日本の成長を阻害する女性の「2億円」問題
ソニー生命保険が全国20~69歳の女性1000人に実施(2017年2月)した意識調査結果によると、有職女性(572名)のうち「女性が社会で働くには、不利な点が多い」と答えた人が79.5%に上り、約8割が働きづらさを感じていることが分かった。
一方、専業主婦(294名)のうち「外に働きに行きたい」と答えた人が38.1%。約4 割は就労意欲を持っていたが、「子育て後の再就職は厳しい」と感じる人が77.6%に上っていた。
女性が長く働き続けることは難しく、さらに再就職も難しいという、女性には優しくない日本社会の実情が浮き彫りになっている。
では、企業や職場がどのように変われば、女性が働きやすい環境になるのか。全回答者に尋ねたところ、「在宅勤務」が58.5%と最も多く、次いで「時短勤務」「フレックス制」が続く(【図表】)。在宅勤務と時短勤務については、半数以上が「あると良い」と答えており、働く場所や就労時間などを自分でコントロールできる制度を望む声が多い。
また、子どもがいる女性について見ると、「社内保育園」が52.2%と半数を超えたほか、「子連れ出勤可」は35.3%となっている。
ニッセイ基礎研究所の試算によると、大卒正社員の女性が産前産後休業や育児休業などを経験せずに働き続けた場合の生涯所得は2億5816万円。それに対し、2人の子を出産し、育休を2回利用して速やかにフルタイムで復職した場合は2億3008万円。両者の生涯所得は1割しか違わない。
だが、時短勤務を利用したり、出産時に退職してパートタイマーで働きに出たりすると、差はさらに拡大する。正社員・育休2回・フルタイム復職の場合と、出産時に退職して就労しない場合の生涯所得の差は、なんと約2億円(1億9213万円)となる。
出産に関わる機会費用が大きいと、結婚・出産を望む女性は増えないだろう。また出産・育児への理解がない職場で勤めたいと思う女性もいないだろう。育児中の女性が就業できないと家計消費が抑えられ、国内経済は伸び悩むだろう。女性に長く活躍し続けてもらうことは、人手不足に悩む企業、人口減少で活力を失いつつある社会、国内消費が停滞する経済にとってもメリットが大きいのだ。
結婚や出産、育児、介護など、ライフステージが変化しても、働きたい人が当たり前に働き続けられるよう、柔軟な労働環境の整備が必須である。