特集1:学び方改革
2017年11月号
「指導者がいない」「時間がない」人材育成に「問題」を抱える企業が7割超
「人が育たない」「若手社員がすぐに辞めていく」など、人材育成に課題を感じる企業は多い。昨今、企業が人材育成にかける費用は増える一方だが、思うようにいかず、多くの経営者や人事担当者が人材育成に悩みを抱えている。
企業が人材育成を目的に実施するOff-JT と、社員が自発的に行う自己啓発について現状を見てみよう。厚生労働省「能力開発基本調査」(2016年度)によると、企業がOff-JT に支出した費用(労働者1人当たり平均額)は2.1万円。2014年度(1.4万円)、2015年度(以降前回、1.7万円)と比べると、金額は年々増加している。
また、正社員に対し、2015年度にOff-JTを実施した事業所は74.0%で、2014年度の72.0%より2ポイント増加。Off-JT の実施内容は、「新規採用者など初任層を対象とする研修」が最も多く、「マネジメント」や「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」が続く。
さらに、人材育成に関して「問題がある」と回答した事業所は72.9%に上る。問題の内訳は「指導する人材が不足」(53.4%)、「人材育成を行う時間がない」(49.7%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(43.8%)が多かった。(【図表1】)
企業側が人材育成に問題を感じている一方で、社員の自己啓発への意欲は高まっている。自己啓発を行った人の割合を見ると、正社員45.8%(前回42.7%)、正社員以外21.6%(前回16.1%)で、正社員・正社員以外ともに増加した。
正社員が自己啓発を行った理由は、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」が84.4%で最も高く、「将来の仕事やキャリアアップに備えて」が59.0%、「資格取得のため」が32.0%を占める。(【図表2】)
一方、自己啓発を行う上で「問題がある」と回答したのは、正社員78.4%、正社員以外で70.3%。問題の内訳を見ると、正社員の場合「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」が59.3%で最も高く、「費用がかかりすぎる」(29.7 %)、「家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない」(21.8%)、「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」(20.4%)が続く。
人材育成に悩む企業は多いが、自己啓発に関する調査結果から、社員個々の「学びの意欲」は従来以上に高まっていることが分かる。こうした中、「人が育つ職場」をつくるには、企業側が適切な「学ばせ方」を知り、実践する必要があるだろう。