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メソッド2024.02.27

企業経営に求められる「組織能力強化」と「収益構造改革」
「2024年度 企業経営に関するアンケート」リポート

タナベコンサルティングは、当社主催「経営戦略セミナー2024」に参加した全国経営者・経営幹部、および「企業経営に関するアンケート調査」(2023年12月実施)の回答をもとに2024年2月、「2024年度 企業経営に関するアンケート調査」リポートをまとめた。本稿では調査結果の一部を抜粋して紹介する。

 

 

インフレ経済に対応する「収益構造」への改革が急務

 

2023年度業績について全国企業へ尋ねたところ、全体の39.0%が「増収増益」の見通しと回答。特に卸売業(44.0%)、製造業(42.0%)で「増収増益」の比率が高かった。2024年度については、43.9%が「増収増益」と予測。「横ばい」を含めると約8割の企業が前向きな見通しを立てている。

 

 

 

 

インフレが加速した世界経済の影響については、「マイナスインパクトはあるが限定的」(43.4%)が最多に。業種別にみると、プラスの影響はサービス業、マイナスの影響は製造業で大きかった。日本経済の影響についても、「マイナスインパクトはあるが限定的」が最多(41.4%)となる一方、「プラスの影響」を感じている企業も18.8%に上った。

 

上記結果から、経済情勢の変化は多くの企業にマイナスの影響を与えているが、インパクトは限定的であり、業績は緩やかに回復基調となっていることが分かる。

 

こうした環境下、企業経営に求められる戦略は例年と大きく異なる傾向がみられる。「2024年度の事業戦略における課題テーマ」は、「収益向上・改善」が67.1%と圧倒的に多い結果に。インフレ経済下における人件費や材料費などコスト増をカバーするための収益対策が急務となっている。

 

このほか「新規事業開発」31.4%、「ブランディング・PR強化」29.1%、「新商品・サービス開発」26.8%となった。このように価格競争からの転換を図り、自社の強みを磨き、イノベーションによって付加価値を向上させることが2024年度事業戦略の重要テーマとなるだろう。

 

経済環境の変化に対応すべく、トップマネジメント自らがデフレマインドから“インフレマインド”へ転換を図り、組織再編やデジタルによって組織生産性を高め、ブランディング&PRで製品・サービスおよび会社を洗練させていくことが重要となる。

 

 

 

 

「組織能力の強化」が2024年度経営戦略の重要テーマに

 

ビジョン推進・経営目標達成において必要な(優先すべき)戦略については、「人的資本戦略」が38.1%と圧倒的に高い結果となった。次いで「ビジネスモデル再構築」(25.4%)、「戦略的組織再編」(25.1%)、「パーパス経営」(25.0%)が多く、人的資本戦略や戦略的組織再編など、「組織能力の強化」が長期的な重要テーマとなっていることがわかる。

 

一方、2022年度まで関心の高かった「ESG・SDGs」の優先順位は最下位に下落。経済環境の変化に伴い、まずは社内の見直し・整備を優先すべき、と考えていることが分かる。

 

 

 

 

コーポレート戦略(組織・財務)については、「組織再編」が36.2%で最多。次いで「内部統制(コーポレートガバナンス)」(30.3%)、「グループ経営システム強化」(23.7%)となった。上位を「組織」が占めており、財務・資本戦略よりも組織機能の強化が注目されていることが見て取れる。

 

 

 

 

人的資本戦略では「人材育成・研修」「採用」が喫緊の課題

 

2024年度の人的資本戦略の方向性を聞いたところ、「人材育成・研修」が60.1%と最も高く、次いで「人材採用」が57.1%となった。3番目の「教育体系づくり」が34.3%と、上位2項目と大きく差が開く結果に。長期的な仕組みづくりよりも、現在進行形で人材確保が急務となっていることがわかる。

 

 

 

 

「人材育成・研修」は例年高いが、建設・運輸などの残業上限規制開始により人手不足が深刻化する「2024年問題」などを背景に「人材採用」の課題が顕在化しており、短期的な人材対策が重点となっている。

 

とはいえ、人的資本投資は「真のサステナブル投資」であり、人材への投資が企業の未来に直結する。短期対策で場当たり的に人材の拡充を考えるのではなく、自社のビジョン・方向性を鑑み、組織能力の強化を目的とした長期的な育成プランと合わせて計画的な投資が望まれる。

 

 

2024年度のデジタル戦略&ブランディング・PR戦略

 

2024年度のデジタル戦略については、「DXビジョンの明確化」が43.9%と最多。次いで「システム基盤の構築」(35.5%)、「DX人材の確保」(35.1%)となった。DXビジョンの明確化に加え、ITインフラ整備や人材も重視され、組織としての戦略実行能力を高めていく傾向が見て取れる。

 

また、「AI活用」が31.2%に浮上。「ChatGPT」に代表される生成AIの認知度が向上したこともあり、企業としてAIをどう取り入れていくのかが課題となっている。

 

ブランディング・PR戦略については、「理念・パーパス浸透」が40.7%で最多となった。次いで「商品・サービスブランド強化」(34.9%)、「ブランドビジョンの明確化」(31.0%)となり、ブランディングそのものの見直しが重視されていることが分かる。

 

 

 

 

 

「コストリーダーシップ」から「クオリティリーダーシップ」へ

 

インフレ経済下においては、戦略および収益構造を抜本的に見直さなければならない。価格競争に巻き込まれる「コストリーダーシップ」から、戦略的「値決め」のできる「クオリティリーダーシップ」へ転換することが、2024年度の戦略の方向性となる。

 

そのためには、「理念・パーパス」を前提として、ミッションを追求できる「戦略ストーリー」の構築が必要不可欠だ。いかに素晴らしい事業戦略であろうと、推進されなければ意味がない。「組織能力の強化」が今回のアンケートにおける重点テーマとなるが、まさに組織全体のマインドセットを通じて、戦略推進レベルを底上げすることが重要だ。

 

経営理念からビジョン、方針、そして社員一人ひとりの行動までを繋ぐ「物語」を今一度見直し、そして自社の強みとなる経営資源を、どのように活かしていくのかを設計していきたい。

 

ストーリー(物語)は、それぞれの会社の中にこそある。このような世界情勢・経済環境だからこそ、改めて自社オリジナルの「戦略ストーリー」を描き、ステークホルダーと一緒になって「クオリティリーダーシップ」を実行していただきたい。

 

 


【調査概要】

調査名称 :2024年度 企業経営に関するアンケート調査

調査主体 :株式会社タナベコンサルティング

調査手法 :タナベコンサルティング主催「経営戦略セミナー2024」に参加された経営者・経営幹部:1070件、企業経営に関するアンケート(2023年12月8日~22日) :898件

 


「2024年度 企業経営に関するアンケート調査 REPORT」の全体版は、こちらから無料ダウンロードいただけます。

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