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コラム
イベント開催リポート
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コラム 2026.05.29

学生の挑戦が、企業と地域の未来を動かす「ビジネスモデル開発プロジェクト」に見る産学連携の可能性 山口大学

参加者

  • ユーピーアール株式会社 執行役員 村田 直輝氏
  • ヤスダエンジニアリング株式会社 取締役 安田 昇氏
  • 鳳陽会 理事 羽根 彰氏
  • 鳳陽会 事務局長 石畠 克幸氏
  • 山口大学 前・経済学部長 有村 貞則氏
  • 山口大学学生 千田 萌叶氏、家尾谷 なるみ氏、藤川 弘樹氏、尾神 唯氏、光國 智就氏、石崎 麻央氏
  • タナベコンサルティング インダストリー&ドメイン 大裏 宙氏 ※鳳陽会は、山口大学経済学部の同窓会組織。


山口大学経済学部、鳳陽会、タナベコンサルティングが連携して実施した「ビジネスモデル開発プロジェクト」。企業が抱える課題に対し、学生が現地視察や議論を重ねながら解決策を構想し、提案へとつなげる実践型の産学連携である。


2025年10月から全8回にわたり行われた本プロジェクトでは、学生たちが教室の外にあるリアルな経営課題に向き合い、自ら考え、伝え、やり切る経験を積んだ。一方、企業にとっても、若い世代の率直な視点に触れることで、自社の見せ方や課題解決を見つめ直す機会となった。


学生、企業、大学、後援会が立場を越えて向き合った本プロジェクトは、産学連携が単なる学びの提供にとどまらず、新たな発想や関係性を生み出す場であることを示した。座談会では、その成果と意義、そして地域における今後の広がりについて語り合った。


山口大学 前・経済学部長 有村 貞則氏

山口大学 前・経済学部長 有村 貞則 氏






双方向で学び合う
実践型プロジェクトの意義

TCG・大裏(以降、大裏) 本プロジェクトは、学生の皆さんが企業課題に向き合い、自ら考え、提案にまで落とし込む実践型の取り組みでした。参加した20名が誰一人欠けることなく最後まで走り切ったことは、大きな成果であったと受け止めています。加えて、企業の方々と向き合う中で、学生の皆さんが大きく成長されたことも印象的でした。まずは、この取り組み全体を振り返って、その意義をどのように感じられたのかを伺えればと思います。


山口大学 前・経済学部長 有村(以降、有村) 大学としても、新しい学びの形を築く必要性を強く感じていました。このプロジェクトのお話を伺った際、非常に魅力的である一方、学生が集まるのか、企業に受け止めていただけるのかといった不安もありました。


しかし、実際に進める中で、人材育成は大学だけで完結するものではなく、大学、企業、後援会、支援する皆さまの思いが重なって初めて形になるのだと実感しました。


鳳陽会 理事 羽根(以降、羽根) 今回の取り組みは、一方向の寄附講座ではなく、学生、大学、企業が双方向で関わる形になったことに大きな意義があったと感じています。社会との接点を持ちにくい学生にとって、企業の現場に触れ、自らの考えを形にして伝える機会は極めて有意義です。産学連携の一つの理想形が示されたのではないでしょうか。


鳳陽会 事務局長 石畠(以降、石畠) 鳳陽会として長く経済学部を支援してきた中でも、今回の取り組みは新しい段階に入ったものだと受け止めています。講演を聴いて学ぶ形式にとどまらず、学生が企業と向き合いながら考え、提案へとつなげていく姿を見ることができ、支援が具体的な成長につながっていることを実感しました。今後も、こうした実践の場を継続して支えていくことに意義があると感じています。



現場に触れることで高まった
課題解決の解像度

大裏 このプロジェクトの特徴の一つは、教室内の議論だけで完結せず、実際に企業訪問や現地視察を行いながら提案を深めていった点にありました。机上で考えるだけでは見えないものが、現場に足を運ぶことで見えてきたのではないかと思います。そこで、現場経験が提案にどのような変化をもたらしたのか、学生の皆さんに伺いたいと思います。


