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コラム 2025.11.28

JR九州グループが考える未来 九州旅客鉄道

FCC(ファーストコールカンパニー:100年先も顧客から真っ先に声をかけられる会社)実現を支援する、経営者のための戦略プラットフォーム 「トップマネジメントカンファレンス」(タナベコンサルティング主催、全6回)。第3回(2025年8月開催、テーマ「フロンティア戦略」)では、九州旅客鉄道株式会社の成長戦略について、同社代表取締役社長の古宮洋二氏に講演いただいた。

九州旅客鉄道株式会社 代表取締役社長執行役員 古宮 洋二 氏

九州旅客鉄道株式会社
代表取締役社長執行役員
古宮 洋二 氏

国鉄からJR九州へ

JR九州はご存じのとおり、もともと日本国有鉄道(以下、国鉄)でした。私は国鉄として最後の採用があった1985年に入社しました。

国鉄は1987年に分社化し、私はJR九州に採用されることになりました。九州新幹線の開通や「ななつ星」に代表される豪華列車を担当し、3年前に社長に就任しました。

分社化された当初は、国鉄時代の巨額赤字を引き継いでおり、不安なスタートとなりました。 九州は圧倒的な車社会です。高速道路の延伸も伴って、鉄道事業は分社化時点以上に落ち込むことが予想されました。

そこで当時の経営者は徹底した鉄道の価値向上と経費削減に取り組みました。また、3000名を超える余剰人員を活用した新規事業に着手し、九州の交通ネットワークを維持しました。

徹底した経費削減

出所:JR九州講演資料

出所:JR九州講演資料

まずは経費削減です。

具体的には、ワンマン運転や自動改札・自動運転などの最新技術を積極的に導入しました。また、列車の本数を増やしたり、設備に投資して車両を刷新し、安全性・利便性を強化しました。これらはいずれも「国鉄時代にはなかったサービス提供」を徹底することにこだわった結果です。

こうした取り組みとは別に、JR発足時、余剰であった社員によって新たに副業(うどん店など)を生み出しました。今では、グループ会社として独立するまで成長し会社の利益につなげられています。

現在は、不動産事業やホテル事業が成長の柱となっています。連結収益は約4500億円規模に達しており、鉄道依存からの脱却に成功していることは、JR九州の現在の売上における3分の2が鉄道以外の事業となっていることからもお分かりいただけるかと思います。

経営理念の作成

出所:JR九州講演資料

出所:JR九州講演資料

2024年、今まで存在していなかった経営理念の作成を行いました。

「誠実」「共創」「挑戦」という3つの「おこない」を常に大切にし「安全を最優先し、お客さま視点で考え、安心で快適な毎日と”わくわく”するときをつくる」という使命を積み重ねることで「九州の元気を、世界へ」という私たちの夢を実現する。これが新しい経営理念です。

地域の元気はJR九州グループの元気になる、という考えのもと、JR九州グループのみならず、地域の持続可能性につながると考えています。

九州でも都市圏では人口が増加していますが、少し離れると定住人口が少なくなります。ローカルな小さな町の町おこしをするにも限界があるため、定住人口を増加させる場所と、交流人口を増やす場所を分けることにしました。

ローカルエリアには観光列車などを運行するなどの交流人口を増やす戦略を立てます。一方、定住人口を増やす地域には駅をつくり、そこにビルを建てると、そのビル内のテナントを含めて2000~3000名分ほどの雇用が生まれます。

働く先がないと人は住みません。定住人口を増やすには雇用が必要なのです。今後、いろいろなエリアで駅ビルによる雇用を創出していこうと思っています。

地域との連携や観光戦略

次に、地域との連携した取り組みを紹介します。

1992年から「九州各地域を散歩してもらおう」という社員発案のイベント「JR九州ウォーキング」を開催しており、200~300名から5000名を超える参加者が集まります。2022年からは九州観光まちづくりアワードも創設しました。

