その他 2022.09.30

vol.6 柔軟に対応できるレジリエンスなサプライチェーンを

 

Vol.6では、ウィズコロナ時代におけるサプライチェーンの在り方について詳述します。

 

サプライチェーンにおけるレジリエンスとは、内部(自社・グループ)だけでなく、外部(仕入れ先・販売先・委託先)のリスクが要因で生じる需要と供給の「波動に対する強靭な体制」です。「調達」「生産」「物流」のサプライチェーン全体を全社戦略として構築すべきです。

 

 

危機に強いサプライチェーンへ

 

サプライチェーンの根本的な考え方は「入り口から出口までを最適化する」ことです。したがって、「何を」「どこに」「いくら(数量)」などの正確な情報をリアルタイムで把握するとともに、リスクを洗い出してマネジメントすることが必要となります。複雑なサプライチェーンに潜むリスクコントロールを実務的・効果的に行うためには「サプライチェーンリスクの可視化」が必須です。

 

サプライチェーンリスクの可視化のためには、想定されるリスクの発生頻度や可能性と、自社・自部門への影響をマッピングする「サプライチェーンリスクマップ」を作成すると良いでしょう。マップを作成したら、4つのリスクごとに対応を検討します。

 

 

 

 

①発生頻度は低いが、影響が大きいリスク:
調達先や販売先への依存率を低減しましょう。新たな取引先を調査・検討することで、新製品や新規開拓などにつながる可能性があります。

 

②発生頻度が低く、影響も小さいリスク:
マニュアル整備やガイドラインの策定、規定の見直しを行いましょう。組織・チームの基盤固めにもつながります。

 

③発生頻度が高く、影響も大きいリスク:
単なる代替先の開拓ではなく、根本的にサプライチェーンの見直しが必要です。販売機能を優先せず、物流や生産の効率化と安定化をもとに検討する全社最適の視点が必要です。

 

④発生頻度は高いが、影響は小さいリスク:
人材育成や仕組み・ルールの徹底が不足しています。平時から人材育成・ルールの徹底に時間を配分することが必要です。

 

サプライチェーンは“供給連鎖”であり、調達→生産→販売までの構造を意味します。調達から生産へ、生産から販売へと供給を最適化するためには、モノとは逆の方向に提供される「情報」が重要です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国をはじめ特定国への依存がサプライチェーン上の大きなリスクとなることが表面化しました。今後は中国への依存度を引き下げ、部品の付加価値や製造における重要度に応じて、中国以外の近隣国・地域からの調達比率を高める動きが世界的に進むと予想されます。

 

特定国への依存回避の選択肢として、国内回帰の動きも進むでしょう。国内回帰を進める上では、複数の国内サプライヤーを確保できるかが鍵となります。自社が仕事を依頼しているサプライヤーだけでなく、その先のサブサプライヤーも知ること(サプライチェーン拠点を地図化する)、また異業種の参入メーカーと手を組むこと(共同開発する)がポイントです。

 

また、危機に強いサプライチェーンを構築していくためには、既存のアナログ業務を見直し、デジタルシフトによる効率化・省人化を実現しなくてはなりません。自社の業務プロセスを見直すことが「サプライチェーン全体の最適化」につながります。社員に対するAIを用いたデジタル技術への理解を浸透させ、自社の業務において、どこに対してデジタル技術を導入するか検討する必要があります。経営計画に落とし込み、成長ロードマップ描いていくことが大切です。

 

 

調達戦略

 

コロナ禍でさまざまな活動が制限される中、調達におけるDX活用はよりいっそう重要になっています。調達先を多様化・分散すると、1社当たりのスケールメリットが低減するため集中購買と比べてコストが高くなってしまいます。コストを削減し、生産性を上げて、集中と分散を両立させるためには、デジタル(AI)を使ったプラットフォームを活用した調達に着眼を置く必要があります。

 

今後、国家間でのサプライチェーン分断リスク回避のため、現地調達・現地生産の流れも進展していくとみられています。「現地調達」という観点では、一般的な製造業における製造原価の約6割に達する原材料・部品を、現地で調達できるかがコスト削減の鍵になります。

 

現地調達の難しさとして、納品先の品質基準に見合う原材料・部品が現地生産されていないことが挙げられます。現地調達率を上げる方法は次の2点です。

 

①現地企業への技術指導などを通じて、地道に現地調達率を上げる。
②新規取引先の積極的な開拓など地道な取り組みを行う。

 

企業単体の努力だけでは限界があるため、現地のコネクションを利用して調達率を上げる方法も選択肢に入れておくと良いでしょう。現地生産ではサプライヤーの選定も重要です。現地で開かれている見本市に参加するほか、業界団体、同業者などを通じて紹介してもらうのも1つの方法です。

 

調達(購買)においても、デジタルを活用した「速さと正確さ」の向上のため、本格的なDXの時を迎えています。デジタル化によって人への依存を解消することで、作業スピード、正確性・再現性が向上し、その結果として顧客満足度が上がり、従業員満足度も上がることが期待できます。