学生・千田(以降、千田) これまで企業と深く関わる機会は多くありませんでしたが、実際に工場を見学し、社員の皆さまの雰囲気や働く現場に触れたことで、提案の解像度が大きく高まりました。特にユーピーアールの現場では、想像だけでは見えない空気感や課題を捉えることができ、そこから提案を深めていくことができました。


学生・家尾谷(以降、家尾谷) 現場を見たことで、何をどのように伝えるべきかがより具体的に見えてきました。チームで議論を重ねる中でも、実際に見聞きした内容が共通認識となり、提案や動画制作をより具体的な形に落とし込むことができたと感じています。


学生・藤川(以降、藤川) 企業の方々のお話を直接伺い、現場に触れたことで、課題を表面的に捉えるのではなく、その背景まで考える視点が持てるようになりました。提案をまとめる過程でも、実際に見たこと、聞いたことが土台となり、より説得力のある内容に近づけることができたと思います。


学生・尾神(以降、尾神) 企業と関わる経験はありましたが、自らゼロから発想し、提案としてまとめるのは初めてでした。施設を訪問したことで、どこに着目すべきか、どのように見せれば伝わるのかが明確になり、現場を見ることの重要性を強く実感しました。


学生・石崎(以降、石崎) ARを活用した提案を検討していましたが、当初は方向性が見えていても、具体化の段階で悩みがありました。企業訪問に加え、ARの専門家から話を伺えたことで、一気にイメージが広がり、提案の実現性を高めることができたと感じています。行動することで初めて見えてくるものがあると実感しました。


学生・光國(以降、光國) 現場を見る前と後では、考え方が大きく変わりました。建設業に対しては漠然としたイメージしか持っていませんでしたが、実際に現場を見ることで業界理解が深まり、提案の切り口も変化していきました。



学生の率直な視点が
企業に新たな示唆をもたらす

大裏 学生の皆さんのお話からも、現場に触れることで提案の質が高まっていったことがよく分かりました。一方で、企業の皆さまにとっても、今回の提案は従来の発想にない気づきをもたらしたのではないかと思います。ここからは、受け手である企業の立場から、どのような発見や手応えがあったのかを伺いたいと思います。


ユーピーアール株式会社 執行役員 村田(以降、村田) 最初に学生の皆さんとディスカッションした段階で、かなり細かな点まで質問してくださり、「非常によく調べている」と感じました。表面的な理解にとどまらず、真剣に企業課題を捉えようとしている姿勢が伝わってきました。


実際の提案でも、「悪い報告をオープンにできる職場づくり」といった逆転の発想は、社内にいるとなかなか出てこない視点でした。若い世代の率直な疑問や発想には、企業にとって学ぶべき点が多いと感じています。


ヤスダエンジニアリング株式会社 取締役 安田(以降、安田) 私たちの業界は、学生にとってイメージしにくい部分があります。だからこそ、まず知っていただくことが重要だと考えて参加しました。


その中で印象的だったのは、学生の皆さんがこちらの話を素直に受け止め、自分たちなりに咀嚼した上で提案へ昇華してくださったことです。建設業のイメージを変える動画やARの提案など、自社の中だけでは生まれにくい発想が出てきたことは大きな収穫でした。


村田 採用の観点でも多くの学びがありました。今の学生がどのような感覚で企業を見ているのか、どのような伝え方であれば理解しやすいのかがよく分かりました。短時間でAIも活用しながら資料や動画を仕上げていく姿を見て、企業側も仕事の進め方や育成のあり方を見直す必要があると感じました。


安田 学生に知っていただくことが参加目的の一つではありましたが、それ以上に、若い世代がどこに関心を持ち、何を魅力と感じるのかを知る機会になりました。提案を聞いて終わるのではなく、「実際に取り入れられる可能性がある」と感じられる内容もあり、学生の視点が企業に新たな可能性をもたらすことを実感しました。



