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メソッド2023.11.27

予測が困難な時代に求められる長期ビジョン
「2023年度 長期ビジョン・中期経営計画に関するアンケート調査」リポート

長期ビジョンとは、自社の思い描く未来(在りたい姿)を明文化したものである。長期ビジョンの役割は、企業全体の方向性や将来のある時点における状態を設定し、中期経営計画において、向かう先を示すことにある。

 

この中期(3~5年)経営計画は、長期ビジョン達成のための計画であることが望ましい。内容は企業によってさまざまであるが、一般的に事業の数値目標や人員体制、ターゲット市場、施策などを明示する。それらの定性・定量的な成長目標を定め、実現に向けた重点施策を単年の計画に落とし込んでいく。

 

経営環境が激変するVUCA※時代において、中期経営計画や単年の計画に柔軟性が求められる今は、自社の在りたい姿という変わらぬ1本の軸である長期ビジョンがあらためて重要になる。長期ビジョンに準拠した経営戦略を策定することで、場当たり的な計画から脱却し、柔軟性をもった戦略の実行が可能となる。

 

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。不確実性が高く、将来予測が困難な状況を示す造語

 

タナベコンサルティングは、全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者などを対象として2023年9月に実施した「2023年度長期ビジョン・中期経営計画に関するアンケート調査」の結果をまとめた。本リポートでは、調査結果の一部を抜粋してお伝えする。

 

自社の強みを生かした長期ビジョンを構築する

 

2022年度の調査結果と比較し、中期経営計画を策定している企業は81.2%と増加傾向にある

 

だが、長期ビジョンの策定状況については、上場企業でも半数以上の57.3%が、非上場企業では70.7%が策定できていない。

 

 

企業が持続的な成長を続ける上で、新商品・新事業開発、事業ポートフォリオの転換は不可欠なテーマであり、これらを実現するためのロードマップが長期ビジョンである。だが、多くの企業が長期ビジョンの必要性を認識していながらも構築できていない。今後は、組織としての未来創造機能(組織)の強化が求められる。

 

まずは長期ビジョンの策定を通じ、企業として目指すべきゴールを定め、社内の意識を統一することが重要である。長期ビジョン構築において不可欠な4つの要素(DX、M&A、グローバル、サステナビリティ)を戦略的に組み込むことも忘れないでいただきたい。

 

一方、長期ビジョン策定の体制については、53.5%の企業が「経営幹部が中心となって策定」と回答、次いで「役員が中心となって策定」が42.8%、「経営企画部が中心となって策定」が35.8%という結果になった。

 

 

上場・非上場企業別に見ると、上場企業は経営幹部だけでなく、経営企画部が中心となって長期ビジョンを策定(共に26.7%)しているのに対し、非上場企業では経営幹部が中心となって策定(30.6%)している。

 

 

次世代の経営メンバーの参画は上場・非上場企業ともに少ないが、長期ビジョンの策定プロジェクトに次世代メンバーが参画すれば大きな成長の機会となる。また、その成果が次世代の事業・組織基盤の構築につながっていく。長期ビジョンの策定を通じて、10 年後に主役となる経営者・幹部も育成することが重要だ。

 

バックキャスティングで中期経営計画を策定する

 

次期の長期ビジョン・中期経営計画における重点テーマとして最も多かったのは、「収益改善、新商品・新事業開発」(66.2%)であった。2位の「人的資本経営・人材育成・採用(タレントマネジメントなど)」(40.6%)は、2022年度と比較し6.6%増加している。

 

 

前述したが、予測が困難な時代であるからこそ、長期ビジョンで自社の目指すべきゴールを示し、社内の意識を統一することが重要である。現計画を振り返り、次の中期経営計画を策定する際にも、長期ビジョンと照らし合わせることで、現状の課題を社員に正しく伝えることができる。

 

しかし、今回の調査結果では、長期ビジョン・中期経営計画の課題について、「定期的に計画・ビジョンを見直す仕組みがない」と回答した企業は27.4%と、2022年度(20.9%)に比べて増加している。硬直化した計画や業績・組織を改善するために、長期ビジョンの策定とバックキャスティングで中期経営計画を策定し、定期的に策定した内容を見直す機会を設け、未来創造機能の構築を実現していただきたい。

 


【調査概要】
調査名称:2023年度 長期ビジョン・中期経営計画に関するアンケート調査
調査主体:株式会社タナベコンサルティング
調査手法:インターネットによるアンケート調査
調査対象:全国の企業経営者、役員、経営幹部、経営企画部責任者など468件(有効回答数)
調査期間:2023年9月4日~22日

 


「2023年度 人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査 REPORT」の全体版は、こちらから無料ダウンロードいただけます。

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