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コラム 2026.02.27

日本企業の価値観と市場の可能性 張 鎧瑩

2025年11月19日から21日にかけて「第44回M&A Worldwide(MAWW)」のコンベンションが東京で開催。
世界各国の専門家が日本に集まり、国際協働の深化やM&A・投資に関する知見を共有した。


「M&A・国際取引における日本企業の特徴」をテーマに登壇した、アーロン・ペイ・シェンス氏による講演(左)。実務テーマを中心とした対話が展開されたスピードミーティング。スムーズな進行をタナベコンサルティングがサポートした(中)。ハイブリッド形式で実施された Industry Group 活動紹介セッション(右)

「M&A・国際取引における日本企業の特徴」をテーマに登壇した、アーロン・ペイ・シェンス氏による講演(左)。
実務テーマを中心とした対話が展開されたスピードミーティング。スムーズな進行をタナベコンサルティングがサポートした(中)。
ハイブリッド形式で実施された Industry Group 活動紹介セッション(右)



国際M&A会議東京で初開催

M&A Worldwide(以降、MAWW)は国際的M&Aアドバイザリー・ファームのネットワークであり、タナベコンサルティンググループ(TCG)のグローウィン・パートナーズが加盟している。MAWWのコンベンションは年に2回行われており、2025年春はミラノで開催された。日本での初開催となる今回、グローウィン・パートナーズが主催し、アジア地域における存在感を示す機会となった。


本コンベンションの開催期間中には、会員による幹部会議およびアジア会議が実施され、組織運営やアジア地域ネットワーク強化についての議論が活発に交わされた。日本がホスト国を務めることで、アジアにおける情報発信拠点としての存在感が高まり、国際ネットワークの中での位置付けを強める契機になった。



日本市場の可能性と企業文化を発信

「クロスボーダーM&Aにおける日本市場の可能性」をテーマにしたスピーチでは、法務、投資、経営戦略など幅広い分野の専門家が登壇。扱うテーマはそれぞれ異なっていたものの、共通して日本企業や日本市場を理解する上で参考となる視点が多方面から示され、企業文化や価値観がどのように企業行動や取引のプロセスに影響しているかについて解説された。


日本企業の特徴として挙げられたのは、家族的な組織観や地域社会との調和を重んじる姿勢、「自分が受け取るよりも、相手に先に与える」という考え方、感謝を大切にした関係づくり、教育を通じて自立を促す価値観などである。こうした文化的背景は、中小企業が長期にわたって事業を継続してきた要因の1つであり、日本企業を理解するための重要な要素として紹介された。


一方で、取引プロセスにおける慎重さや内部調整の煩雑さについて、近年は透明性の向上や意思決定のスピードアップに向けた取り組みが進んでいるとの指摘があった。法律や実務面での整備が進んだことで、海外投資家にとって日本市場が以前よりアクセスしやすくなりつつあることも共有された。


これらのスピーチは、日本の企業文化と現在の市場環境を多角的に整理するものであり、海外メンバーにとって日本市場への理解を深める良い機会となった。



Speed Meetingによる新たな交流機会

「Speed Meeting」 は、今回のコンベンションを象徴する取り組みの1つである。企業と海外アドバイザリーが一対一で対話する機会が正式に設けられ、日本企業は事前に関心国や相談内容を提出し、MAWWメンバーの希望や事務局による調整を踏まえて、1社につき6回の面談が設定された。時間は限られているものの、日本企業が通常ではコンタクトを取りにくい海外の専門家と直接話ができる貴重な機会となった。


面談では、海外展開に向けた初期検討、特定国への関心、業界動向、買収候補企業の可能性、現地規制や市場環境など、多岐にわたるテーマが扱われた。面談は英語で進められ、必要に応じてTCGメンバーが通訳を担い、対話を円滑に進められるようサポート。複数の面談で、後日の個別相談や追加情報のやり取りにつながる見込みがあり、実務面でも有意義な成果が期待される内容となった。


新たな取り組みとして導入したSpeed Meetingだったが、名刺交換中心の交流にとどまらず、具体的な検討事項まで踏み込んで話ができるプログラムとして機能した。



国境を越えた協働の土台を築く

本コンベンションでは、情報共有や連携を深めるためのセッションが複数実施された。その1つである「Commercial Meeting」 では、売却・買収案件、資金調達のニーズ、新規事業に関する相談など、MAWWメンバー間で共有されている案件情報が紹介された。案件の存在をネットワーク全体に知らせ、関心を持ったメンバーが後日個別にアプローチする形式が採用されている。この仕組みにより、国境を越えた協働の機会が自然に生まれ、ネットワーク全体の案件の流れが途切れない構造がつくられている。


また、Industry Groups の紹介では、業界別に組織された複数のグループの活動状況が共有された。各国のメンバーが自主的に参加し、市場動向や業界課題について継続的に意見を交換することで、実務に根付いた知見が蓄積されている。こうした取り組みは、MAWWが単なる仲介ネットワークではなく、知識を共有するコミュニティーとしても機能していることを示す。


3日間にわたる東京でのコンベンションを通じ、国際的な知見共有、案件情報の可視化、海外アドバイザリーとの実務的な対話など、多くの実りある学びと交流が生まれた。今回参加した日本企業が得た知見や新たなつながりは、海外展開やクロスボーダーM&Aを検討する際の視野を広げるきっかけとなるだろう。また、国際ネットワークを通じた協働についても、その活用方法がより具体的にイメージできるようになったと推測する。


こうした動きが加速する中で、本コンベンションは今後のクロスボーダーM&Aの在り方を考える上でも意義のある取り組みとなった。


世界各国の専門家との直接対話を通じて構築された信頼関係は、日本企業が海外市場へアクセスする際の確かな橋渡し役となる。また、Speed Meetingで実現した具体的な商談機会や、Industry Groupsを通じた業界別の専門知見の蓄積は、単なる情報交換を超えた実務的な協働の基盤を形成した。


日本初開催という節目を経て、アジア地域における情報発信拠点としての存在感が確立されたことは、今後の国際的な協働において重要な意味を持つ。TCGは、今回得られた知見やネットワークを生かし、日本企業が持つ価値や強みをグローバルな文脈で引き出し、海外展開とクロスボーダーM&Aにおける新たな挑戦を後押しするパートナーとして、引き続き貢献していきたい。

PROFILE
著者画像
張 鎧瑩
Hoiin Cho

タナベコンサルティング
グローバルビジネス