このアワードは、九州各地の伝統文化や地域活性に取り組む人々を発掘・表彰するもので、「付加価値」ではなく「本来価値」を正当に評価し、対価を得る文化を広めたいという理念に基づいて運営しています。

また「ekinico」という駅舎再生プロジェクトも行っています。これは、国鉄時代の大きく古い駅舎を活用しようというプロジェクトで、地元住民や学生に貸し出すことで、人が集まる空間を一緒につくってもらえます。住民の方の力を借りるということが重要で、現在着々と増えている状況です。

加えて「D&S列車(デザイン&ストーリー列車)」を製作し、運行する事に力を入れています。これは、いろいろな地域の歴史やストーリーをデザインに落とし込んだ列車を運行しようというものです。

一般的には観光列車ということもありますが、車体にその地域のストーリーのデザインなどをすることで、目的地にたどり着くための手段ではなく、列車に乗ってもらうこと自体を売り物にしています。

D&S列車のすごさは、この列車に乗るための移動手段としても列車に乗ってもらえることです。正直、利益が高い列車は一番が新幹線で、次が特急です。維持管理を考えただけでも、地方路線は利益が出ません。

正直、この列車だけでは利益はほとんど出ませんが、そこまで行く手段で利益が出ます。
鹿児島のD&S列車に乗るために、博多から新幹線に乗ってもらえます。このような移動が利益を生むことにつながっています。

同様の取り組みを九州各地でも行っています。

「ななつ星」は日本初のクルーズトレインとして有名であり、現在は最高でお二人様340万円ほどする客室もあります。リピーターも多く、海外からのお客さまも多くいらしています。

「表はアナログ、裏はデジタル」を合い言葉に、密着したあたたかいサービスを提供することで、たくさんのお客さまに好かれ、リピートしていただいたりすることができていると思います。

あたたかいコミュニケーションを取ることで、リピーターだけでなく、乗務員を含めた同窓会を開催するなど、列車以外でも関係性を構築することができており、このことがより一層リピーターを生むきっかけになっているのではないかと思います。

社員や組織作りに大切な「元気」

JR九州グループでは、「元気」を大切にしています。社員の「元気」が会社の「元気」につながります。さらに、会社が「元気」になることが、地域の「元気」につながっていくと思っています。

例えば社内居酒屋を開催して社員とコミュニケーションを図り、職場を「元気」にしていく。そういった元気な職場から、お客さまに「元気」を届けられる取り組みを促進しています。

出所:JR九州講演資料

出所:JR九州講演資料

JR九州グループの人材戦略として、「社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる会社づくり」と「人間力と実務力を持った社員の育成」を掲げています。

社員一人一人にやりがいを持たせ、できたらきちんと褒めることをやっていく。基本のことだと思われますが、やりがいを感じてもらうことが何より重要だと思っています。

JR九州は40歳以下の離職率がおよそ1%です。しかし、コロナ禍で3%になったことに危機感を覚え、給料を上げることや社員とさまざまなコミュニケーションを取ることに努めました。

また、社員にやりがいを持ってもらうために公募性プロジェクトも導入し、社員の隠れた才能発掘に役立てています。

出所:JR九州講演資料

出所:JR九州講演資料

私は「日本一明るく楽しい会社をつくる」ということを宣言しました。

職場に「あかたの(明るく楽しい)リーダー」をつくり、意見交換をして、「あかたのリーダー」を増やしていく。そういったことの繰り返しで、明るく楽しい会社をつくっていこうという試みです。

コロナ禍でコミュニケーションが取りにくくなり、コミュニケーションの大切さを実感しました。

改めて、JR九州を「あかたの会社」にするための全社プロジェクトを2024年より開始しています。単なるスローガンではなく、社員が主体的に参加し、前向きに働ける環境づくりを進めることが、企業全体の成長につながると考えております。

こういった取り組みを始めたことで、離職率が改善し、鉄道業界の風土改革や新技術を使ったさまざまな案が出てきていることから、これからも明るく楽しいやりがいが生まれていくのではないかと思っています。