グループシナジーを生み出す5つのポイントを学ぶ
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。
経営・市場環境の変化に向けた迅速な対応と事業承継(後継者不足)問題により、ホールディングス・グループ経営の必要性が高まっている。組織・体制を抜本的に改革するチャンスと捉え、マーケット直結の変化対応体制をつくっていくことが重要である。
収益はソリューション(商品・サービス)の数と大きさで変わるため、ミッション(顧客価値)を軸に、ソリューションを提供する事業・事業会社の数を素早く増やしていけるグループ経営が今の時代に適している。
加えて、持続的成長の実現には、経営者育成の継続(存続の技術)と、M&Aを含むフレキシブルな戦略判断や新事業の創造(成長の技術)を可能とするホールディング経営が最適である。
グループ本社(ホールディングカンパニー)が司令塔となり、共通プラットフォーム機能を発揮してグループシナジーを生み出すために強化すべき5つのテーマは、下図の通りである。
事業ポートフォリオの最適化に向けて事業評価指標を設定し、ROIC(投下資本利益率)を活用して企業価値を向上させるグループ経営の仕組みを構築していただきたい。
株式会社タナベ経営
ファンクションコンサルティング東京本部長
鈴村 幸宏
メガバンクにて融資・外為・デリバティブ等法人担当を経て、2005年タナベ経営入社。2020年よりファンクションコンサルティング東京本部長兼戦略CFO研究会リーダー。経営戦略・収益戦略を中心に幅広いコンサルティングを展開。企業を赤字体質から黒字体質にV字回復させる収益構造改革、ホールディングス化とグループ経営推進支援、ファイナンス視点による企業価値向上、投資判断、M&A支援の実績多数。
1.CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)の役割
CFOとは「財務部門の責任者」ではなく、「経営者(戦略実行・業績向上)のビジネスパートナー」。米国企業には、CFOの傘下にFP&A(Financial Planning & Analysis)という部門があり、管理会計やコーポレート・ファイナンス(企業財務)、事業戦略などの知識をベースに経営の意思決定を支えている。
2.日本企業でFP&Aが広まらない2つの要因
(1)本社内での経営企画部門と経理・財務部門の壁
(2)本社と事業部(事業会社)の壁
3.グローバル企業のマネジメントコントロールシステム
経営管理プロセスは計画と統制のプロセスであり、①戦略計画、②マネジメント・コントロール、③オペレーション・コントロールで構成されている。
いかに本社マネジャーを管理会計で評価しながら動かすかが重要。
4.グローバル企業におけるFP&A組織の2つの革新
(1)コントローラー制度の導入(事業部制を支える仕組み)
(2)コントローラー組織がFP&A組織と経理組織に分化
5.FP&Aの12原則
(1)基盤を形作る5つの原則
戦略・予算策定し、PDCAサイクルを回す。
(2)当事者意識を強化する文化を作る3つの原則
全社目標を具体的に管理職や社員へ落とし込み、成果報酬と結び付ける。
(3)FP&Aをさらに高い次元へ進める4つの原則
KPI(重要業績評価指標)に落とし込み、達成のためのプロジェクトを立ち上げ成果報酬に結び付ける。
一般社団法人日本CFO協会
FP&Aプログラム運営委員会 委員長
株式会社常陽銀行 社外取締役
石橋 善一郎氏
外資系企業および日本企業でFP&Aプロフェッショナルとしてのキャリアを歩む。インテル日本法人、D&Mホールディングス株式会社、日本トイザらス株式会社でCFOとして勤務。米国管理会計士協会のグローバルボードおよび東京支部の理事を務める。東北大学会計大学院で教授、早稲田大学、一橋大学、相模女子大学、筑波大学の大学院で非常勤講師を歴任。
1.ホールディングス経営のデメリット
(1)グループ全体の方針に対し、事業会社間で対立が起こる場合がある
(2)会社間の部門などが重複し、管理コストが増加する
(3)事業会社が都合の悪い情報を親会社に隠す可能性がある
(4)想定外の負荷がかかる可能性がある
⇒デメリットを克服できるような仕組みの設計・構築が重要。
2.グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進
(1)物流の生産性向上(システムの刷新、テクノロジーの活用)
(2)スマートフォンで手軽に使えるクラウド業務システムなど
3.グループの弱みを克服し、強みを極める取り組み
(1)弱みであったマーケティング手法、専門性、人事関連への資源配分
①営業強化(HPリニューアル、テレマーケティングなど)
②採用強化とブランディング(人事制度改革、福利厚生充実、グループキャリア育成)
(2)強みを極め、ダントツの強みへ
①グループ合同センターの稼働
②グループ顧客情報の連携とデータベース統一
東京システム運輸ホールディングス株式会社
専務取締役 執行役員
細川 武紀氏
1991年東京システム運輸ホールディングス株式会社入社。物流現場5年、営業5年、経理~財務・税務実務経験10年。以降、経営企画、不動産開発事業部部長を兼任している。中小企業用CFOコンサルティング資格を保有し、グループの中期経営計画チームの総責任者を担う。また、グループの不動産開発に基づくキャッシュフロー事業計画を得意としている。
グループ経営とは、複数の企業(事業)がグループとして活動することにより競争力を高める経営スタイルである。分社化やM&Aでグループ会社(事業会社)数を増やすことがグループ経営とは言えない。
資本的なつながりだけでなく、本当の意味でのグループ経営を実践していく上では、グループ会社をコントロールするための経営システムの導入が必要だ。特に、海外子会社を有している企業や上場企業レベルの体制構築を目指す企業には不可欠である。
グループ経営システムに必要な5つのテーマを設定し、グループ本社のプラットフォームを通じて経営のPDCAを回す体制を仕組みとして構築することによって、さらなる企業の成長とレベルアップを目指していただきたい。
株式会社タナベ経営
執行役員
ファンクションコンサルティング大阪本部長
福元 章士
2007年タナベ経営入社。2020年執行役員大阪ファンクションコンサルティング本部長。収益・財務戦略を専門分野として、建設、住宅、小売、自動車部品製造業など幅広い業界でコンサルティングを展開。中堅・中小企業において、企業再生、事業承継、組織再編などを手掛けた実績多数。モットーは「現場で把握する“生きた数字”の背景を理解し物事を考えること」。