特集1:戦略ロジスティクス
2016年11月号
深刻なドライバー不足で高止まり続くトラック運賃
荷主企業の物流価値向上が急務
トラック運賃の高水準が続いている。全日本トラック協会と日本貨物運送協同組合連合会がまとめた「求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)(※1)成約運賃指数」によると、2016年8月の成約運賃指数(2010年4月=100)は前月比5ポイント増の116となり、8月としては調査開始以来2番目に高い水準となった。(【図表1】)
※1 中小トラック運送事業者がインターネット上で荷物情報と車両情報を登録、荷物を依頼したい求車側と車両を活用したい求荷側をマッチングさせるシステム。成約運賃指数は同システムで成約に至った個別運賃の平均を指数化したもの
運賃指数(年度平均)は2012年度(前年度比1.3ポイント減の103.5)から13年度(同6.6ポイント増の110.1)に上昇へ転じて以降、14年度(113.2)、15年度(112.8)と110超で推移した。16年度も4~8月平均で110.5と依然、高止まりが続いている。特に、荷物重量4t以下の運賃指数(4~8月平均:114.1)は高水準が継続している。
一方、8月末現在の求車登録件数は前年同月比8.7%増の9万3008件となり、求車需要が高まっている。成約件数は同16.8%増の1万5127件で、成約率は16.3%と1.1ポイント増加した。
運賃の高止まりは、慢性的なドライバー不足が要因とみられる。日本商工会議所の『人手不足等への対応に関する調査』(2016年6月)によると、「人員が不足している」と答えた企業の割合は全業種平均で55.6%。ところが運輸業は7割(72.3%)を超え、宿泊・飲食業(79.8%)、介護・看護(77.5%)に次いで3番目に高かった。
総務省の『労働力調査』によると、道路貨物運送業の輸送・機械運転従事者数は80万人(2015年)で2年連続の減少。鉄道貨物協会の見通し(2014年5月)では、トラックドライバーは2020年度に約10.6万人が不足するとされる。トラックドライバーの人手不足の継続に伴い、運賃も長期的に上昇傾向を維持することが予測される。
トラック運賃の上昇は荷主企業側の物流コスト増につながるが、単価の維持や値下げを求め過ぎると運送事業者に仕事を断られる公算が大きい。運賃上昇はドライバーの確保に加え、過労運転防止に向けた待遇改善などコンプライアンス強化を背景としている。安全輸送の確保や、近年注目されている「CSR物流」(物流取引先のCSR活動を支援し、信頼される企業としての価値を高める取り組み)のためにも、荷主企業側は値上げを容認し、顧客に対して物流の付加価値を上げることが求められる。