FCC(ファーストコールカンパニー:100年先も顧客から真っ先に声をかけられる会社)実現を支援する、経営者のための戦略プラットフォーム「トップマネジメントカンファレンス(タナベコンサルティング主催)」。第4期第2回(2026年6月開催、テーマ「ブレイクスルー戦略」)では、株式会社光貴 代表取締役社長の斉藤政美氏にご講演いただいた。

株式会社光貴 代表取締役社長 斉藤 政美 氏
証券マンから沖縄の経営者へ
私は証券会社の出身です。野村證券に入社し、リテール営業を経て、平成元年からはIB(インベストメントバンキング)業務に携わり、IPOや上場会社のファイナンス、M&A、事業承継などを手掛けてきました。その後、外資系証券を経てみずほ証券に移り、本社部長として全国の上場会社向けIBビジネスを推進する部隊を4人で立ち上げ、6年間で120人・収益約7倍の組織に育てました。みずほ証券を退いた後、社外取締役や顧問を務めていた折に光貴のオーナーから「常勤で来てくれないか」とお声掛けをいただき、入社して今年で10年。最初の5年は常務を務め、5年前から社長を務めています。
当社は沖縄県宜野湾市に本社を置き、創業33年。auショップを運営する移動体通信事業と、ブライダル事業を展開しています。携帯ショップは沖縄・福岡・長崎で計24店舗、ブライダルは沖縄・京都・岡山の計5施設。売上高は約77億円、従業員は約200名です。auの代理店としては沖縄県で販売数・顧客満足度・従業員満足度の「三冠」を5年ほど続けています。
上場すれば「正しい経営」ができるようになる
当社は2025年3月31日、FPM(福岡証券取引所 Fukuoka PRO Market)に上場しました。私の持論は「企業は上場できるのであれば、上場した方がよい」です。証券会社時代に100社以上のIPO案件に関わりましたが、「上場しない方がよかった」と言った経営者は一人もいません。上場することで会社全体の管理面がきちんとし、きちんとした経営が行えるようになる。そして対外的な信用力も増大する。この点が極めて大きいポイントです。
正直に申し上げれば、かつての当社は、業務上の意思決定を全てオーナー夫妻が行う、典型的なオーナー企業でした。今振り返れば、そんな体制で上場を目指していたのですから、ガバナンスや組織運営の面では、かなり問題があったと思います。ただ、大事なのは、こうした点を「本当に直す気があるのか」「どこまできちんとできるのか」です。私は常務時代の5年間、証券会社や監査法人とともに膨大な課題を一つずつ直していきました。私は雇われ社長ですから、どこまで踏み込んでよいかは問題ごとに微妙に違い、時間もかかります。しかし幸い、オーナー夫妻は最終的に「上場会社になる」道を選んでくださり、今ではまったく違う会社になっています。
上場する最大のメリットは、会計上の数値にしても会社の意思決定にしても、事実に基づき、オーナーの独断によらず、客観的かつ組織的に経営できるようになること。逆に言えばデメリットは、経営者が好きなように会社を扱う恣意的な経営ができなくなることです。これがいわゆる、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーへの脱皮なのだと思います。かつて20%あった離職率は今では5%程度まで下がり、従業員も「良い会社になった」と言ってくれるようになりました。
なぜ福岡プロマーケット(FPM)だったのか
当社は成長性が飛び抜けて高いビジネスモデルではないため、東証グロースではなく東証スタンダードへの上場を考えていました。ところが数年前の市場改革で上場基準が引き上げられ、当社の規模では維持が苦しいだろうと感じていました。そこで福岡証券取引所に飛び込みで訪問して相談し、Q-Boardに目標を切り替えて準備を進めていたところ、福岡にもプロマーケットができることが分かりました。当社の従業員は開示をはじめとする上場会社の「お作法」をまったく知りませんでしたから、まず会社として慣れるべきだと考え、「上場会社としてのステータス」の確保を優先してFPMに変更したのです。監査法人の監査が1期分でよく、スピード感を持って早期に上場できることも決め手でした。
FPMは資金調達面では一般市場に比べてやや厳しいのですが、当社は借入額を上回る現預金を持つ実質無借金の状態でしたので割り切りました。実際に上場すると、こちらがお願いしたわけでもないのにメインバンクからは借入枠を倍にしていただき、金利についても「上場会社ならこのレートで」と下げてくれました。公募価格は5100円。当時、沖縄県の上場会社9社の中で一番高い値段です。従業員持株会の会員も大変喜んでおり、当社に20年勤めた一般事務の女性社員は財産が3倍になり、退職金どころではない金額を手にしました。またプロマーケットは株価が日々変動しないため、経営が株価に左右されず、安心して経営に専念できます。中堅・中小企業にとって、まずプロマーケットに上場するのは大変よい選択肢だと思います。
なお、上場準備で証券会社や監査法人の経験者を新規採用する際は十分な注意が必要です。IPO準備会社を渡り歩き、何も知らない事業会社を食い物にする人材もいます。必ず信用のおける方を選んでください。当社は私に経験があったため、新規採用はせず既存社員を指導して対応しました。また監査法人の選定は「監査難民」という言葉があるほど大変です。大手は費用が非常に高いうえ積極的に受けたがらない傾向があり、中小は費用を抑えられますが品質面も含めた検討が必要です。上場関連コストはF-Adviserや主幹事証券、監査法人などで年間計3000万円以上。この費用が払えないようであれば上場は難しい、ということでもあります。
信用力がM&Aを引き寄せる
上場後、対外的な信用力は大きく向上し、M&A仲介会社から毎週のように案件のご提示をいただくようになりました。2025年12月には沖縄県内のau代理店・テレマのauショップ運営事業を譲り受けて3店舗を取得し、2026年4月には岡山市の結婚式・披露宴会場「THE STYLE」の運営を譲り受けました。岡山の施設は21階建て高層ビルの最上階にあり、遮るもののない眺望を誇る屈指の施設です。いずれの案件も、売り手は当社が上場会社であることに安心して譲渡してくださり、従業員も一人も辞めずに移ってくれています。
出所:光貴講演資料
携帯電話もブライダルも「先細りの事業では」と思われるかもしれません。しかし、どちらも決してなくなることはなく、身の丈に合ったサイズで拡大していけば、当社クラスの規模であれば十分に安定的な利益が得られると考えています。当社が買い手側に立てているのは、株式上場を目指してきちんとした経営に努めてきた結果だと思っています。
選択と集中で挑む、次のブレイクスルー
当社のブレイクスルー戦略のキーワードは「選択と集中(経営資源の再配分)」です。移動体通信事業では、ロードサイド店舗をより収益性の高い商業モール内へ移転します。ブライダル事業では新たなM&Aを模索する一方、収益性の低い施設については閉館する予定です。撤退すべきものからは撤退する。これも選択と集中です。社内的には、賃上げや幹部への年俸制導入など人事制度を刷新し、AIツールの試験導入などDX化も進めています。さらに、オーナーの長男には社長室で会社全体を理解するための帝王学を学んでもらい、次世代への事業承継にも備えています。
出所:光貴講演資料
売上高は10年前のほぼ倍となり、今期は約82億円の見込みで、売上高100億円も現実的な目標として見えてきたところです。今後の方針は「さらなるM&Aの推進(事業規模の拡大)」「Q-Board市場への移行」「ホールディング化」の3つ。Q-Board移行の準備は全て整っており、あえて上場時期を自ら選びながら、M&Aや制度改定で体力をつけています。その先には売上高150億~200億円、東証スタンダードへの移行を遠くに見据え、揺るぎない成長への意志を持って、継続的な成長を実現してまいります。