特集1:次世代体制づくり
2016年7月号 急増するIPO、本当の目的は「優秀人材の確保」? 近年、企業のIPO(新規株式公開)件数が急増している。日本取引所グループの公表データによると、2014年の年間新規上場(※)が前年比22件増の75件と大幅に増えた。また翌15年も89件と同14件増加した。2012年(44件)からの3年間で倍増した形だ。(【図表1】) ※ 東証1部・2部、マザーズ、JASDAQの合計。TOKYO PRO Market は除く
【図表1】IPO 数の推移(東証1 部・2 部、マザーズ、JASDAQ) これは景気回復に伴う企業業績の改善に加え、資金調達需要が高まっていることも背景にある。ただ、最近のIPOの目的は、それだけではなさそうだ。帝国データバンクの調査結果によると、人手不足感が高まる中、IPOによって優秀人材の確保を目指す企業が増加傾向にあるという。 同社がIPOの意向がある310社に目的を尋ねたところ(複数回答)、最も多かったのは「知名度や信用度の向上」(前年比0.8ポイント減の71.6%)、次いで「優秀な人材の確保」(同2.7ポイント増の69%)、「資金調達力の向上」(1.3ポイント増の53.9%)、「従業員の士気向上」(1.1ポイント増の34.8%)だった。 このうち上位2項目について、過去5年間の推移を見ると、知名度・信用度向上は2年連続で減少した一方、優秀人材の確保は一貫して上昇を続けている。優秀人材確保の回答率は、2012年調査では3位だったが、2014年は資金調達力を上回り2位に浮上。2015年では14.9ポイント増の66.3%と大幅に上昇し、2016年も2.7ポイント増えた。(【図表2】) また、従業員の士気向上も2016年は前年から1.1ポイント上昇し、IPOを人材活性化のきっかけにしたいと考える傾向も強まっている。IPOによる知名度・信用度の向上を、IPO本来の機能である資金調達でなく、優れた人材の獲得や社内のモチベーションアップの手段にしたい企業が増えていることがうかがえる。 上場予定市場については、「東証マザーズ」(構成比54.2%)が突出。次いで「東証JASDAQ スタンダード」(同19.4%)、「東証2部」(5.2%)と続く。地方取引所の新興市場(名証セントレックス、福証Q-Boardなど)よりも東証2部への上場予定が上回り、“東証一極集中”が進んでいる。
【図表2】「IPO の目的」回答率の推移(上位7 項目、複数回答)
2016年7月号 中小企業経営者の2人に1人が「自分の代で廃業」 日本政策金融公庫(以降、日本公庫)が実施したインターネット調査で、中小企業経営者(4104人)の2人に1人が「自分の代で廃業」を予定していることが分かった。それによると、後継者が決まっている(後継者本人も承諾)企業は12.4%にとどまった。事業承継の意向はあるが後継者が決まっていない「後継者未定企業」は21.8%、経営者本人が若く後継者を決める必要がない「時期尚早企業」は15.9%だった。それに対し「廃業予定企業」は50%と半数を占めた。 ただ、廃業予定企業の廃業理由を見ると「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」(38.2%)が最も多く、次いで「事業に将来性がない」(27.9%)が続く。「子どもに継ぐ意思がない」「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」など、“後継者難”を理由とする廃業は3割に満たなかった。 日本公庫によると、廃業予定企業の多くは「従業員が少ない」「金融機関からの借入金がない」「業績や将来の見通しが暗い」など、廃業を容易に決断できる環境にあると指摘している。なお、廃業を予定している経営者の廃業予定時期の平均年齢は71.1歳だった。 廃業予定企業に、廃業時に問題となりそうなことを尋ねたところ、「特に問題はない」(44.6%)が最も多く、次いで「やめた後の生活費を確保すること」(32%)、「自分の生きがいがなくなること」(18.4%)が続く。取引先や従業員、消費者、地元に迷惑が掛かると考えている企業は少なかった。 一方、後継者未定企業に企業売却の意向を尋ねたところ、「考えたことがない」(41.1%)が最多。次いで「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」(28.7%)が多かった。「現在、売却を具体的に検討している」は3.3%にすぎなかったが、「事業を継続させるためなら売却してもよい」が26.9%と3割近くあり、事業譲渡に積極的な企業も少なくない。(【図表3】) 従業員規模別に見ると、20~49人の企業では売却に積極的な姿勢を見せる割合が高く、「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」企業は約15%にすぎなかった。ただ、50~299人の企業では「具体的に検討している」はゼロ、「売却してもよい」も23.6%にとどまり、事業譲渡に消極的な姿勢が目立った。
【図表3】企業の売却に関する意識(後継者未定企業)