ヤスダエンジニアリング株式会社 取締役 安田 昇氏

ヤスダエンジニアリング株式会社 取締役 安田 昇 氏



学生の成長がつなぐ地域と企業のこれから

大裏 ここまで、プロジェクトの意義、現場で得た学び、そして企業側の気づきについてお話を伺ってきました。では最後に、この取り組みが学生の成長や地域とのつながりにどのように結び付いたのか、改めて掘り下げていきたいと思います。学生の皆さんにとっては就職活動とも重なる時期でしたが、その中でどのような学びがあったのかを、まずお聞かせください。


千田 企業の方々と直接対話しながら提案を磨いていく経験を通じて、自分たちのアイデアが実際の経営課題と結び付いていることを実感しました。考えるだけでなく、相手に伝わる形にまとめる難しさと大切さを学ぶことができ、視野が大きく広がったと感じています。


藤川 両立は決して容易ではありませんでした。ただ、自分の案を積極的に提言することや、ゼロから課題を分析し、形にする経験は、それまであまりなかったため、自身の成長につながったと感じています。就職活動においても、自信を持って語ることができる経験になりました。


家尾谷 チームで進める難しさはありましたが、その分、意見のまとめ方や役割分担のあり方など、多くの学びがありました。動画制作も初めてのことばかりで苦労しましたが、自分たちで試行錯誤しながら最後までやり切れたことは大きな経験でした。


石崎 就職活動で語れる経験になっただけでなく、自ら手を挙げて挑戦し、最後までやり切ったことが自信につながりました。企業の方から評価の言葉をいただけたことも、大きな励みになりました。


尾神 人前で話すことは得意ではありませんでしたが、発表や提案を通じて、相手に分かりやすく伝えることを意識できるようになりました。社会に出てからも生かせる経験であったと感じています。


光國 参加前は業界に対して漠然としたイメージしか持っていませんでしたが、現場や企業の方々の話に触れる中で、地域企業の役割や仕事の奥行きを具体的に捉えられるようになりました。自分の考えを深め、相手に伝える経験は、今後にもつながる大きな学びになったと感じています。


羽根 ここまで学生の皆さんのお話を伺い、このプロジェクトが単なる提案機会ではなく、一人ひとりの成長にも確かにつながっていたことを強く感じました。だからこそ、受け入れてくださった企業の皆さまの目に、今回参加した山口大学の学生がどのように映っていたのかを、ぜひ伺いたいと思います。今後こうした取り組みを継続していく上でも、大変重要な視点ではないかと考えています。


大裏 企業の皆さまはどのような感想を持たれましたか。


安田 最も印象的だったのは、素直さです。いただいた意見をきちんと受け止め、自分たちなりに考え、行動につなげようとする姿勢が非常に印象に残っています。


村田 私も同感です。非常に真面目で、最後までやり切る力があると感じました。20人が脱落することなく完走したことも、その表れであると思います。


有村 山口大学の学生は、派手さよりも、真面目に取り組み、良い出会いや良い指導があればしっかり応えてくれるタイプが多いと感じています。今回、企業の皆さまが本気で向き合ってくださったからこそ、学生側も本気で応えることができた。その相互作用が、このプロジェクトの価値をより大きなものにしたのだと思います。


また、地方の企業を知ることは、地域社会を知ることでもあります。大企業だけで社会が成り立つわけではありません。今回の経験を通じて、地域を支える企業の役割にも目を向けてもらえればと思います。


大裏 本日のお話を通じて、学生の皆さんにとっては、企業のリアルな課題に向き合い、自ら考え、提案する経験が大きな成長につながったことが改めて見えてきました。一方で、企業の皆さまにとっても、学生の率直な視点から新たな気づきや可能性を得る機会になっていたのだと感じています。


産学連携は、学びの機会を提供するだけではなく、立場を越えて向き合うことで、新たな発想や関係性を生み出していく取り組みであることを、今回改めて実感しました。このプロジェクトが、山口における次の挑戦や新たな連携へと広がっていくことを期待しています。本日はありがとうございました。



座談会では、プロジェクトを通じて得られたことについて、学生、企業、大学、同窓会組織、それぞれの立場からざっくばらんに意見を交換した

座談会では、プロジェクトを通じて得られたことについて、学生、企業、大学、同窓会組織、それぞれの立場からざっくばらんに意見を交換した