企業の人手不足、採用難、働き方改革などを背景に、一人一人の生産性向上が求められる今、全社員の活躍に向けた新たな教育体系の整備が経営者にとって急務となっている。こうした中、タナベ経営は2018年11月22日、「アカデミーFORUM2018」を東京・秋葉原で開催。会場には全国から170名の経営者や幹部、人事担当者が集まり、これからの人材育成について学びを深める1日となった。
多くの企業が人材育成に課題を抱える中、タナベ経営は「アカデミーFORUM2018」を開催し、新しい人づくりモデルである「FCCアカデミー」について企業事例を交えながら紹介した。
FCCアカデミーの最大の特徴が、クラウドを活用した教育システムである。集合研修などリアル型研修に加え、クラウドの教育システムを併用することで、いつでもどこでも誰でも学ぶことが可能。講師は導入企業の社員が担当するため、受講者は多くの先輩や上司から学べるほか、「優秀な社内人材の発掘」「採用ブランディング」「働き方改革、生産性向上」「研修投資・時間効率の最大化」「ビジョンマネジメント」「育成のスピードアップ」などの効果が見込める。
当日の基調講義では、タナベ経営社長・若松孝彦が「生産性改革、働き方改革が待ったなしの今こそ、人、教育に対する価値観を変えていくべき。FCCアカデミーを活用し、組織の生産性を高めて全員活躍革命を起こそう」と呼び掛けた。
続く企業対談では、FCCアカデミーを活用している3社(三松、トップ産業、銚子丸)のトップが登壇し、開校の背景や活用状況、成果などを紹介した。
小ロット製造代行サービス会社の三松(福岡県)は2010年、教育の体系化と、自社の技術力の対外的訴求のため「三松大学」を開校。シートメタル(薄物板金)加工を中心に、一貫した生産システムを持つ同社にとって、技術レベル向上とそのPRは重要な課題だった。
三松大学では既存技術だけでなく、将来に必要となる新技術も加えたスキルマップを活用し、「未来志向の技能継承」を実施した。また、優れた社内技術者を選出し称える「三松マイスター総選挙」や九州大学との連携により、技術伝承のブランディングを進めている。
「当社の何よりの強みは人。人材教育は、顧客に安心・信頼いただくためのベースであり、働く側のモチベーションにもなる。他社に先駆け、より充実した教育体制の構築が自社の未来を創ることにつながる」と、社長の田名部徹朗氏は力説した。
また、オリジナル生活実用品の企画開発・卸売を行うトップ産業(大阪府)は2017年から「TOPACADEMY」開校準備をスタートし、2018年10月にプレ開校。開校に当たり「TOPアカデミー委員会」を設立し、職種別能力・スキルの掘り起こし、用語の共通化、カリキュラム策定、動画撮影などを実施。並行して人事制度の見直し・構築も進めていった。
「アカデミー構築過程で、『業務の整理・マニュアル化』『部署間の相互理解』『グループ間の人材交流』が進んだ」と語るのは社長の松岡康博氏。さらに「アカデミーは講師の社員も含めて全員が成長できる。社員が成長を感じられるように運用することが今後のポイント」と、取り組みの成果や抱負を語った。
グルメ回転寿司業態の「すし銚子丸」を展開する銚子丸(千葉県)は、2018年「立志塾」を開校。同社は鮮魚を店舗でさばき、その日のうちに売り切る店内仕込みのスタイルで人気を博しているが、技術者の高齢化を背景に開校に至った。
立志塾ではトップ自ら経営理念を語るとともに、現場の専門技術を細分化し、動画マニュアル化することで、“ノウハウの見える化”に取り組んでいる。
動画だと「何回も見直せる」「現場のOJTでは伝えきれないことまで伝えられる」と、社員からは好評という。
「立志塾の動画を見れば、いろいろな知識が身に付き自信が付く。先輩社員がじっくり教える時間確保の難しい時代、ITを使った人材育成をもっと活用すべき」と常務取締役の堀地元氏は指摘する。一方、同社は社員が顔を合わせ、動画では伝わらない内容を教育する集合型研修も実施し、ウェブとリアルを併用した教育を進めている。
「コンテンツは自社で随時追加できるのか?」「受講者からの質問を受け付けて回答する、といった双方向のやりとりはできるか?」など、体験会場では実用を想定した質問が来場者から次々と飛び交うシーンも。担当者の説明に熱心に耳を傾けたり、実際にアカデミークラウドに触れて操作を試したりしながら、来場者にとって収穫の多い時間となったようだ。