真剣に考える。
自らのキャリアコースを自らが決め、自身に必要なスキル・能力を自ら認識し、自発的にその習得に取り組む「自立型人材」を育成。
人材育成に関するメッセージ(信念)を発信・実現し、「共感」を得ることでエンゲージメント(従業員の会社に対する愛着心や思い入れ)が高まる。
ニューノーマル時代の人材育成に向け、まずは、社員が成長する価値(社会・会社・自身に何をもたらすか)、求める人材像、具体的な支援内容を明確にしていただきたい。
株式会社タナベ経営
執行役員
HRコンサルティング東京本部長
川島 克也
2001年タナベ経営入社。2020年より執行役員。経営全般からマーケティング戦略構築、企業の独自性を生かした人事戦略の構築など、幅広いコンサルティング分野で活躍中。企業の競争力向上に向けた戦略構築と、強みを生かす人事戦略の連携により、数多くの優良企業の成長を実現している。